ゴルフ場でのチェックインやテーマパークでの入場に生体認証が導入されるなど、生体認証は新たな分野での導入が進みつつあり、活用範囲が広がっている。今回は生体認証の今後について考えたい。
高セキュリティツールとしての生体認証
生体認証は現在、主に企業やDCでの入退室管理、銀行のATMで使われている。活用範囲が広がりつつあるとはいえ、やはり現状では一般的に暮らしている多くの人にとっては縁がないものであり、使ったことがないという人も多いだろう。よくよく意識して見渡すと、生体認証対応ATMはあちこちに発見することができるほど十分に展開されているのだが、主要行でさえ生体認証キャッシュカードの発行枚数の割合は12.2%(金融庁「偽造キャッシュカード問題等に対する対応状況(平成24年3月末)について」より)であり、実際に日常的に使っている人はもっと少ないと思われる。セキュリティ意識の高い企業及び業界での利用か、もしくはセキュリティ意識の高い一部の個人だけが利用しているのが現状である。
活用範囲の広まる生体認証
ただ、最近この状況がいくつかの流れにより変わりつつある。一つはエンターテイメント分野をはじめとした一般の人の利用するシステムへの導入である。
高知県のゴルフ場、土佐カントリークラブでは指静脈認証を利用したチェックインシステムが稼動している。このシステムでは、会員は生体情報を事前に登録しておけば、ICカードなしで指をかざすだけでチェックインできる。他にも、なりすましの防止が必要な業務用アルコール検知器での生体認証の利用や、ユニバーサルスタジオジャパンでの年間パス向け顔認証ゲートなど、一般の人が利用する範囲にまで徐々に普及が進みつつある。
さらに、未来型の実証実験も行われている。欧州の大手小売店では指静脈認証で本人確認してクレジットカードで決済する実証試験が行われている。日本においても、空港で顔認証による自動化ゲートの実証実験が行われている。
これらの多くのシステムでは、生体認証のセキュリティ面だけでなく、その利便性に着目している。ICカードを携帯する必要がなく、さらに複雑なパスワードも覚える必要がない。そんな生体認証の特徴を活用したシステムなのである。
スマホやタブレットでの活用
もう一つの流れとして、スマートフォンやタブレットでの活用が挙げられる。
Appleは2012年7月に指紋認証技術で知られるAuthenTecの買収を発表した。富士通やインテルも2012年に入ってタブレット等の小型デバイスに搭載する生体認証技術を開発・発表している。BYOD(Bring Your Own Device)を含めた法人での利用や、スマートフォンによるEC決済の進展の中で、スマートデバイスのセキュリティに対する関心が集まりつつあり、スマートデバイスに搭載すべき次のキーとなる技術の一つとして生体認証が捉えられているのである。
生体認証の今後
利便性という生体認証の大きなメリットを生かす活用方法が広まりつつあり、生体認証は新たな普及の段階に達しつつある。利便性の反面、情報漏えい時のリスクが大きく、生体情報の運用管理は負荷が大きいとされてきたが、そのような問題に対しても、サービス提供者が生体情報を代わりに管理運用し、サービス利用者は生体認証の機能のみを使うことができるクラウド型の生体認証サービスも開始されている。今後、利便性の良さが一般に浸透し、生体認証の導入が一層進むことになれば、いくつものパスワードやICカードなどを使うことなく、あらゆる場所で自由に自動で認証される時代が来るのもそう遠くはないかもしれない。