光よりもどこでもつながるネットワークを

iPadの注目度は非常に高く、本コラムでも何度か取り上げられている。実際、周囲でも新しいモノ好きの人が購入して、自慢げに語ってくれる。それらの中でよく聞く話題に、iPadはネットワークに接続されていないと利便性が低いという点がある。今回は、ネットワークの接続性について考えたい。

各国でブロードバンド政策が目玉政策に

先日、総務大臣が打ち出した「原口ビジョン」の中で、光ファイバの整備率を100%にする「光の道」構想が挙げられており、業界関係者で話題になっている。NTTが所有するFTTHのアクセス網を分離するかどうか、アクセス網を分離した場合の運営方法や、そもそも100%光ファイバーで整備する必要があるのか、などが議論になっている。日本に限らず、米国やオーストラリア、韓国他各国で、国が主導して、ブロードバンドを整備する計画が進んでいる。こうした各国政府の動きに合わせて、通信関連の国際標準化機関であるITUからもブロードバンド整備を進めるべきであるという報告もなされている。2015年に世界で人口の半数にブロードバンドを利用できるようにすることが目標に挙げられている。

各国により通信インフラ整備の事情が異なっており、ブロードバンドの定義はあいまいである。例えば、OECDの調査では「ブロードバンドとは256kbps以上のダウンロード速度を持つ回線」となっており、加入者数では、米国8114万人、日本3160万人、ドイツ2484万人という順になっている。

一方、映像コンテンツが急増する中で、256kbpsでは不十分である。例えば、米国FCCが打ち出しているNational BroadBand
Plan
では、 最低4Mbps
の実効ダウンロード速度を持つものとされており、ユニバーサルサービスとして、100%普及させることが目標となっている。先のOECD調査では、光ファイバーの整備が進んでいるのは、人口100人当りの加入者数でいうと、韓国が16.4、日本が13.5と2国が突出している。対して、米国は1.3に過ぎない。そこで、このプランではブロードバンド普及促進のために、ユニバーサルサービス基金を活用するなどの具体的な方策が示されている。ただし、日本と異なるのは、「光」でということではなく、あくまで、ADSLやWiMAXを含めて提供し、ブロードバンドを提供するという、インフラ提供よりもサービス提供に重きが置かれている。

コグニティブ無線の普及

現在、iPadやスマートフォンといった新しいデバイスが注目されている。これらは、通信事業者にとって、有力デバイスであると考えられている。端末単位で3Gの通信契約をしてもらった上で、ネットワーク利用のための基本料金をはじめ、コンテンツや各種サービスを課金するという安定的なビジネスモデルが構築しやすいためである。一方では、他の端末に比べて利用が多く、ネットワーク容量不足や設備不足が目立つようになり、海外ではパケット定額制を維持することが難しくなっているケースも現れている。

ところで、以前本コラムで書いたように、端末のデータ通信に限れば、端末に3Gは必須ではなく、ゲートウェイ、モバイルルータで通信方式を変換すればいい。ユーザから見ると、もはや必ずしもブロードバンドサービスが有線か無線かといった物理層を意識することもなくなる可能性もある。

実際に、有線事業者であるNTT東日本・西日本が、3GとWiFiをセットで利用可能にするモバイルルータの提供も予定する一方で、ソフトバンクモバイルやNTTドコモをはじめ携帯電話事業者がフェムトセル基地局やモバイルルータを提供するケースもある。既存ネットワークを利用して、端末から無線でどこでもつながる仕組みを用意するという点では、それぞれの事業内容が重なりつつある。

複数の無線方式を意識することなく提供する方式はコグニティブ無線と呼ばれる技術であり、複数の方式に対応するモバイルルータはその実現形態の一つになっている。

ブロードバンド整備に向けて

光ファイバを全戸に引くよりも、適当な無線方式、あるいは、地域のケーブルテレビなどを活用すべきだ。もちろん、光ファイバが望ましいが、そこそこの速度でもどこでも使える方が重要ではないだろうか。その役割としては、あまり普及の進まないWiMAXや本年2010年12月にサービス開始予定のLTEに期待したい。WiFi基地局を整備すればいいという意見もあるが、現在の周波数帯域だけではやはり面的な展開には不十分だ。

新しいサービスが始まると音声通話可能な端末を提供するだけではなく、2種類の通信方式に対応させるコストや大きさ、バッテリなどの面を考慮すると、サービス開始から当面はデータ通信中心の端末を提供する方法が考えられる。また、最大100Mbpsと言われるLTEの場合には、携帯端末1台の通信だけでは使いきれないだろう。複数台をまとめられるモバイルルータに相当する機器が望ましい。加えて、端末のSIMロックを解除すべきというような総務省の方針に対しても、データ通信サービスであれば、WiFi経由でアクセスすることで、ロックの有無にも関係なくなり、ユーザ側の利便性向上につながるはずである。

日本では、高品質高価格が求められることが多い。しかしながら、最高スペックよりもそこそこの速度を安く提供するというのが、世界で求められている技術ではないだろうか。