日中韓のWebの相互運用性に関する取り組み

10月19日~20日に東京で北東アジアオープンソース推進フォーラムが開催された。筆者もワーキンググループの一員としてWebサイトの相互運用性をめぐる日中韓の活動を発表してきた。今回のコラムは筆者の発表を元に書いていきたい。

日中韓の現状

まず、日中韓のブラウザ市場とWebサイトの現状を比較してみよう。現状は中国と韓国が似ている。いずれもInternet
Explorer
(IE)が市場の大部分を占め、Firefoxをはじめとしたオープンソースブラウザのシェアは2%以下である。とはいえ、ポータルサイトのようなアクセスの多いサイトはオープンソースのブラウザにも対応している。問題はオンラインバンキングだ。中国も韓国もIEでしか動作しないActiveXを用いたログイン手法が通常利用され、IE以外のブラウザではアクセスできない。中国ではActiveXを使わないログイン方法もあるが、その方法はセキュアではないとされている。実質的にオンラインバンキングは利用できないと考えた方が良い。

一方、日本の場合には、オープンソースブラウザのシェアが10~20%程度(調査によって異なる)あり、オンラインバンキングを含めて多くの主要なウェブサイトはIE以外のブラウザにも対応している。問題はIPAによる調査でも述べられているように社内システムがIEに限定されている企業が多いということである。現在でもIE
6.0以外の使用を許可していない企業も多く、新しいブラウザを使うことができない。さらに、ASPやSaaSなど多数の企業から利用されるシステムがブラウザを限定していることも見逃せない。

中韓と日本で対照的な活動

このような現状を改善すべく各国とも取り組んでいるが、これも中国・韓国と日本で対照的である。中韓はトップダウンのアプローチであるのに対し、日本はボトムアップという違いがある。

中国は公的機関が主要なWebサイトのクロスブラウザ対応状況(異種のブラウザからアクセスできるか)を調査し、調査結果を公開することでサイト運営者に圧力をかけようとしている。調査のためのテストツールも開発中である。関係者から明言はなかったが、場合によっては将来「クロスブラウザ認証」を行う可能性もある。

韓国は「Webの相互運用性ガイドライン」を策定し、まず政府のサイトからクロスブラウザ対応を進めようとしている。ガイドラインでは2011年までにすべての公的機関のサイトをWeb標準に従ったものにリニューアルし、専門家を1500人養成するとしている。サイトは主要な3つのブラウザで動作確認し、プラグインやActiveXなどブラウザに依存した技術を利用することを禁じている。

一方、日本ではWebサイト開発者がクロスブラウザ対応のサイトを作成しやすくするためのツール「Pirka’r(ピリカル)」を開発した。IE、Firefox、Safariでのレンダリング結果を同時に表示するだけでなく、相互運用性を阻害するような書き方をしていないかどうかをチェックする機能もある。このようなツールの普及を通じて徐々にクロスブラウザ対応のサイトを増やしていこうという作戦だ。(なお、互換性チェック機能は中国のテストツールと類似した機能だが、同じ機能でも国によって使い方が異なるのは興味深い。)

クロスブラウザ対応の好機

以上がWebの相互運用性を取り巻く各国の状況である。トップダウンが良いかボトムアップが良いかは各国の政策や文化とも関係し、本論とも外れるのでここで論じるつもりはない。ただ、ひとついえることは中国も韓国も真剣にこの問題に取り組んでいるということである。特に韓国にはVista移行時にActiveXを用いた認証機能がそのままでは使えなくなり、Vista対応に苦労したという苦い思い出がある。韓国はその経験を糧に長期的な投資対効果を考慮し始めたようだ。

折りしもWindows 7が登場し、Windows XPの寿命もあとわずかとなってきた。Windows7には、Windows
7上でWindows
XPを動かす互換機能があるとはいえ、機能も性能も貧弱でセキュリティ的な問題もある旧バージョンのIEを延々と使い続ける状況はそろそろ終わりにしたい。システムをWindows
7に対応させるには、IE
8でシステムの動作確認を取り場合によっては改修も必要になろう。これを契機にもうひとがんばりしてクロスブラウザ対応にしてはいかがだろうか。長期的な視点から継続的な投資を行うべきか、短期的な視点から安いシステムを構築し移行に多大な費用をかけるべきか、を考えるちょうど良い時期である。先進的な事例として、10年前からクロスブラウザ対応を考慮していた住友電工の事例も参考になろう。

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