つながりたいのはヒトだけではない

先日、今年の漢字として、「絆」が発表された。今年は東日本大震災をはじめ各種災害に見舞われたが、人や地域との絆の大切さが見直されたということだろう。ところで、モノもつながりたがっている。最近のキーワードでは、M2M(Machine-to-Machine)やInternet of Things(IoT)ということになるが、通信機能を有するモノがどのように扱われるのかという点が注目されている。通信機能を持つモノとしては、PCや情報家電といったイメージが強いが、これまで通信機能を持たない機器同士がつながることで新たなサービスや仕組みができることが期待されている。

通信インフラの拡充

最近の通信ネットワーク研究開発の場では、Internet of Things というキーワードが欧州、中国を中心に使われている。その言葉の通り、モノのインターネットということであり、日本では、「ユビキタス」という単語をつけて検討されていたコンセプトとほぼ同じだ。例えば、RFIDを活用した物流や健康管理、農業への応用などのアプリケーションから、センサネットワークといった物理的なネットワークについてものまでをコンセプトとしている。そうしたサービスを実現する環境として、モノとモノが無線で通信することを前提としたM2Mプラットフォームということになる。通信も含めたサービスプラットフォームを想定したものである。

一方では、デバイス間で直接通信するための方式として、ミリ波帯を使ったGbpsクラスでの通信を実現する通信方式でIEEE 802.11acやWiFi Directなど近距離での接続に対応する仕組みが徐々に増えており、無線LANやBluetooth以外の方式も選択できるようになりつつある。

カスタマイズのニーズ

つい先日開催された東京モーターショーで、各社からスマートフォンをクルマに接続して活用するというコンセプトの展示が多数行われていたのを見た方も多いだろう。常に持ち歩いてパーソナルな情報を含むスマートフォンを活用することで、クルマの使い勝手を利用者個人に合わせる、いわばカスタマイズ方法を提供していることになる。例えば、デンソーでは、ハンドルにiPhoneを装着し、メーターや車載ディスプレーと連携するシンクロナイズドコックピットではメーターデザインを着せ替えられたり、スマートフォンで設定した画像に合わせて、外装を自由に選べるトヨタの「Fun-Vii」は究極的なカスタマイズと言える。

今後は、クルマの速度やエンジン回転数、バッテリの充電状況などを表示するメーターを含めてインパネに液晶ディスプレイを使用することでより自由になり、これまではスペースの関係で表示していなかった各種センサの情報も表示でき、カスタマイズがしやすくなる。

安心して使える環境は可能か

現在通信事業者が競って万単位の無線LAN基地局を整備しつつあるが、各種店舗などでは無線LANを無償で使えるように独自に整備しているケースもある。しかしながら、無償で使えるというだけで、そのような無線LANネットワークに不用意につなげてしまうのはリスクもある。例えば、conncectFreeでは、契約した店舗において無線LANを無償で提供し、接続された端末に対して広告配信を行う仕組みを提供していた。広告配信のビジネスモデルとしてはよく考えられた方式だと思われるが、通信インフラ事業者が個人情報に相当する情報を利用者の同意なく勝手に集めていたことで、利用者からの反発を受けたことは記憶に新しい。通信事業者が通信の秘密などの法律違反を問われる可能性もある。

また、端末の不具合を発見する目的のために操作状況などのデータを取得する、Carrier IQというソフトウェアが多くの端末にインストールされていることが明らかになった。利用者にとっては許諾なしでそのような情報を取得するソフトウェアが組み込まれていることは気持ち悪いと感じる人も多いだろう。

しかしながら、M2Mの環境下では、人手を介さずにモノとモノが自動的に情報がやり取りされることで「便利な」サービスや機能が実現されることになるため、サービス利用時に情報取得の許諾を毎回求めるような状態では成り立たない。安心して使える環境と利便性とのトレードオフということになる。利用者が信頼できる端末やサービス事業者と見つけることが必要ということになるだろう。スマートフォン用にソフトウェアを販売するApp StoreやAndroid マーケットといった仕組みと同様にサービスの評価や審査する仕組みが期待される。