画像分析による行動予測が犯罪を防ぐ

最近、テレビドラマを見ていると、ハイテク技術を活用して事件を解決するストーリーが 多いように感じられる。そこで今回は、防犯カメラの画像がどのように活用されているかを 見てみたいと思う。

防犯カメラの画像処理を活用した犯人特定

防犯カメラの画像を手がかりに犯人を割り出すといったシーンはテレビドラマでも 多く見かけるものであり、あまり珍しいものとは感じられないであろう。 しかし、防犯カメラで本人を特定する際に、顔などの本人の身体情報だけが証拠になる訳ではない。

面白い事例として、犯人の着用していたジーンズから犯人を割り出すというものがある。 お気づきの方も多いかと思うが、ジーンズの内側の縫い目の部分にはバーコード模様のような、 小さな色のかすれが存在する。 これは、ジーンズは布地が固く一度に縫うことができないためにできるもので、 実は同じ型のジーンズでも全て異なっており、まさに指紋と同じ役割を果たす。

この特性を利用して、1996年に米国ワシントン州での連続爆破銀行強盗事件にて、 顔の画像や指紋や毛髪などの犯人を特定する証拠は一切残されていなかった状況の中、 FBIが犯人を検挙している。 監視カメラの画像から取り出したジーンズの色のかすれを画像処理し、 犯人の部屋から押収したジーンズの特徴と照合して、 ひざ部分のバーコード模様のかすれがなんと完全に一致していることを証明したのである。 FBIの捜査官の発想力も素晴らしいが、それを可能にした画像解析技術も素晴らしい。

起こった事件の解決から犯罪の未然防止へ

防犯カメラの画像は、起こってしまった事件を解決するだけでなく、 犯罪を未然に防ぐ防犯においても使われるようになってきている。

進化型万引き動作検知カメラシステム 「サブローくん」 ((株)リテールサポート)では、 防犯カメラの画像を分析して、人が万引を行う際にとりがちな 「そわそわする」「しゃがみ込む」「首を左右に振る」などの不自然で怪しい行動パターンを 検出し、アラームなどで警告する仕組みを提供している。 しかも、このシステムは既存の防犯カメラを利用できるので導入しやすいというメリットもある。 パターン分析であるために、誤検知も起こりうるが、 最終的には、警告で不審者を知った店員が対応して犯罪を防止するので、 万引き防止のサポートとしては十分に役に立つシステムとなる。 なお、このシステムは今年の9月から本格販売する予定である。

また、 振り込め詐欺防止システム (セコム(株))では、 ATM周辺に専用のカメラやマイクを取り付け、 カメラの画像から不審者を自動で認識し、音声で注意を促す仕組みを提供している。 例えば、携帯電話を使いながらATMを操作する利用者や、マスクや帽子で顔を隠した不審者を カメラの画像から識別して、自動音声で注意を呼び掛けることが可能だ。 不審者の抽出は、「目線がはっきりしていない」といったあらかじめ設定した複数の 要件と照らし合わせることにより判断している。

「サブローくん」が人の動きを認識して不審者を割り出しているのに対して、 振り込め詐欺防止システムでは、顔の表情を認識して不審者を識別している。

新たな技術を活用した行動予測の精度向上へ向けた期待

このように、防犯カメラの画像を活用した様々なサービスの提供は まだ始まったばかりである。しかし、将来的には、視線の追跡や視点停留時間を計測する アイトラッキング分析の技術も活用しながら、より一層効果的な仕組みとして 発展していく可能性を秘めている。

更には、人が意識的に制御できない「瞳孔」の動きと瞬きの回数を測定することにより、 より人の心理を考慮した仕組みも導入されていくことも考えられる。 この仕組みは、 人の興味・関心度を複合的に計測・分析するサービスで既に使われ始めている。 ただ、既存の防犯カメラを使ってこの技術をそのまま防犯システムに活用するということは技術的には 無理な話であるため、専用のカメラの開発など、今後の技術的な発展に期待したいところである。

ただ、これらの高度な仕組みが出来上がったとしても、システムはあくまでも人をサポートする道具に過ぎない。 人がシステムに振り回されることがないように、リテラシーの向上も合わせて図る必要がある。

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