ピュアオーディオの世界
レコード自体を知らない世代が成人化する昨今、いまだにアナログがデジタルよりも大幅に尊重される世界がピュアオーディオの世界である。iPodなどのデジタルプレーヤーやケータイ音楽などの圧縮(劣化)された音楽が大多数を占める今日であるが、極少数ではあるがただひたすら音質に拘るピュアオーディオも健在であり、ひそかな、プチブームにもなっている。
直近の話題としては、USB接続可能なレコードプレーヤーが相次いで発売されている。まあ、これは古いレコードを取り込むためのものなので、ピュアオーディオではないかもしれないが。
新しいことではないが、真空管を使ったアンプのキットは健在で、今なお新しいキットが開発されており、根強い人気を誇る。
一時は経営が危ぶまれたが見事復活したKenwoodは、その製品の音質をチェックする音質マイスターを置いて品質を高めている。
IT化の波
二昔前はCDの登場で大変なショックを受けたピュアオーディオであるが、それ以来は比較的平穏な時代が続いた。SACDなどはむしろ歓迎されて向かい入れられた。しかしここにきて、デジタルプレーヤーの影響がピュアオーディオにも波及してきている。
まずはHDD。CDをとっかえひっかえしなくても、所蔵する楽曲ライブラリから任意の曲を瞬時に聴けるというのはあまりにも便利すぎる。数年前からボチボチ製品化されていて、まだ完全に受け入れられていないが、ハードディスクオーディオプレーヤーが登場している。マニアの間では、HDDを交換して音質を議論しているようである。
そしてネットワーク。ピュアオーディオにとってノイズ源になりそうなものは極力排除することが基本なので、駆動部分のあるCDや、上記HDDプレーヤーも含めて全て別の部屋に排除し、デジタルデータだけネット経由で転送し、演奏しようというものである。日本ではミニコンポやデジタルプレーヤー関連で類似の製品はあるが、Slim DevicesのTransporterは値段からしてもピュアオーディオ系である。欧米ではmusic serverという分野が確立されており、100万円を越す製品も存在している。
オーディオPC
ピュアオーディオで頑張っているオンキヨーはPCの世界でも頑張っている。拘りのあるサウンドカードは根強い人気を誇り、数あるサウンドカードの中でも音質面では高い評価を受けている。PCメーカのソーテックとの合併(リンク先はPDF)やMicrosoftと特許クロスライセンスを結ぶ(リンク先はPDF)など、PC業界でも積極的に動いている。
そのオンキヨーがPCとオーディオを融合させようと、HDオーディオコンピュータを発売している。便利なPCの世界と趣味のオーディオの世界を橋渡ししようという試みである。
日本のPC市場も熾烈な価格競争の果てに荒野となりつつある。IBMをはじめ多くの企業がPCから撤退し、成熟産業になりつつある。いかに安く仕入れて、安く作って、早く売るか。そんな過酷な競争の中で、拘りのある開発者が拘った音楽を奏でるPCがあって、心穏やかに趣味の音楽を楽しむのもいいかもしれない。