テレワーク環境は整いつつある、今こそ本当に必要なものは。

いずれはテレワーカーになりたい。

子育てとキャリアを両立したい女性の多くが、一度は考えることであろう。筆者もそんな女性の一人である。そのためは数年後にはテレワークが当たり前の世の中になっていて頂きたい。しかし、まだまだテレワークが一般的とは言い難いのが実状である。

テレワークは女性の会社選びの条件に

すでに日本でも複数の企業でテレワークが導入されている。(社)日本テレワーク協会主催の第8回テレワーク推進賞(2007年)の受賞企業を挙げると、松下電器産業、日立製作所、富士通ワイエフシー、コクヨオフィスシステム等がある。その他、日本IBM、日本オラクル等も早くからテレワークを導入している。(余談であるが、弊社も2005年に同協会よりテレワーク推進賞優秀賞を頂いている。)

テレワーク導入の背景には、少子高齢化が進む中、企業にとって女性は重要な人的リソースであり、経験豊かな女性社員の退職は企業にとって痛手であることがある。多くの働く女性は会社に対し育児・介護等に関する支援制度を望んでおり、それら支援制度が弱いと優秀な女性を採用することが出来ない。また、2008年が「ワークライフバランス元年」と呼ばれるように、ワークライフバランスの重要性が叫ばれる昨今、ワークライフバランス向上のためのテレワークの必要性も増してきている。そういった状況下、少子高齢化時代における労働力確保に向け、政府もe-Japan戦略で「2010年までにテレワーカーを就業者人口の2割にする」という目標を掲げている。

PCの安価・高性能化とブロードバンドの普及もテレワークを後押ししているが、課題もある。

情報セキュリティはシンクライアントで

個人情報など機密情報を社外に持ち出した際の情報漏洩に対する世間の目は、最近特に厳しくなっている。当然、テレワークであっても社内と同じレベルの機密性が要求される。

この問題を解決するのがシンクライアントである。シンクライアントは、ユーザが使用するクライアント端末には必要最小限の機能のみを搭載し、ネットワークで繋いだサーバ上でアプリケーションソフトやファイルを管理するシステムである。 シンクライアントをインターネット上の仮想専用線で共有サーバと接続することにより、社内とほぼ同等のセキュリティが得られる。 以前は専用端末が必要であったが、日立等からUSBタイプのシンクライアント化ツールも発売され、より低コストでセキュリティの高いテレワーク環境を構築することが可能となりつつある。

コミュニケーションは工夫次第で

テレワークにおける最大の課題として、社内のコミュニケーションがある。その解決ツールとして、いわゆるコラボレーションツール(グループウェア)が挙げられる。それらの多くはWeb化され、スケジュール管理・プロジェクト管理・必要な書類・仕事上の相談事等をメンバ間で共有し、報告・連絡・相談の「見える化」を行うツールとして、テレワークで実際に活用されている。

難しいのは、会議やちょっとした指示など、場を共有しながら行う共同作業である。本格的なテレビ会議はまだ高価であり、導入障壁は高い。しかし、いくつか解決策がある。2人で画面を共有する「リモートデスクトップ」を使えば、画面を見ながら直接指示や修正することができる。さらに「SharedView」を使えば、最大15人まで画面を共有できるため、音声会議システムと組み合わせれば、遠隔会議もできる。

コミュニケーションについては、工夫次第でオフィスと同等のコミュニケーションが取れるIT環境が整ってきた。

導入する勇気と社員のテレワークリテラシ向上を

この他にも、テレワークの導入には、人事管理やペーパーレス化など課題はまだまだある。しかし技術的には徐々に解決されてきており、それをどう活かしてゆくかが重要なのである。

第一に、企業の経営者がテレワークと周辺ICT技術について正しく理解し、テレワークの試験的に導入する勇気を持つことである。一時的に弊害が生じる可能性もあるが、優秀な女性社員を確保するためには、テレワークの導入は不可欠であることを認識すべきである。そして、試験導入を通じて、テレワークに移行可能な業務を切り分け、自社におけるテレワークスタイルを確立することが重要なのである。

第二に、テレワーカーとその周囲のメンバのテレワークリテラシの向上である。コラボレーションツールの単に使い方を覚えるだけでなく、ツールを活かした自分達流のテレワークコミュニケーションスタイルを確立しなければならない。それためには、部署メンバ全員の協力とテレワークリテラシ向上が不可欠である。

テレワークが普及し、テレワークに従事する女性「テレワウーマン」が活躍する。彼女達は週に何日かはテレワークを行い、空いた時間を余暇や子供との時間に当てる。そんなテレワーク社会の到来を筆者は夢見ている。