ITとシェアリングで交通渋滞を防げ

ゴールデンウィークに自動車で帰省や旅行した人も多いのではないだろうか。しかし、気になるのは渋滞である。ETCの普及により、料金所を先頭とする渋滞はETC導入直後と比較して約99%減少したが、今年も数十キロ単位での渋滞が発生したようである。近年では、料金所以外における渋滞緩和策が特に期待されている。

渋滞解消のための運転支援サービス

自分の運転が渋滞の原因になっているかどうかを判定するサービスが世界で初めて開発された。判定結果をカーナビ等で運転者に通知することにより、渋滞の原因になることを回避できるようになる。実験では、後方の車の平均速度が約23%向上する結果が得られたという。

急ブレーキをかけることも渋滞の原因となる。自動車の走行履歴を利用し、急ブレーキ多発地点を整理した急ブレーキ多発地点マップも今後活用されるようになるだろう。

ハードの整備も進む

国交省は昨年、ITSスポットと呼ばれる通信アンテナを全国に設置しており、より詳しい渋滞情報を提供する次世代型ITSを今年度に稼働させる予定である(2012/4/6 日本経済新聞)。適切な車間距離や空いている車線の情報も提供することができるようになる。3割の自動車が次世代型ITSに対応したカーナビを設置すると、上り坂付近での渋滞時間が半分になると言われている。

新東名高速道路では、人間の錯覚を利用した渋滞緩和策を進めている。道路脇に設置したLEDをタイミングよく点滅させることにより、運転者はトンネル付近や上り坂において運転速度を過度に落とさなくなるという。また、渋滞や落下物の情報を検知可能なカメラを設置する等、さまざまな技術が利用されている

交通シェアリングの普及

走行する車の数自体を減らすために、長距離移動を鉄道や飛行機で行い、現地移動だけに車を使うことも推奨されている。このような場合、レンタカーやカーシェアリングが利用できる。2012年1月時点では、カーシェアリングの会員数は約16万人とまだ普及段階にあると言えるが、前年比2.3倍と伸び率は大きい。カーシェアリングはレンタカーと違って会員制であり、スマートフォンやICカードを利用した無人での24時間貸し借り対応という特徴がある。予約、ドアの解錠から施錠まで全てスマートフォンのみで利用可能なサービスもある。

Android Application Award (A3) 2012のアイデア部門大賞に選ばれたCOGOOは、自転車シェアリングサービスを提供するアプリケーションである。現在はまだ運用実験中であるが、自転車に取り付けられた電子錠をスマートフォンで開閉することによって自転車を利用できる。

liftsharecar2getherのように、目的地まで自動車に一緒に乗って行く人をつなぐサービスも提供されている。これらは海外のサービスであり、知らない人との相乗りは日本ではあまり受け入れられないだろう。しかしタクシーの相乗りサービスは広まる可能性がある。目的地を設定するだけで、GPS情報から相乗り可能な人を検索し、一緒に乗車してタクシー代を節約することができるようになる。

このようなサービスは、既存の自動車メーカやタクシー業界と競合するサービスとして受け取られるかも知れない。しかし、BMWがカーシェアリングサービスと提携する事例もある。また、地方都市においてタクシー相乗りを勧めて観光客の数を増やすなど、うまく共存が図れるような取組みも行われている。

レンタルでも自分なりのカスタマイズを

利便性の面でも、個性をアピールする面でもカスタマイズできることが重要である。

たとえば、レンタルのたびに自動車の座席やサイドミラーの位置を毎回設定するのは不便である。ソフトウェアでこれらの位置も制御できるようになれば、車を借りた時点で自動的に設定できるようになる。

また、これまでの走行ルートや訪問場所等の情報についても、現在はカーナビに履歴として残るが、レンタカーでは簡単には引き継がれない。逆に、他人の履歴が閲覧できてしまうという問題も生じている。このような情報も、同一利用者にのみシームレスに活用可能にすることで、交通シェアリング利用への障壁を少しずつ取り除くことが重要である。

このように、情報技術を利用して混雑を緩和する試みは常に行われている。ただし、誤った制御を行うと逆に混雑が悪化してしまった事例も報告されている。実証実験の徹底と、定期的な効果検証を行うことが望まれる。