オープン化と共通化が加速するプラットフォーム

Androidを採用したスマートフォンが急速に普及し、Androidアプリが急増している。また、モバゲーやGREEにおけるソーシャルゲームもここ1年で数倍に増えた。今回は、オープン化が進むプラットフォームについて考えたい。

オープン化が進むプラットフォーム

Androidは、ソースコードが公開されている、オープンなモバイル端末向けソフトウェアプラットフォームである。基本的には各メーカーや開発者が商用非商用を問わず自由に利用できる。そのため、iPhoneの躍進に対して有効な対抗策を打てていなかったメーカーがAndroidを次々と採用した。端末の増加に伴い、Androidアプリやコンテンツも激増し、開発元であるGoogleはモバイル広告事業を収入源として急成長させている。

Appleもまた、アプリ開発のためのプラットフォームを開放し、企業を引き込んでいる。AppleはiPhoneを中心とした巨大なエコシステムの一部であるアプリプラットフォームをオープン化し、開発環境や流通ルートを整備することにより、多くの開発者を呼び込み、iPhoneを魅力あるものにしている。いわゆるガラケーでもアプリ開発は可能だったが、使える機能に制限があったり、市場に出すルートが整備されていなかったりとオープン化の程度に大きな差異があった。

オープン化はFacebookやミクシィのようなSNSプラットフォームでも行われている。世界最大のSNSであるFacebookでは以前からアプリ開発者用のプラットフォームを提供していたが、日本でもミクシィが2008年12月にアプリプラットフォームをオープン化すると、2010年1月にはモバゲー、6月にはGREEと相次いでアプリプラットフォームをオープン化している。もともと広告収入がメインであったミクシィだけでなく、自社開発のゲームによる収入が大きな割合を占め、閉じたエコシステムを確立していたモバゲーとGREEのオープン化は示す意味が大きい。良質なコンテンツによるユーザの確保のためには、オープン化の程度の差異こそあれど、一定のオープン化は避けて通れない道となりつつある。

プラットフォームの共通化

プラットフォームの共通化も進んでいる。ミクシィはドイツ最大のSNS「Vznet」、中国最大のSNS「Renren」、韓国最大のSNS「Cyworld」など、多くの海外SNSとプラットフォームの共通化を進めている。共通化することにより、海外のコンテンツプロバイダーも呼び込みやすくなるからである。また、ミクシィのプラットフォームはGoogleによって開発された共通仕様であるOpenSocialに対応しており、GREE、モバゲーも対応するOpenSocialは世界標準のプラットフォーム仕様となりつつある。

また、AndroidはTVやカーナビでも採用され始めている。ソニーはAndroidを採用したインターネットTVを米国で去年から発売している。今後、TVやカーナビに関しても、同じプラットフォームを利用したアプリ市場が広がる可能性がある。実際に、ソフトメーカーAppceleratorとIDCの調査では、モバイルアプリ開発者の44%がGoogle TV向けのアプリの開発に「非常に関心を持っている」と答えており、既に開発者は目を向けている。

オープンなプラットフォームの問題点

プラットフォームのオープン化は現在の大きな流れであることは確かである。しかしながら、プラットフォームのオープン化にも当然問題はある。今、最も顕在化しているのはセキュリティの問題だろう。開発者にオープンであるということは、当然ハッカーや悪質なウィルス拡散を狙う悪意のある人物に対してもオープンであるということであり、リスクも当然高くなる。また、セキュリティホールが発見された場合でも、プラットフォームを利用する側としては、プラットフォームの提供企業の修正にある程度依存せざるを得ないのはリスク要因である。

セキュリティに関わらず、利用する側はプラットフォームの変更の影響を大きく受け、それは自社ではコントロールできない。例えばアプリ開発の場合、プラットフォームの仕様や利用規定が大幅に変更されたら、今まで展開できていたアプリが展開できなくなったり、仕様変更を余儀なくされたりすることも考えられ、中小企業としては死活問題になる。

その他にも、提供されているプラットフォームを利用することにより、開発コストは大きく削減できるものの、差別化するポイントが難しくなるというデメリットがある。プラットフォームのオープン化と共通化は市場の活性化を促すが、その反面競争の激化をもたらしてもいる。

今後誕生し得る巨大プラットフォーム

現在、プラットフォームのオープン化は加速しており、有力なプラットフォーム同士の主導権争いはますます激しくなっている。良質なコンテンツの確保のため、プラットフォームが共通化される動きもあり、その動きはスマートフォンを中心として、SNSプラットフォームだけでなく、インターネットテレビや構造がデジタル家電に近いといわれる電気自動車までも将来巻き込むだろう。巨大プラットフォームでの競争は激化しているが、コンテンツ開発に関して高い競争力を持つ日本企業の躍進に期待したい。