雑誌の電子化が情報提供形態を変える

ようやくiPadの盛り上がりも一段落をした感があるが、 テレビのニュースや情報番組などでも様々な視点から紹介されて、
これまでこの手の機器に興味がなかった人に対しての影響は大きかったと思う。
そこで、先週に引き続いて、電子書籍について見ていきたいと思うが、
今回は、そのなかでも、特に雑誌に絞って、最新の動向を見ていきたいと思う。

雑誌を電子化するのが電子雑誌なのか?

iPadが世に出たことで急に電子書籍が脚光を浴びたが、実はそれ以前から、
iPhoneやiPodなどの様々な端末に合わせて雑誌が電子化されて提供されてきている。
雑誌を電子化すると一言で言っても、その形態は様々であるが、 日本での状況を大別すると、以下の2つに分けることができる。

  1. 雑誌の紙面の内容をほぼそのまま電子化する(「東京カレンダー」、「OZmagazine」、「OZPlus」など)
  2. 雑誌の紙面の内容を見やすさに配慮して再構成して電子化する(「R-25」など)

日本での雑誌の電子化の現状を見ると、パターン1の場合がほとんどである。
まだ、各社とも試行錯誤でニーズについても把握ができておらず、 雑誌の紙面をそのまま電子化するという比較的手間の掛からない方法を
採用しているということになる。 これに対して、パターン2の場合は、各記事を提供端末で見やすいように最適化をして、
目次も端末の特性を活かしたリンク形式のものにするなど、 電子版を意識して工夫している。 しかし、基本的には紙の紙面内容がベースで、
その延長線上に電子版があるというスタイルは変わらない。

雑誌の電子化がまだ始まったばかりで、あくまでも副業的に雑誌を電子化している 日本の状況からすれば、致し方ないのかもしれない。
しかし、新たな情報提供形態であるメディア(端末)の特徴を使っておらず、 電子化によるメリットを活かしていないというのが実態だ。

「雑誌アプリ」という新たな情報提供形態の出現

これに対して、電子書籍への対応が早かった米国では、状況は進んでいる。
世界で最も影響力のあるファッション雑誌の一つといわれる「VOGUE」を発行する
コンデナスト・パブリケーションズは、「VOGUE」、「GC」、「VOGUE HOMMES」などで
積極的に電子雑誌に取組んでいる。

既に、日本版でも電子化が行われており、「VOGUE NIPPON」と「GC JAPAN」の5月号、 「VOGUE HOMMES
JAPAN」のSpring/Summer号以降を、i-Phone、iPod touch、iPad向けに販売している。
まだ、現時点では、紙の雑誌に対して、一部、動画を組み込んでいる程度であるが、
日本の紙を電子化した雑誌から比べると、メディアの形態を活かした 情報提供に取組み始めていることが分かる。
なお、これらの雑誌は、今後、メディアの形態にあわせた新たな情報提供の形態を入れ込む予定で、今年の夏には新機能の追加や新サービスを予定しており、
購読者の閲覧情報を基にした広告メニューも導入する予定である。

更に同社は、アプリとして一から構築したデジタル版WIRED Magazine を5月から公開している。
ここでは、通常の紙の雑誌では実現できないさまざまな機能を実装しており、
縦・横の表示への対応やマルチタッチ機能に基づいた拡大/縮小などの機能はもとより、
動画、スライドショー、360度画像の閲覧などを可能としている。恐らく、前述の雑誌も、こういった機能を取り込んでくることになるのであろう。

こうして見てくると、これはもはや「雑誌」というよりは「アプリ」に近いものと
言えるのではないだろうか。雑誌を電子化する、ということではなく、「雑誌アプリ」 という新たなジャンルができたという感じがする。

付帯サービスも含めた更なる進化への期待

こうした流れを受けて、今後、製作者は、既存の雑誌の形態にとらわれるのではなく、
新たなメディアの形態にあわせた新たな情報提供の形態を作り出していくことが
求められるようになるであろう。従来の雑誌の編集者のみによる企画に、Webクリエーターが
加わることによって、様々な革新的な情報提供の「かたち」が色々と出てくることが期待される。

また、雑誌本体だけでなく、付帯的なサービスの提供も考えられるであろう。
例えば、雑誌のお気に入りの記事を切り抜いてネット上のスペースに保管しておき、
それらを検索したり、整理したりできるようなサービスを提供して、
マイブックを作成するサービスも考えられる。ネットに繋がる端末の利点を活かして、
こういった類のサービスは色々と考えられるであろう。

更に、こうしたことは、インタラクティブな機能を利用したインパクトの強い
ブランド広告を掲載することだけでなく、読者に志向に合わせた広告を 提供することによって、通常の出版物より多くの広告主を獲得し、
広告収入を高めることも可能になるであろう。

そう言えば、ハリーポッターに出てくる新聞では、写真が動画になっていて、 何とも、おとぎの国のお話という印象を受けた。
しかし、「雑誌アプリ」では、これ以上のことを実現できることは間違いない。 今後の発展に期待したい。