持ち運ぶセンサを活用したサービスが急拡大している。そのほとんどはスマートフォンのセンサを活用したり、スマートフォンと連携して動くものであり、持ち歩くコンピュータであるスマートフォンの利用用途はまだまだ広がる一方である。
スマートフォンに内蔵されている多くのセンサ
現在、スマートフォンには多くのセンサが搭載され、そのセンサを活用した多くのサービスが登場している。
既に搭載されているセンサだけでも、人の位置や加速度、その場の地磁気、明るさなどが計測可能であり、データマイニングにより加工すれば、さらに詳細なデータを得ることも可能である。例えば、京大病院とNTTが構築したシステムでは、スマートフォン内蔵の加速度センサ、GPS、ジャイロセンサから、歩行のばらつき、歩行ペース、歩行における左右バランス、移動距離などを算出し、医療に役立てようとしている。
さらに、温湿度センサや気圧計などのセンサも搭載が近い。AndroidのAPIは気圧計をサポートしており、Galaxy Nexusには既に気圧計が搭載されている。温湿度センサもAndroid 4.0のAPIで初めてサポートされた。そんなセンサがあっても…と思われる方もいるかもしれないが、環境の温度・湿度を自動で測定して、「乾燥注意」とか温度・湿度から「お肌注意」みたいなアラートが送れるようになれば面白いだろう。また、一般的に普及すれば、クラウドソーシングによる天気予報などにも活用できる。一般の人が持っている携帯から、温度、湿度、気圧を集めることができれば、今よりずっと精密な天気マップが構築できる。それだけでなく、他のセンサと連携すれば、大きくサービスの幅は広がる。
スマートフォンと連携して利用するセンサも続々と
内蔵センサだけでなく、スマートフォンと接続するタイプのセンサも続々と増加中である。個性的なものだけでも以下に挙げるようなものがある。
CEATEC JAPAN 2011では、NTTドコモが「着せ替えセンサジャケット」というスマートフォンに装着する外付けセンサを展示した。着せ替えセンサジャケットでは、アプリと連携して放射線や口臭、紫外線、さらには体脂肪などが測定できる。これらのセンサを単体で、さらに解析・記録するマシン付きで持ち歩くという人はなかなかいないだろうが、スマートフォンに少し付属品をつけるだけで利用できるということであれば、ニーズはぐっと増える。
他にも、自律神経の状態などを解析できることからストレスチェックなどの用途で利用が進んでいる脈波センサを活用して、感情のような内面の状態を記録・活用する「感性アプリ」や、心拍センサによりランナーのペースや負荷を読みとりアドバイスをする「miCoach」など、多くの外付けのセンサを活用したアプリが開発されている。
持ち歩くコンピュータであるスマートフォン
このように、一昔前には考えられなかったが、今では多様なセンサが急速に身近になりつつある。これにはセンサの小型化という要因も大きいが、やはりスマートフォンという誰もが持ち運ぶ小型コンピュータの普及が大きい。4、5年前に、人の測定データなどを取得する時には、センサに加えて、ノートPCを腰につけるようなイメージだったのが、今となってはポケットにスマートフォンである。しかも、誰もが持っているため、センサだけを提供すればよくなり、サービス提供の敷居が大きく下がった。
スマートフォンのプラットフォームがオープンであり、誰もが自由にアプリを開発できることも大きい。リストバンド型のモーションセンサで、歩数、カロリー消費量、距離、ペース、行動時間、睡眠など日常のあらゆるものをスマートフォンに記録する「UP」などはアイデアが斬新で話題になったが、やはりベンチャー企業が開発・提供している。
技術面では、通信技術の進化も見逃せない。低消費電力モードである「Bluetooth Low Energy」を組み込んだBluetooth4.0や近距離通信技術NFCなど大きく進化を遂げている。今後も、現在IEEEにて規格化が進められている最大7Gpbsの通信速度を持つ超高速無線LAN・IEEE802.11adなど、より高性能化が進むと予測される。
センサを活用したサービスの多様化
今後もセンサを活用したサービスは増加し、サービスの多様化はさらに進むだろう。一つのセンサだけではできないことでも、複数のセンサを組み合わせ、データ解析を行えば、サービスの幅は限りなく広がる。また、スマートフォンは完全にオープンなプラットフォームであり、大手だけでなくベンチャーまで多くの企業が参入できるため、斬新なアイデアも多く生まれてくるだろう。同時に、クラウドと連携することにより、これらのデータを集めて活用するサービスも増えてくる。スマートフォン×センサ、ここに次世代のヒットサービスがある。