ルンバに学ぶ、次世代のヒット家電

我が家にルンバがやってきた。タイマーをセットしておけ
ば、寝ている間に勝手に掃除してくれる。約1時間の掃除が
終わると、自分でステーションに戻り、朝には充電も完了だ。
なんと便利な掃除機だろう。

必要十分な自律移動の低コスト化が成功要因

ルンバは、家庭用ロボット市場で唯一の成功者と言っ
て良い。10年前に流行ったペットロボットを含め、家庭用
ロボットの実用化が進まない中、他と違ったのは何だろうか。
それは自律移動のコスト対性能比が高いことだ。

部屋の形を認識して、自分の場所を常に把握する。部屋全
体を隅々まで巡回する移動計画を立てる。壁や椅子の脚に
激突しないよう、土間や階段に落ちないようにする。掃除
ロボットの自律移動とは、概ねそういった機能である。

高価な多数のセンサ、高速なCPU、大容量のメモリがあれば、
つまりコストをかければ、技術的には室内の自律移動は実現
可能なレベルになってきた。これを移動範囲を無人のフラッ
ト床の室内に限定し、必要十分な移動性能を低価格で実現で
きたのである。この低コストの自律移動技術を、掃除という
市場規模の大きなニーズにマッチさせたことが、ルンバの成
功要因である。

スマートフォンの音声応答に絞って成功した「Siri」

最新のiPhone 4Sで搭載された音声アシスタント「Siri」
2012年の日本語版リリースが待たれる嬉しい機能である。近
場の店舗検索など検索サービスのインタフェースとして注目
されているが、基本はカレンダー登録だろう。

「Siri, remind me to call my boss at 3pm.」
(午後3時に上司に電話するのを思い出させて)

頻度が高いカレンダー登録作業を、タッチ操作の半分以下の
時間で行えるはずだ。

音声認識は30年以上の歴史を持ち、既に電話応答等では実用
化されているが、高額な装置を必要とした。スマートフォン
の限られたハードウェア性能の中で、音声で最小限の指示す
るという目的に対して、必要十分な音声認識性能を実装した
ことが成功要因である。

ゲームデバイスだから成功した「Kinect」

Xbox 360に接続する体感型コントローラ「Kinect」は、
プレーヤー自身の体を使い、直感的なプレイができる。カメ
ラと距離センサを使って、プレーヤーの位置や姿勢を読み取
るモーションキャプチャの技術が使われている。

スポーツやアドベンチャーゲーム等、ビデオゲーム機では体
の動きで操作するニーズが元々高い。これを必要十分なセン
サ技術を低コストで実現したところがヒットにつながった。

これがテレビやエアコンの操作であったなら、1万円のデバイ
スではまだまだ高過ぎて、誰も見向きもしなかっただろう。

次のヒット商品は手指にある

ルンバは自律移動、Siriは音声認識、Kinectはモーションキャ
プチャ。言い換えれば、人間の脚、耳、眼の機能を、それぞれ
の目的に特化し低コスト化できたからこそ成功した製品である。

もちろん、この3つの進化系として、新たな応用分野が出てく
るだろうが、あえて違う機能で考えてみたい。

どこに注目すべきか。それは手指である。日本は工業用ロボッ
ト大国であり、ロボットハンドでも世界最先端を行っている。
しかし、人間の代替機能として、家庭用ロボットを考えると、
致命的に欠けている要素があった。それは両手を使うというこ
とである。

しかし、最新のホンダASIMOで注目すべき技術が登場した。
それはビンを持ってフタを捻って開けること、コップを持って
お茶を注ぐこと。一見地味だが、両手の指が協調して一つの動
作を行うことは、極めて難しかったはずだ。

この手指機能を10万円以下にできたとして、何ができると一番
嬉しいだろうか。料理の下ごしらえ、洗濯物のアイロン・折り
たたみ、バス・トイレ掃除の3つと予想する。ほぼ毎日の仕事
であり、しかもやや面倒な部類のものだからである。

ただし、いずれも不定形な物体を認識して掴む必要があるため、
当初は極めて限定した機能しか実現できないであろう。その制
約を考えると、一番近いのは洗濯物のアイロンと折りたたみで
ある。実際、業務用クリーニング機器は自動化がある程度
進んでいる。これを簡易版にした上で、手指機能を使って次々
プレスと折りたたみをやってくれるなら、間違いなく買いたく
なる。

のんびりとした休日の朝に欠かせない一台である。