タブレット時代
iPhoneの登場によりケータイはガラケーに取って代わりスマホが主力となり、iPadの出現によりタブレット端末も破竹の勢いで増えてきている。タブレット端末が、なかなか日本では普及していないブックリーダーの代わりになるかと見られていたが、今のところそこまでの勢いはなく、国内紙メディアは少し寿命が延びたようだ。
ただ、話題として多く取り上げられている割には、タブレット端末はそれほどちまたでは見かけない。ネットブックよりも価格が高い、気軽に持ち運ぶには若干重い、スマホとの住み分けが出来ていない、などが外出時に携帯する端末としての普及が伸び悩んでいる主な原因だろう。
タブレットは企業向けにも、いまひとつ訴求出来ていない。情報セキュリティ関連のコンプライアンスでガチガチに固められた社内ネットワークの中へは、新参端末はなかなか入り込めないのだろう。新規のIT投資が伸び悩んでいることも影響しているのかもしれない。
メモ帳端末
同じタブレットだが少し見方を変えて、メモ帳のように使えるタブレットもそれなりに需要がある。ノートやメモ帳の代わりに、思い付きや電話の書置きなどからミーティングの記録などのちょっとした手書きのメモを残せるようなものである。環境保全、資源節約とともに震災の影響もあり、今年夏以降に静かなブームとなっている。紙の使用量もさることながら、書類の保有・保管にも厳しくなる昨今、情報の電子化ツールは徐々に増えつつある。
白いボードの上にマグネットのペンでなぞるおえかきせんせいは多くの人がお世話になったであろうが、この電子版が今では存在する。ハンディメモ「マメモ」、Boogie Board、Boogie Board RIPなどである。Boogie Boardはまさにおえかきせんせいの電子版で、書いて消すだけのシンプルな機能だが、その価格(定価で5,000円)と携帯性(厚さ3.2mm、重さ116g)のバランスの良さからグローバルなベストセラーになっている。このくらいの軽さになると、紙のメモ帳と同程度の重さである。
しかし、多くのユーザーを集めたBoogie Boardでもまだまだ製品としては発展途上で、ライバルである「紙」には及んでいない。Kent Displayが開発したReflex LCDはE-inkのように書換時にしか電力を要しないため、電池の心配はいらない。それゆえの軽さと薄さであるが、記述内容の保存機能がない。それを付加したBoogie Board RIPは待望の新製品であったが、残念ながら初代の手軽さが失われ、厚さは倍、重さは3倍になってしまった。
大きな拡張を図ったBoogie Board RIPであるが、保存された内容を再表示する機能、メモを部分的に消去する消しゴム機能(マモメは対応)がない。また、様々な電子ペーパーのデモやプロトタイプにみられるようなペラペラな薄さ、グネグネ曲がる柔軟性には程遠い。多くの機能を付加しながら、薄型軽量化を目指さなければならない。
結局のところ
上記に述べた電子メモパッドも、あれもこれもと欲張って機能をてんこ盛りにすると、結局はAndroidタブレットやiPadになってしまう。そして技術的には可能であっても、個人が購入できるような価格帯で紙のように薄くて軽いiPadを作ることは不可能であろう。
とあるベンチャー企業が果敢にも電子ペーパーベースのメモ書き、ドキュメントリーダー、ネットワーク機能をもつ電子メモパッドを、1万円程度で実現しようというプロジェクトを立ち上げていたが、現在開発進捗は不明でスケジュールは当初から大きく遅延している。技術とアイディアはあっても、なかなか製品として実現するのは難しい分野のようである。それだけ競合相手である「紙」が強敵であるということでもある。
我が国も、和紙に続く優秀な次世代の「紙」を開発したいものである。