スマートフォンの活用による新たな情報提供のかたち

最近、電車などで iPhone を操作している人が増えたなと感じることが多くなった。 しばらく前は、一部のマニアが使っているというイメージも正直あったが、最近は男女問わず 広く使われている感じがあり、一般の人のスマートフォンに対する認知度も上がったなと思う。 今後は、Android系のスマートフォンの発売も予定されており、より一層、 この手の端末の需要が増えることが予想される。 そこで今回は、iPhone やスマートフォンがどのように活用されているのかについて 見てみたいと思う。

医療分野での新たな iPhone の活用

ハイチでのマグニチュード7.0の大地震が起きたことは記憶に新しいと思う。 犠牲者が20万人近く出たというこの惨事の中で、ホテルで地震に遭遇した米国人男性が、 65時間後にがれきの中で大けがを負いながらも救出されたという報道があった。 この男性、何と、iPhone のアプリを見て、ケガの治療をしたために無事生還したのだという。 iPhoneのアプリの指示に従って止血をし、更には出血によるショック状態により意識を 失うことを避けるために、iPhone のタイマーを20分おきにかけ、目を覚まし続ける努力をしたという。 このような環境下で、必要に応じて必要なことを学ぶというこの行為は、 iPhone でなければ不可能なことで、新鮮に感じる。

こうした事例を聞くと、医療の分野において、 iPhone を活用した新たな取組が 行われているのではないかと期待してしまう。 実際にそのような試みは開始されており、鹿児島県霧島市では、iPhoneを活用した 遠隔医療画像コンサルティングの取り組みが始められている。
また、Android系のスマートフォンのサービスとして、NTTドコモも4月1日から、 医師の教育をサポートする 情報サービス の提供をスマートフォン上で開始する予定である。 ここでは、信頼性の高い医療コンテンツを、手軽に分かりやすく提供し、 実臨床に基づくケーススタディ、薬剤情報などのコンテンツをスマートフォンで閲覧可能だ。 さらに、他の医師との意見交換や回答状況の共有なども可能となる。

スポーツ分野での新たなiPhone の活用

医療分野では、iPhone やスマートフォンの活用はこれから本格的に始まる感じであるが、 プロスポーツの分野では、既に取組が開始されている。 以前のコラムでも述べたが、最近のプロスポーツでは激しい情報戦が繰り広げられており、 いかに分かりやすい形態で情報を提供できるかが勝敗の鍵を握っているといっても過言ではない。 こうした背景からすれば、持ち運びがしやすいiPhone は、スポーツの現場で 情報を最大限に提供できる大きな武器になるのではないかと考えられる。

この代表的な事例が、福岡ソフトバンクホークスのチーム専用アプリを搭載したiPhoneで、 相手ピッチャーの特徴などを動画で確認できるようになっており、 試合前に対戦するピッチャーの研究を行うことが可能となる。 また、それだけではなく、試合日や対戦チームなどから特定の打席を検索して、 自分のスイングの状態を動画で見ることが可能で、ヒット、ホームラン、三振、犠打 のような結果の一覧からも映像を検索して再生することも可能となっている。 こえによって、自分の状態がどのようになっているのかを客観的に把握して、 調整を行うことが可能となる。

実はこのアプリ、北京五輪で銀メダルを獲得したフェンシングの太田雄貴選手が 「iPod touch」で対戦相手の動画を持ち歩いて研究していたという話からヒントを得たものなのだが、 今後はアプリが発達することによって、相手の癖を見つけ出してくれるアプリ、 自らのスイングなどの不調の原因を指摘してくれるアプリなどが提供されるかもしれず、 選手の戦い方もこれまでとは異なってくる可能性が出てくる。 選手にとっても情報戦を制する新たな能力が要求される時代が来るのかもしれない。

iPhone を活用した人材育成

このように、様々な可能性を秘めている iPhone であるが、 最終的には発想力豊かなアプリを作り出す人材の育成が、 今後の発展を支えることになるであろう。 その点では、若いうちから端末に触れて、慣れ親しむことは重要である。

最近では、京都大学で学生が iPhone を使って講義を視聴できる システム を開発したと発表した。 授業中に配布された資料を同じ画面上で同時に見ることも可能としている。
また、青山学院大学では、学生と教員(合計550人程度)に iPhone 3Gを配布して、 出席の管理や資料の配布などで活用している。 しかも、3年生以上は 授業の一環としてアプリの開発に取り組むことになっており、2年間の活用を経て、 柔軟に新しいアプリを作成する土台が出来上がることになる。 今後、こうした中から、これまでの発想とは全く異なったアプリを開発する 人材が出てくることは十分に考えられる。 今後の発展に期待したい。