駐車場を巡る実験 – 完ぺきな駐車のために

完ぺきな駐車は難しい。数式を頭で理解できたとしても体を動かすこととは別だ。特に混雑時にはそもそも止める場所を見つけるところから入るため、焦燥感などにより難易度は上がる。
それでも駐車場を巡る環境改善の動きは、さながら実験場のような状況になっており、改善に寄与する取り組みも多く出てきそうだ。今回は特にインテリジェントパーキングアシストなどの自動駐車や自動立体駐車場といった参入障壁の高いハイエンドな世界よりも、スマートフォン用サービスと駐車場の工夫に焦点を絞ってみたい。

スマートフォンによる駐車場利用支援は流行中

まずは駐車場の利用を支援するサービスだが、これには駐車した車を見つけることと、駐車場の空きを見つけることが中心になる。
巨大なショッピングモールやテーマパークの駐車場で、駐めた車の場所が分からず途方にくれた経験は無いだろうか。
メルセデス-ベンツのmbraceはiPhoneやBlackberryから利用できるサービスで、駐車場での駐車位置を教えてくれるほか、多くのドライバー支援機能を提供する。

これに対して、駐車場での駐車位置をスマートフォンのGPS機能を使って記録し、戻ってくる時にはモバイルARの機能で発見するCar FinderG-Parkといったアプリや、モバイルARの代表格サービスのLayer上に空き駐車場情報を提供するサービスなど、無料ないし廉価なアプリで自動車メーカーの提供するサービスと同等の機能を実現できる。
また、駐車場での当て逃げ対策として、衝撃を感知したら撮影するというアプリも、発想はおもしろい。 駐車場利用者の支援もスマートフォンが開拓できる領域だ。

無線による正統な進化を遂げる駐車場

つぎに、駐車場側の機能は、センサーで空きを管理するサービス、高速道路で使われるETCを使って利用できるサービスなど、各地の駐車場事情に合わせたサービスが展開されている。
路上のパーキングロットに縦列駐車をすることが多い欧米を中心に、Rutgers
大のプローブカー関係の研究者によるParkNetという事例がMobiSys2010でのベストペーパーをとるなど注目されている。これはタクシーにセンサーとGPSを搭載して、携帯電話のネットワークで情報をリアルタイムに収集して駐車場の空きを解析するサービスである。

プローブカーなどの駐車場利用支援も、各地の駐車場事情により展開は異なるだろうが、郊外にある巨大施設の第20駐車場あたりまで誘導員と立て看板のあいまいな指示でたらい回しにされて、完ぺきな駐車のための体力と気力を消耗するたびに、駐車場にきちんと投資してほしいと感じてしまう。

駐車場を適正価格で提供するためのサービス

特に興味深いところでは、より上位の取り組みで、駐車場の適正価格を見つける試験的サービスがある。
それは、米国サンフランシスコのSFparkであり、駐車料金を市場原理で定める実験をしている。止める人が多い場所の駐車料金は高く設定し、比較的すいている場所の駐車料金は安く設定するというシンプルな原理だ。実際には、センサーで計測したパーキングロットの稼働率などを月次集計して、1時間あたり25セントから最大6ドルまでの価格が設定される。かなり広大な範囲を対象としており、自治体が駐車料金の最適な価格を知るために約20億円をかけることには議論もあっただろう。ただ、駐車場を求めてさまよう車による排出ガスや、事故、違法駐車による不利益を抑えるモデルケースになればそれは有効な投資といえる。

日本国内では、商業施設・自治体の駐車場管理受託が進んでいる。駐車場管理の事業者数が限定されていけば、市場原理による駐車料金の価格付けなども不可能ではない。だが、日本の都市部では店舗での購入で駐車料金が無料になるという感覚に慣れてしまっているため、サンフランシスコとも異なる進化が予想される。カーボンオフセット駐車場やカーシェアリング用駐車場の利用による効果を計測数値に基づき適切にポイント化して利用者にポイント還元できる仕組みの方が日本的かもしれない。いずれにしても、駐車場の見つからない不毛な時間をなくしたいという根源的な部分が解決されるよう、まずは実験的な取り組みの動向に注目したい。実験的な駐車場は、大量の無線センサーを使った巨大なシステムでもあり、センサー関係のシステム開発案件の今後を占う上でも重要だろう。