データマイニングで明るい健康生活

汗ばむ季節になってきた今日この頃、夏に向けてシェイプアップのために運動や食事制限を始める読者も多いのではないか。今日は健康管理をサポートするITについて考えてみたい。

メタボ検診の義務化による医療機関向けITサービスの急増

2009年4月より健康保険法が改正され、40歳以上に特定健康検査および特定保険指導が義務化された。
いわゆるメタボ検診である。その目的は、メタボリックシンドロームが引き起こす成人病疾患による医療費増加の軽減である。
義務化されたとはいえ、健康指導のノウハウを保有していない健康保険組合や医療機関もある。 このため栄養指導ソフトウェア や、SaaSを用いた保健指導・請求決済サービス等が提供される等、メタボ検診・保険指導は大きなビジネス市場を作り上げている。

これなら続けられる運動支援サービス

個人向けの健康支援サービスの需要も高まっている。特にネットと連動し、運動をサポートしながらデータを管理するサービスが人気である。
世界中で爆発的な売上を挙げている任天堂のWiiFitを始め、auのランニングの走行距離消費カロリー等を携帯電話で管理するサービスや、NIKEのシューズに埋め込んだセンサをiPodに無線で送信し走行距離などを音声で伝えるサービスなどがある。
これらのサービスは、運動に音楽やゲームといった個人の趣味を関連づけることで、運動の苦手なユーザでも楽しみながら運動を継続できることが人気となっている。

また、TANITAでは体重計や血圧計をPCと無線接続し、専用SNSサイトで日々のデータをグラフで確認できるだけでなく、管理栄養士、健康運動師等の専門家によるダイエットプログラム等健康サポートサービスも行っている
このサービスでは、プロスポーツ選手がトレーナーから個人指導を受けるように、専門家が提案する自分だけの健康維持方法を無料で受けられる、「お手軽なセレブ感」が受けているのではないか。

期待されるデータマイニングの活用

このようなサービスを通して多数のユーザの健康データが蓄積されると、それを活用した新たなサービスの可能性が開けてくる。
ポイントはデータマイニングである。例えば、多数の保険指導記録をデータマイニングすれば、どのような人にどのような指導が効果的であるかが分かり、健康指導メニューを自動作成できるため、専門家人材不足への対策としても期待できる。

高崎健康福祉大学竹内研究室では、健康データを携帯電話から入力してインターネット経由で研究室のサーバコンピュータに蓄積、解析結果を携帯電話に通知するシステムが試験運用されている。

経済産業省が進める情報大航海プロジェクトでは、㈱キューデンインフォコムが、体重計や加速度センサー等の情報を収集、行動識別を行い、生活習慣病コントロールのための情報提供をする実験を行っている
例えば電車に乗ると、電車に乗ったことを識別し、「一駅歩いてみませんか」というような情報がユーザに提供される。

当社も、情報大航海プロジェクトにて、個人の属性や行動履歴の収集・統合・解析するプラットフォームを構築し、実証実験として30人のモニタに対しスポーツジムでの運動や食事等の日常生活の行動情報を収集し分析した。
「行動を毎日記録すると意識改善に効果あり」という、レコーディングダイエットの概念と同様の分析結果や、個人の属性ごとに目標達成の効果を最大化するような行動パターンを推薦する概念も構築でき、データマイニングの健康分野での活用の可能性を示した。

課題は使いやすさと個人情報2次利用

一方で、健康データの活用にはまだまだ課題がある。第1に、ユーザがデータを毎日入力し続けられるよう、入力をできるだけ簡素化させる必要がある。食事や運動履歴等の詳細なデータを日々入力し続けることは、どんなにまめな人であっても難しい。第2には個人情報保護の問題である。マイニングの質を高めるためには、外部データ等複数のデータを組み合わせて分析することが有効であると考えられる。そういったデータの2次利用の過程では、個人の匿名性が保たれている必要がある。

第1の課題については、日々の入力を楽しめるユーザインタフェースの開発が鍵である。特に、本当に健康指導が必要な中高年世代のユーザは、
IT機器をうまく扱えない人も多い。そのようなユーザに配慮したインタフェースである必要である。 例えば、iPodの体重管理アプリ「Weightbot
は単純な体重入力という作業を楽しめるようなインタフェースや音響効果が追求されている。

第2の課題については、個人情報を隠したままデータマイニングする技術(Privacy-Preserving Data Mining)データの匿名化の研究が行われている。
これらは、データを特定のルールで抽象化することで一定レベル以上の匿名性を保つという技術である。
これらの技術は、データの2次利用を促進させ、健康市場のみならずデータマイニング市場をさらに活性化させるものであると期待できるため、実用化が急がれる。

女性の悩みはメタボとは限らずアンチエイジング等総合美に対する意識は高い。
筆者自身、「自分の体の管理くらいは自分で」と思い色々と始めてみるものの、ついつい三日坊主で終わってしまう。そんなレディのためのお助けツールを作りたいと思っている。データマイニングで得られる知見を過大評価しているわけではないが、工夫次第では、それがユーザの生活の一部となり健康をサポートするものになるのではないか、と筆者は考えている。

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