ずいぶん前になるが、 高機能ワープロなんて要らない! という記事を書いた。 それから、Microsoft Officeは2008になり、Linux上のワープロソフトや、Googleドキュメント などのワープロソフトが開発さされている。 しかしながら、この状況はあまり改善されていない。
文章作成に特化できるワープロソフトは少ない
弊社のように報告書作成を生業とするものはもちろん、比較的長文の報告書を作成する業務は世の中にいくらでも考えられる。 しかし、メジャーなワープロソフトでは、使い勝手や作業効率が劣る点が多々ある。 メジャーなワープロソフトの最も大きな問題は文章のロジック(構成)とスタイル(表現、見栄え)との分離ができていない点である。
私は、今でも、LaTeX のような、「執筆者は、文章構成と内容のみを記述し、 見栄えは、これとは別に定義したもので、自動的に作成されるシステム」こそが 整合性を持った文書作成ツールとしてはベストであると考えている。 TeXは、章節項といった文章構成をsubsection,subsubsection,…というふうに定義しながら その構造の中に文章を記述していき、別に定義したスタイルで、見栄え良く印刷できる。 よって、執筆者は、文書作成中は、見栄えは一切気にせず、文書構成と内容に集中できる。 よく使う用語は、マクロとして定義することにより、用語が変更になっても、文章全体で、用語を置換することも用意にできる。 文書を分割して複数人で執筆し、コピーすることなく、一つの報告書として印刷することもできる。 構造を、プログラミング言語のように定義するので、 例えば、試験仕様書から試験報告書の整合性をもってテンプレートを自動生成することも容易である。 しかしながら、悲しいかな、TeXは、情報系や数理系の大学や研究者の間でしか使われてはいなく、 広く、実務で使われてはいない。 ゆえに、これを自分だけで使う分には問題ないが、他人とやりとりすることができない。
メジャーワープロソフトに望むこと
メジャーなワープロソフトの機能は、ある程度飽和しているように思う。 しかし、文章の構成と内容にのみ集中するという、このある種原点の機能はちっとも充実していない気がする。 あるいは、軽視されているか、今のままで十分と思われているのかもしれない。 メジャーなワープロソフトには、インラインモードという見栄えを除外して階層構造で文章を 編集できるモードのあるものもあるので、 これが、全くできていないということではないが、 見栄えの変更の自由度が高すぎて、結局、文章の構成と内容に集中できないという問題があるし、 見栄えをスタイルとして保存し、再利用するような機能も充実しているとはいえない。 また、用語の置換は、マクロでなく、文字列の置換であるため、置換誤りが生じる可能性もある。 試験仕様書から試験報告書テンプレートの自動生成といったことは、中間構造としてXMLを介せば 可能であるが、ワープロソフトのマクロとしてTeXのように容易に実現できるものではない。 報告書や本や論文の執筆のための、「文書構成・内容とスタイルの分離」という この基本的な機能を追求し充実させることのニーズは、 意外と多いのではなかろうか? 報告書や本や論文をターゲットとして、 構成と内容のみに、集中できるワープロソフト機能の充実を切に望む。