震災とICT

東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。より多くの方がご無事であることを心から願っています。

災害対策におけるICTの活用は古くから検討されているが、今回の震災で様々な課題が再認識された結果となった。以下では特徴的だった出来事を中心に、震災とICTについて考えてみる。

ソーシャルネットの情報伝達能力

このたびの震災では、Twitter を初めとしたソーシャルネットが、その情報伝達能力の強みを発揮した。

以前から言われていることだが、CGM(Consumer Generated
Media)は情報鮮度が他のメディアに比べて非常に優れている。何しろ今そこにいる人が生の情報を発信するわけなので、ほぼリアルタイムで出来事が発信されると思ってよい。テレビなどのマスメディアでもライブ中継という手法があるが、中継できるポイントが限られるのに対して、CGMはその観測点が非常に多いことも大きな特長だろう。ただし、情報の正確性については、多くのCGMと同様に注意が必要である。実際、一部にチェーンメールまがいの誤った情報もあったが、誤りであることを伝える内容も迅速に伝わったために、その後は大きな混乱は生じていないようだ。

また、人と人とのつながり、という点も非常に有効であった。Twitter
で多くのフォロワーを持つ著名人達は、自分が知った有効な情報を積極的にリツイート(RT)し、多くの人たちに伝わった。

一方、情報伝達手段としてホームページを使った組織はかなり苦戦したようだ。アクセスが集中してページを表示できないケースが多発した。平常時向けの見た目のよいリッチコンテンツから、テキストベースの簡素なページに切り替えた組織や、ホームページと並行して
Twitter での情報発信を急遽開始した組織も見られた。

もちろん、技術的には、急激に利用者が増えた場合にクラウド等の技術を使ってホームページのリソースを一時的に拡大することも可能ではある。今後はソーシャルネットの活用とともに、ホームページについても様々な技術的対策が検討されることとなるだろう。

通信インフラの重要性

一方、携帯3G網を含む通信インフラは、そのもろさを改めて再確認させられた。従来から災害時や大規模イベント(花火大会など)では輻輳が起きることが知られていたが、今回は非常に大規模に発生して、しかも長期間にわたった。

通信各社は輻輳対策として、災害伝言ダイヤルなどを立ち上げて対応し、それは効果的に機能した。しかし、災害伝言ダイヤルの使い方を発災後初めて知った利用者にとって、果たしてこれで本当に相手に伝わったのか、不安を持たれた方も多かったのではないか。やはり、平常時に使っているツールをそのまま延長して使えると、心理的な面とともに、緊急時であっても利用者が確実に使えるという面で有効だと考える。

また、ちょうどスマートフォンが普及期に入ったことによる混乱も見られた。災害用伝言板やエリアメールが発災時にはスマートフォンに対応していなかったため、発災後に使えないことに気づいて慌てた人も多かっただろう。

ラジオ放送をインターネット上で配信する実験を実施していた radiko
では、平常時には配信地域を限定していたが、発災後にはどこでも視聴可能とした。災害時のラジオの有効性は古くから言われていて、避難用リュックサックに常備している方も多いが、日常的に携行している人は少ないだろう。radikoは急速に普及しつつあるスマートフォンでも視聴できるため、すぐに聞けるという利点がある。今後は災害用ツールとしてその重要性が増していくかもしれない。

携帯しているツールとしては、地デジのワンセグも有効であった。通信インフラが輻輳していても、ブロードキャストである放送電波が届けば最新のニュースの視聴ができた。ただし、携帯電話でワンセグを視聴したためにバッテリーを消費してしまった利用者も多かったことだろう。今後の省電力化が望まれるが、例えばワンセグの音声だけが聞ける省電力モードなどの追加も必要だろう。

復興にむけて

ソーシャルネットやradikoなど、今回の震災で活躍したツールが注目されたが、それらを使うためには、とにかく通信インフラが復旧しないことには始まらない。特に甚大な被害を受けた地域では、その他の重要なライフラインがまだ復旧できていない状況である。ボランティアとして現地に行くタイミングを見計らっている人も大勢いるだろう。通信インフラを含めたライフラインが復旧した後には、我々が個人としてできることも格段に増えるはずだ。そのときまで、特に計画停電の地域では節電しつつ、情報収集とともに次のアクションに向けた計画を日々考えることが大切である。