UMPCってなに?
Ultra Mobile PCを略してUMPCと呼ぶが、超軽量、小型のPCで、これまでの小型軽量ノートPCをさらに小型軽量したものとイメージすればよい。概ね、1kg未満、ディスプレイ、キーボードが付属した一体型のPCで、通常のWindows(あるいはLinux)が動作可能なPCである。我が国においてはLibretto、Vaio C1、Vaio Type Uなどの先鞭があり、何を今更「開花宣言」するんだ? とお思いかも知れない。そもそも、今更UMPCと騒ぐ理由が何かあるのか? とも。
従来は小型軽量PCを製造するには特殊な技術・材料を採用する必要があり、割高になる傾向があり、価格が重視される欧米ではさほど注目されなかった。我が国ではUMPCにはあてはまらないが、1kgを少し上回るB5サイズと言われる小型軽量ノートPCは山ほど発売されている。これらのノートPCとUMPCとは何が違うのか?
100ドルPC
マサチューセッツ工科大学のネグロポンテ氏の推進する100ドルPCプロジェクト、「One Laptop Per Child」(OLPC)の影響は無視できない。グローバルなデジタル・ディバイドを解消すべく、主に発展途上国の教育機関向けに格安なPCを提供していこうという趣旨のプロジェクトである。100ドルであれば直接購入に踏み切る国もあるだろうし、先進国による援助に頼ることも出来るかもしれない。
最初に開発されたQuanta ComputerのXOはさすがに一般ユーザが使うにはあまりにも低いスペックではあるが、スペックと価格のバランスをここまで追求することの意義はとても大きい。その後、200ドルPCと呼ばれる機種が開発され、そして最近になって5万円(約500ドル?)近辺に一般ユーザにも魅力的な機種が相次いで開発された。
Asus EeePC、Gigabyte M704、Everex Cloudbookなどは(在庫さえ確保できれば)入手可能である。そして皮肉にも、これらの機種は先進国のユーザによって引っ張りだこで、EeePCなどはバックオーダーを大量に抱えて生産が追いつかないようである。
ブーム? それとも・・・
PDAの衰退によってケータイ(2〜4万円)と低コストPC(10万円未満)との間を埋めるデジタルガジェット空白地帯にタイムリーに登場したUMPCだが、PDAの跡を継ぐことができるのであろうか。
早くもEeePCの次期モデルが発表されている上に、その他に登場が予定されている機種も数多い。そしてUMPCを後押しする基盤技術も整備されつつある。CPUについてはIntel Atomとそれに対抗するAMD Bobcat(未発表)がこれまで以上の高パフォーマンス/電力を約束している。将来的にはSSDも容量が増加して価格がこなれてきて、省スペース、省電力が加速されるだろう。残念ながら、バッテリーに関しては大きな進展は望めないが、汎用ロジック回路のハードワイヤ化などの省電力技術は進んでいる。
UMPCを根付かせるマーケットニーズ、基盤技術は将来的なものも含めて確かに存在する。ひとつ不足しているのは日本企業の参加である。これまでの価格競争に疲れてしまっているのか、あまり関心が高くなさそうである。しかし、小型軽量化は日本企業の得意分野であるはずだし、価格帯もケータイより少し上で、高機能ケータイも日本企業の得意分野のはず。
今発売されているUMPCの日本モデルはWindowsを搭載しているので、同じモデルでも欧米のものよりも割高である。ここでLinuxを用いてうまく日本ローカライズを行えばいい線いくのではないか。後は低価格なHotSpot接続契約をバンドリングするなど、サービスを付加する戦略も考えられる。それよりもデザイン力を発揮して、「持っててカッコイイもの」を作るだけでもヒットするかもしれない。
行き詰まり感のあるケータイの次にくるデジタルガジェットととして有望であるだけに、日本企業にも頑張って欲しいものである。