MVNOは定着するか

先日ソフトバンクモバイルの通信網を使ったMVNO(Mobile Virtual Network
Operator)として、ディズニーモバイルのサービス始まった。端末が異なるぐらいで、サービス的にはソフトバンクモバイルとあまり差がないようだ。

MVNOとは

MVNOとは、移動帯通信事業者の持つ無線系設備を利用して、第三者が通信サービスを提供する方式である。携帯電話網として利用可能な無線の帯域は有限なので、全国規模でカバーできる事業者は限られてしまう。
一般に国によって事業者の周波数割当方式が異なる。例えば、アメリカでは周波数帯域をオークションにかけたり、日本では監督官庁が公募で決めている。割当方法にかかわらず、同じ周波数帯で利用可能事業者は、物理的に3、4社程度しかない。そのため、一般的には資本力のある企業が有利である。そこで、参入機会を増やすために、MVNOという仕組みが用意されている。

MVNOの実現方法を大きくわけると2種類ある。通信事業者のネットワーク設備のみを借りて、顧客管理や課金などの仕組みを通信事業者として自前で用意する方法、設備だけではなく、顧客管理等をすべての機能を利用して、自社のブランド名を使ってサービスを提供する方式がある。
前者の方式については、提供する通信事業者とは異なる料金体系等を提供できるなどの自由度が高いものの、自社で加入者管理、課金などのシステムを構築する必要がある。国内では、ウィルコムの設備を借りた日本通信の事例がある。加入者の管理にかかるシステムを簡略化するために、定額制や売り切り方式を導入することが多い。
後者の方式については、ディズニーモバイルのようにブランド力のある企業が自社のブランドとして提供することで、ユーザを集めている。
いずれの方式の場合でも、通信事業者とは異なる販売チャネルを通じて、自社が有する通信容量に対するユーザを獲得したいという思惑と一致する。

MVNOはビジネスチャンスか

日本では、NTTが持つ固定網については開放義務があるため、実際各ISP社が提供する光ファイバ網のほとんどはNTTのファイバ網を使っている。一方で、無線系インフラに関してはこれまで開放義務がなく、これまでは通信事業者間での契約により行なわれていた。そのため、自社のサービスにかかっているコスト等や、事業者間の個別契約内容について明らかにする必要がなかった。
しかしながら、監督官庁である総務省が2007年に開催したモバイルビジネス研究会では、
今後の携帯電話の事業戦略あり方として方向性について示しており、その中では端末のインセンティブモデルの廃止を示すだけではなく、MVNOの普及促進のために公平な環境を提供するようことが打ち出されている。

これにより、新たに参入する企業にとっては、携帯電話網を利用したサービスを提供しやすくなっている。ビジネスチャンスにつながっているものの、必ずしも通信事業者が持つ特有の機能をすべて利用できているわけではない。例えば、インフラを持つ事業者よりも同等サービスが大幅に安価に提供できないようにパケットの単価を設定したり、端末の位置情報を提供できないようにするケースもある。

固定網では既に公平な環境になっており、通信事業者が持つインフラを利用してサービスを提供する事業者であるISPが複数いるのは周知の通りである。このような競争環境にあるため、世界でも安価な光ファイバ利用料金は実現されている、と見ることもできる。ただし、多数あったISPは撤退や事業売却に伴い、今やほとんどのISPは通信事業者系列になっており、インターネット接続サービスのみでは付加価値が少ないことを意味する。MVNOでも競争環境が激化すると、携帯電話の接続サービスも最終的にMVNOが機能しなくならないとも限らない。事実、日本でサービスを始めたディズニーモバイルはアメリカでは撤退している。

今後の方向性は

今後数年以内にWiMAXやLTEなどの3.9Gの新しい通信サービスの提供が予定されている。今度サービス開始が予定されている方式では、20MHzという比較的広帯域な周波数を提供されることもあり、MVNO環境の提供が事業者に求められている。新しいサービス開始時には、利用者を0から集める必要があり、MVNOは有効な手法である。また、既存事業者が安価に提供すると自らの既存サービスの価格破壊を引き起こしかねないため、別ブランドで提供する方が安全である。WiMAXを提供予定のKDDIは、UQコミュニケーションズ(これまではワイヤレスブロードバンド企画)という名称で事業を展開している。

パケット定額や同一グループ間での音声定額制が始まっており、モバイル通信の場合でもネットワークリソースが余る時代になりつつある。通信機能を生かした特徴のあるサービスを提供すること、あるいは、MVNOのブランドを生かし、例えばディズニーモバイルなら、ディズニーランドのアトラクションの優先入場などのこれまでにないメリットを示すことがMVNO定着の鍵になるだろう。