2012年に期待しないこと

なんともう2012年である。年初ということは、おそらく今ごろ、多くのメディアが「今年はどうなる!?」といった予測や願望を記事にしているはずだ。筆者も本来なら2012年のトップバッターとして、こうした流れに乗りたいところだが、ご存知のとおり予想や予言というのはなかなか当たるものではない。そこで今回は反対に、2012年はこんな年になって欲しくないという話を書いてみた。以下、順不同である。

Crowdコンピューティング

エンタープライズ分野においても、コンシューマー分野においても、気付けば右も左もクラウドという昨今、クラウドでないものを見つけるのが困難なくらいである。多くのシステム、ウェブサービス、アプリがクラウド上で動作し、ストレージがクラウド化され、クラウドOSと呼べるようなものも登場している。そうすると気になるのは、クラウドの品質と継続性だ。せっかく利便性を求めてクラウドに移行したのに、ネットワークの問題で繋がらないとか、サービスが終了してしまったというのでは意味がない。クラウド依存の今日だからこそ、混み合っていない……Crowdでない……安定したサービスを望みたい。

電子書籍元年

電子書籍元年と言われたのは2010年のこと。海外ではアマゾンKindleが盛り上がり、iPadの発売とともiBookstoreがはじまり、Googleエディションが立ち上がり、国内でもソニーのReaderやシャープのGALAPAGOSといった電子書籍端末が発売された。ただ、去年も国内外で多くの電子書籍関連サービスが始まり、楽天のKobo買収のように見逃せない動きもあったが、2010年から数えて今年で電子書籍歴3年という感じはあまりしない。米国では良くも悪くもアマゾンが市場開拓を進めているが、日本ではまだ安価に手に入る電子書籍端末もなければ、十分なコンテンツもないというのが実情だ。著作権者が自炊業者を訴えるなど、電子書籍環境をめぐる議論も成熟からは遠い。今年Kindleが日本に上陸したとして、また電子書籍元年と言われなければ良いのだが。

スマートすぎるフォン

電子書籍の足踏みとは異なり、スマートフォンは一昨年から日本でも知名度を上げ、去年一気に普及した。スマートフォンにはGPSなどのセンサが組み込まれ、またウェブサービスと連携した様々なアプリを後から追加できるため、モバイル分野では多くのビジネスチャンスが生まれようとしている。しかし、多機能かつ高性能であるがゆえ、スマートフォンの悪用には気をつけなければいけない。昨
年もユーザの位置情報などを第三者へ知らせるアプリ「カレログ」や、ユーザのアプリ利用状況を広告主に通知するAppLogが多くの批判を集めた。また、アップルがユーザの行動データをiPhoneや同期するMac内に蓄積していたことは世界的な問題となり、米国ではキャリアがスマートフォンに導入しているCarrier IQなるソフトウェアが、ユーザの利用状況を監視していると政治問題になっている。スマートフォンは、あくまで利用者のためにスマートな製品であるべきではないだろうか。

ダメゲーミフィケーション

去年生まれたIT流行語のひとつが、ゲーミフィケーションだろう。私自身ゲーマーなので、ゲームの仕組みを実世界に応用するというゲーミフィケーションのアイデアはとても素晴らしいと感じている。しかし、その概念は早くも単純化され、類型化されつつあるようだ。日々の作業にレベルアップやアイテム、仮想通貨といった演出を組み込めば、なにもかも優れたゲームのように面白くなるというわけではないはずだが、そのような誤解は少なくない。ゲームクリエイターの米光一成氏は、出来の悪いゲームを「クソゲー」と呼ぶのになぞらえ、こうした安直なゲーミフィケーションは「クソゲーミフィケーション」だと説いている(ここではもうすこし上品な表現にした)。なんでもゲーム仕立てにすれば良いという安直な結論に陥らないことを願う。

ソーシャルおもねりメディア

今やウェブに関連する業界はほぼすべて、FacebookやTwitterといったソーシャルメディアの存在を無視できなくなっている。多くのウェブサイトにおいて、ソーシャルメディアを経由したアクセスの割合は日に日に高まっている上、Facebookの「いいね」やTwitterのReTweetといった仕組みは時に爆発的なアクセスを生み出すためだ。ウェブサイトやウェブメディアをソーシャルメディアにどう最適化していくかは、ウェブに関係する業務に従事する人間であれば、誰もが考えなければいけない課題だろう。しかし大勢が飛び付くような、扇情的な情報を発信することが解決策であってはならない。ソーシャルメディアの存在が巨大
化するからこそ、メディアの公平性で中立性はますます重要になるだろう。

以上のいずれも実現しないことを期待しつつ、今年もよろしくお願いします。