ソーシャルマップを成功させるコツ

ソーシャルマップの例の一つとして、AEDの設置個所の情報を集約し、地図上に表示するAEDマップがある。AEDマップは、大阪府愛知県等、各自治体が独自に整備していることが多い。しかし、AEDの場所を網羅することは難しく、それぞれ各Webサイト上でAEDの登録を呼びかけている。また、日本全国AEDマップでは全国にあるAED設置場所をデータベース化することを目指しているが、まだ完全に網羅できているわけではない。

Twitter上でつぶやかれた情報を分析して風邪の流行度を表示(音が出ます)したり、インフルエンザのツイート分布を表示したりするサービスは存在するが、AEDの設置場所のように、テキストマイニングからでは収集することが難しい情報に関しては、人々に積極的に協力してもらうことが重要となってくる。

生物多様性マップも

生物多様性に関する情報データベースを作成するためには、生物やその生息環境についての数多くの情報を収集する必要がある。一般市民もその情報提供ができるのであれば、AEDマップ作成と同様な問題として定義できるだろう。たとえば情報技術を活用した取り組みとして、タンポポを携帯電話で撮影して送信するみんなで創ろう全国タンポポ前線マップ(2011年)や、iPhoneユーザがカメラで河川の写真を撮影し、水質や水位のデータベース作成を目指すCreek Watch、鳥の鳴き声を認識することで鳥の種類を特定すると同時に、将来的には鳥の生態分布データベース作成を目指すききみみずきん等のサービスがこれまで提供されてきた。

ソーシャルメディア×報酬

アメリカのフィラデルフィアにおいて、AEDが設置されている場所を探し出すMyHeartMap Challengeというコンテストが2012年1月末に開催される。このコンテストの参加者は専用のアプリをスマートフォンにインストールし、フィラデルフィアに多数設置されているAEDの写真を撮り、送信する。最も多くのAEDを発見した人に1万ドルが与えられるというものである。参加者の取り得る戦略の一つとして、ソーシャルメディアを利用し、多くの協力者を得ることが紹介されている。

戦略として、DARPA Network Challengeという2009年に行われたコンテストを参考にすることができる。これは、参加チームがアメリカのどこか10か所に配置されたバルーンをできるだけ早く発見するという、米国防総省(DARPA)が開催したコンテストであり、優勝チームに4万ドルが与えられるというものであった。各参加チームは情報収集を行うためにソーシャルメディアを活用したが、ソーシャルメディアユーザに対する動機付けに最も成功したMITが優勝者となった。

MITの取った戦略は、バルーンを発見した人には2,000ドルの報酬を与え、その発見者をソーシャルネットワークを介して紹介した人には半分の1,000ドルを与える、というように再帰的な報酬メカニズムを導入するというものであった。賞金を全て寄付することを表明する戦略を取ったチームもあったが、このチームは2位に終わっている。

報酬以外での動機付け

優勝したMITチームは、自分に利益が無いと人は動かないとの分析結果を示している。十分な報酬が用意できる場合は、この事例が参考になるだろう。しかし、報酬を用意できない場合は他の手段を考える必要がある。

一般市民からの情報提供の場としては、書籍やホテル等の口コミサイトもある。レビューをすると10ポイント提供といった報酬による動機付けが行われることもあるが、基本的には情報提供者への直接的なメリットが無いことが多い。それでもレビューを書き込む人が相当数存在しており、ステルスマーケティングが大きな問題になるほど、レビュー結果を参考にする人も増加している。このような口コミサイトでは、レビューの表現方法に工夫の余地がありレビュー者の思いを反映することができる。そのため、書き込むという行為に多少の時間はかかっても自分の感想や意見を表現したいという動機があると考えられる。

一方AEDマップや生物多様性マップでは、情報提供者が伝える情報に工夫の余地が無く、「正解」データを淡々と提供することしかできない。そのため、情報提供の負荷が小さいとしても、積極的に参加する動機にまではならない可能性がある。

従って、マップ作成の主目的からは外れるとしても、提供する情報を工夫できる余地と、その工夫部分に興味を持って閲覧する人が出現するような仕組みを考えることが一つの解決策になるだろう。たとえばAEDマップ情報提供時に、そのAED(とその周辺や情報提供者自身)が写っている写真を投稿できるような仕組みや、投稿された写真を評価できる仕組み等である。希望者にはFacebookやTwitter等と連携させ、投稿者を特定できるようにする機能もあるほうが良いかもしれない。システム運用費が増加する等の問題もあるが、アプリをテンプレートから簡単に作成し低額なクラウドで運用する方法もある。また、DARPA Network Challengeでの例のように、世の中のため、環境のため、ということをあえて前面に打ち出さず、多少カモフラージュするほうが、ゲーム感覚で参加する人の増加も見込めるのではないだろうか。