スマート時代の市民科学

『すべての都市はいくつかの方程式で表現できる』という研究が公表された。 スマートシティやスマートコミュニティの構築が世界中で始まっている今、都市に関するデータを解析することがこれからのテーマとなることは間違いない。
ただ、データを解析して都市の問題を解決しようという試みは今に始まった事でもない。サプライチェーンマネジメントの対となるリムーバルチェーンマネジメントや、シチズンサイエンス(Citizen
Science)などの動向にも注目したい。

都市のパターン

冒頭の都市の法則によると、例えば、日本の人口20万人の都市における暴力犯罪や道路の表面積を予測することができるという。
法則自体は、高エネルギー物理、生物学で成功を収めた研究者が、畜産における動物の群れの特徴を数式で表現するという1930年代の研究と、都市の統計データにおける相関分析とから導き出している。また、動物も都市も巨大化した方が代謝効率は高い、という。
最近、各地で始まっているスマートシティプロジェクトにより、大量・詳細なデータが得られると、都市の説明変数がさらに浮かび上がってくるに違いない。

サービス指向アーキテクチャに基づく都市

スマートシティプロジェクトは、国内外でまさに端緒についているところである。スマートシティでは、エネルギー、建物、水、廃棄物、交通といった都市インフラをいわゆるグリーンな技術やITなどを駆使して地球環境に配慮した方式にする。
国内では、横浜など、海外では、ポルト(ポルトガル)、リオデジャネイロ(ブラジル)などが代表的であり、参加企業にはIT業界の雄が名を連ねている。ポルトの例、PlanIT Valley、ではLiving
PlanIT社がキープレイヤーとして参入している。同社の創業者の一人は、Windowsというプラットフォームを持つMicrosoft社での勤務経験を持ち、.Netがサービス指向アーキテクチャになるところを間近に見ている。
彼らが目指すことは、都市をプラットフォーム化し、サービス指向設計で各種のインフラサービスを連動させることとされている(参考記事)。

シチズンサイエンスの可能性

スマートシティという巨大プロジェクト以前にも、すでに個別分野ではユニークな実験がされている。特に、廃棄物に注目してみると、MITのSENSEable
City LabではTrashTrackというゴミの経路をセンシングするプロジェクトを実施している。
市民ボランティアの出すゴミに小型の通信機を付け携帯電話の基地局から位置を計測するという試みで、ゴミを捨てた後の経路情報を共有し、ゴミのロジスティックスを改善させる目的を持っている。サプライチェーンマネジメントの対になる位置づけで、リムーバルチェーンマネジメントと命名されている。国により事情は異なるだろうが、かなり独特の長い経路をたどるゴミもあるようだ。
また、市民の参加する科学的な活動には『シチズンサイエンス(Citizen
Science)
』という言葉が最近使われている。世界中のPCのリソースを少しずつ使って科学計算をするSETI@homeなどよりも、市民が能動的に参加することに主眼が置かれている。

スマートシティにおけるインフラのうち、廃棄物に関しては発生源がヒトであるという特徴がある。発生源にメッセージを伝える試みは、スマートシティのインフラを活用するためにも手を変え品を変え継続されるべきだ。スマートになった都市が、シチズンサイエンスにデータを提供する仕組みを提供することもその一つだろう。