トップSNSに躍り出たFacebook
ネット調査会社の報告によるとFacebookが世界で最も利用されているSNSのようだ。我が国のSNSは事情が異なるものの、少なくとも米国では以前はSNSといえばMySpaceが圧倒的な強さを誇っていた。その他の単機能型SNSも、学校関係SNSであればClassmates.comがほぼ唯一の存在であった。ビジネス向けにユビキタスなアドレス管理を売りにしたPlaxoが勢力を伸ばしていた時期もあった。
しかし、今やFacebookは既存SNSの機能を吸収し、単機能型SNSのユーザを取り込んでしまった。そして単なるSNSウェブサイトの域を離脱しようとしている。アプリケーション開発プラットフォームとしても拡張を続けており、FriendFeedの買収によりマイクロブログ機能も取り込もうとしている。Twitterに激しく追い上げられているアクセス数だが、それを迎え撃つ体制が出来上がったといえよう。
国内はmixiがSNSの主流であるが、Facebookも国内ユーザ数を大幅に増やしているようである。Facebookが国民性に合うかどうかも見所の一つだ。
驚くべき吸引力
そもそも、圧倒的優位にあったMySpaceを、なぜ2006年に一般公開したFacebookが一気にユーザ数で抜き去ったのか。それはFacebookのユーザを引き付ける吸引力の強さにある。人気があればユーザ数は雪だるま式に増加していくのがSNSの特徴だが、ユーザを引き止めておく工夫がなければ次第に飽きられてしまい、衰退していく。あえてFacebookの魅力を吸引力と読んでいるが、Facebookのユーザを引き止めておく工夫に今までのSNSにないものがある。
Facebookを特徴付けるものがFacebook Platformと呼ばれるアプリケーション基盤である。ユーザはFacebook上で機能する様々なアプリケーションを開発し、公開することができる。比較的容易にアプリを開発できることから、ソフトウェア開発者からは多くのサポートを仰ぐことができ、去年の時点でアプリ数は50万、そのうち100万ユーザを獲得しているアプリが300あると発表されている。膨大な数のアプリケーションの多くはユーザ参加型ゲームであり、これが吸引力を倍増させる。国内においてもGREEやモバゲータウンなどのゲーム型SNSがあるが、これを取り込んだ形だ。
他の単機能型SNSの機能も取り込んでいる。写真・動画アップロード、ソーシャルブックマーキング、コミュニティ、ブログ、メール、フィードなど、非常に多機能である。多くのコミュニケーションチャネルを設けることで、常に他人とつながっている感覚をユーザに与えることに成功している。これも大きな吸引力である。
つなぐ力
しかし、Facebookの最大の吸引力は、ユーザ同士をつなぐ力が強いことである。限定的ながらプロフィールに情報を書き込むとそれを元に関連があるだろう他のユーザとのリンクを作ってくれる。一部のユーザが詳細にプロフィールを公開していると、そのユーザをハブとして相互リンクが発生する。そうするとより多くのユーザがプロフィールを詳細に公開するようになり、さらにリンクが深く・広くなる。筆者も先日、25年ぶりに連絡が取れた旧友がいた。
前述したが、Facebookが我が国でもmixiを抜いてトップSNSになるかどうかは分からない。ただ、この強力なつなぐ力は魅力的である。Facebook自体がオープンなプラットフォームであり、情報を公開することによりより多くの実りを享受できることを実証している。
これをSNSだけに留めておくのは実に惜しい。コンプライアンスやセキュリティ・情報漏えいなどの懸念もあるが、もっとこの「つなぐ力」を実務にも応用していきたいものである。社内でも知らない人は多いし、意外なところでつながっていることが多いが、その多くは見過ごされている。あるいは、旧知の間柄でも知らない共通点があるかもしれない。
企業内に留めておくのも惜しい。さよならインターネット、と会社人は言ったでも述べられているように、もっとネットを活用していかなければならない。共通のテーマに沿って広く遍く世界中の人々が英知を結集する。グローバルな課題が山積する現代ではこのような仕組みが必要なのではないか。