携帯電話のペアレンタルコントロール

今、未成年者向けの携帯コンテンツの世界が大いに揺れている。有害コンテンツから未成年者を守ろうという方向性はよいのだが、小中学生には携帯電話を持たせないという極論にまで発展しそうな気配である。

青少年ネット規制法

いわゆる「青少年ネット規制法」というものが、現在与野党で検討されており、今国会で成立しそうな勢いである。これは、未成年者を有害サイトから守るために、フィルタリング等によってアクセスを遮断するという趣旨のもので、特に携帯電話への適用の是非が注目を集めている。フィルタリングに加えて、「小中学生には携帯電話を原則持たせない」という極端な規制にまで発展しそうな勢いをみせている。

本規制法の背景には、インターネットを通じた未成年者への有害情報の氾濫が根本的な原因である。「わいせつ情報」「出会い系」「学校裏サイト」「自殺サイト」など、明らかに子供たちにアクセスして欲しくないサイトが数多く存在するのは事実だろう。しかし一方で、本規制法に反対する意見もある。例えばインターネット先進ユーザーの会(MIAU)は、情報発信者に対する検閲に対する懸念とともに、青少年の情報リテラシー向上が有効であると主張している。

有害コンテンツの認定方法

あるサイトが有害コンテンツを含むかどうかの判定は非常に難しい。例えば現時点の携帯電話のフィルタリングサービスでは、ホワイトリスト方式を取っているため、一般には有害と思えないサイトまで遮断されてしまう。試しに、今年の2月に子供の携帯にフィルタリングサービスを適用してみたところ、「Wikipediaも見られなくなったので解除して欲しい」と言われた。実際のところは携帯ゲームサイトにアクセスできなくなったのが一番きつかったようだ。

こうした携帯電話のフィルタリングサービスに対して、携帯コンテンツ提供者から一斉に反発する声があげられ、フィルタリング方式を含めて抜本的な改革が求められている。当初は国の機関による有害サイト認定機関も検討されたが、現時点では民間の第三者機関によってサイト認定を行う方向でまとまりそうである。第三者機関としては、現時点で「モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)」と「インターネット・コンテンツ審査監視機構(I-ROI)」の2つであるが、今後の動向は流動的である。

ペアレンタルコントロール機能の強化を

現状の流れとして、未成年者のインターネットアクセスをフィルタリング等で機械的に規制する方向にあるが、筆者はそれよりも「ペアレンタルコントロール機能」の充実に期待したい。つまり、子供のインターネットアクセスに関して、保護者がより能動的に関与することである。上述した現状の携帯フィルタリングサービスの一番の不満点は、どのサイトがフィルタリングされているのかが、保護者である筆者からわからないブラックボックスになっていたことだ。

フィルタリングの代わりに、例えばNTTドコモでは「iモードアクセス履歴検索サービス」がある。これを使うと、子供がいつ・どのサイトにアクセスしたのかすべて把握できる。しかし、提供されるのは生のログのため、例えば1ヶ月分だけでもそのリストは膨大である。ログ解析のためのツールも同時に提供されないと、このサービスでチェックするのはなかなか難しい。

ペアレンタルコントロール機能についていえば、携帯電話よりもパソコンの方が格段に進んでいる。OS にデフォルトで付いてくる機能もあるが、サードパーティ製品も多数存在する。携帯電話にも、キャリアが提供する一元的なフィルタリング等のサービスだけではなく、保護者が判断して選択できるオプションを多数用意して欲しいものである。

「小中学生に携帯電話を持たせない」という機運が高まる中、筆者はあえて子供たちにこそそうしたツールを積極的に持たせるべきと考えている。今の子供たちが今後成長する過程で、携帯電話を含めたインターネット利用は不可避であろう。それならば、早期に情報リテラシー教育を実施して、それらのツールを安全につかう技術を身につけるべきである。

さらに、その子供たちの安全のためには、保護者にも同等以上の情報リテラシーが必要である。子供たちがアクセスしているサイトにどのような情報があるのか、「プロフ」や「ゲームサイト」がどのように使われているのか、できれば一度でいいのでアクセスしてみて、その危険性と利便性を体感してみて欲しい。こうして子供たちと同じ土俵に立った上で、インターネット利用について家庭でフランクに会話ができるようになることも、情報リテラシー教育の重要な要件である。