サーバ仮想化の課題

サーバ仮想化のメリットは、リソースを複数のシステムで共有することで 全体としてリソースの無駄が少なくなることである。 他方、仮想化の課題にはどんなものがあるかについて考えてみる。

仮想化によるいくつかの課題

サーバ仮想化に生じる課題を以下に述べる。

性能の劣化

ハードウェアをOSが直に利用するのに比べ、仮想化ソフトウェアという層が追加されることにより性能が劣化する。 また、複数のシステム(アプリケーション)が、一つのハードウェアに集約されることにより 単独の運用では考えられなかったリソースへの負荷の競合等が起こりえる。 この一つとして、ストレージのコントローラなど、特定リソースがボトルネックとなることも考えられる。

責任分解点が不明確になる

従来は、物理的にサーバが異なることで、責任分解点も障害の切り分けも明確になっていたものがハードウェアを共有し、一部のソフトウェアのみを責任範囲とするという形態となったことにより、責任分解点が不明確になる。 この課題は、仮想サーバ群がマルチベンダーで構成される場合に特に問題となる。

冗長構成考慮の必要性

物理的に一つのハードウェア上に、論理的に複数のシステムが同居するということは ハードウェアに障害が起こった場合、システム全体に影響が及ぶことになる。 よって、ミッションクリティカルなシステムであれば、当然ながら、どこかで、物理的な冗長構成を担保する必要がある。

実施にあたり

仮想システムの負荷のパターンを考慮したシステム(アプリケーション)の実行計画の作成と JOBコントロール、仮想システム単位でのリソース監視が必要となる。 この上で、現在の物理サーバ環境を、何台のどの程度の仮想化環境に移行できるかを リソース使用状況に基づくサイジングのためのツール等を用いてサイジングする。 また、各システムの担当者(利用者)に、仮想化サーバ単位で、リソースの割当てが必要という意識を もってもらうために、リソースの使用状況に応じた課金または予算配分のしくみが必要であろう。

また、リソースの使用状況を監視した上で、いずれかのリソースがボトルネックとなりシステム全体のパフォーマンス劣化が生じないような、リソースの設定、 場合によっては、リソースの物理的な分散化、スケーラビリティの確保といった対策が必要となる。

ここまでは、サーバ仮想化の課題に焦点をあてて記載してきたが、 メリットは、リソースの全体最適化、運用負荷・コストの削減、消費電力の低減のほか、日本の場合は、特に、サーバの設置スペースの低減ということもあげられる。

いつか来た道

サーバ仮想化の流れというのは、これまでの汎用機一極集中から、 オープン化によるサーバの乱立、そして、管理負荷の低減と リソースの全体最適化を考慮して、サーバを統合する という流れに他ならない。果たして、時代は、スパイラルに進化?しているのだろうか? 一つの計算機上の複数のプログラムが使うリソースの最適配分は、汎用機で実現されていた世界に他ならない。この世界が、また、姿を変えて出現してきたようにもみえる。 汎用機の世界との相違は、オープン化であり、マルチベンダー化である。 そして、これらを実現するために、事態は、より複雑化している。それでも、地球環境問題の解決のための省エネルギーの促進のため、 また、運用負荷やコストの軽減のため、サーバ仮想化は進んでいくと思われる。 この過程で、上で述べたような課題が浮かび上がり、 いつか来た道を再度歩むことになろう。