海外IT小話2題

私事で恐縮ながら、このところ出張が続いてオフィスを不在にしていることが多く皆様に迷惑をお掛けしている。 昔は「時差もあるし、連絡が取りにくい以上、ある程度はいたしかたない」と言い訳もできた。 しかし、いまやそんなのんびりしたことを言ってもいられなくなっている。 インターネットへのアクセス環境が世界中いたるところに整備されたため、出張先でひと仕事終えたあとホテルでゆっくり休もうにも、更なる指令がメールに乗って地球の裏まで追いかけてくるのだ。しかも時差のせいで24時間働かされることにもなりかねない。 これも高度情報化社会がもたらした功罪(あえて「功罪」といいたい)のひとつだろうか。

そのようなわけで、今回、出張中に本コラムの当番が回ってきた。今回は趣向を変えて、海外で気になるちょっとした出来事を2題、紹介したい。

放置されているエラー画面

最近は様々なところで情報端末、いわゆるキオスク端末を見かける。とくに大きな駅や空港には必ずといえるほど端末が用意されている。 乗客はその端末を操作して切符を手配することもできるし、また広い空港のなかで目的の搭乗口やラウンジを探し出すこともできる。 さらに到着や出発の情報提示も、昔ながらの機械式表示はどこへやら、綺麗なグラフィック混じりの液晶画面がいまや当たり前である。

交通拠点以外でも情報端末は大躍進している。ベトナム、ハノイの市街では、街中に観光案内のキオスク端末が設置されているのを発見した。 そこだけ妙に未来的で、しかも誰も見向きもしていなかったのが印象に残っている。

これらの情報端末、その使い勝手はともかくとして、セルフサービスの情報機器がひろく浸透しているのも、世界的な高度情報社会化の現れといえる。 しかし「仏作って魂込めず」、エラー対策の不備でサービスが止まっている画面をしばしば目にする。 洋の東西を問わず、世界中のあちこちで寂しい状態に陥っている端末を目にする。とくにバッテンマークの付いたエラー表示が出ていると、 「せめてお詫びの画面を出すとか、もう少し作りようがあろうものに」と、とても残念な思いが心に浮かぶ。

どのOSとは言わないが、これまで多くのエラー画面を目にした中でほぼ共通していたのはバッテンマークのダイアログだった。 これはおそらくシステムを構成するOSのシェアによるものだろう。「違うOSを使ったほうが堅牢で、エラーを起こしにくい」などということはないと信じたい。

私の経験をいうと、これまで一度だけ、Linuxベースのシステムで不具合に遭遇したことがあった。某航空会社のビデオオンデマンド(VOD)システムの不具合である。 私の座った席のVODがうまく動作せず、コントローラをいじっているうちにエラーのダンプ画面が表示されてしまった。 その内容から、このシステムがLinuxで動作していることが判明した。

この話には後日談がある。この出来事はシンガポールへセミナの講師として出かける途中の機内で起こった。 この貴重な経験を写真に撮りセミナの冒頭で紹介したところ、受講者の関心をぐっと引きつける事ができた。 なにしろセミナのテーマがLinuxによるシステム構築に関連した話だったからである。

まちなかのインターネットカフェ

さて次はインターネットカフェの話題である。

東南アジアの都市ではいたるところでインターネットカフェを見かける。 バックパッカーにも人気で、ネットで情報を仕入れて移動するというパターンや、最近では移動の記録をブログで綴りつつ旅をするというスタイルも多いらしい。 利用料は日本円にして1時間100円前後といったところ。国レベルで上流がボトルネックになっていることが多いため接続速度はあまり期待できないが、 情報流通のインフラとしては非常に有効な手段を提供している。

一方、先進国に目を向けてみよう。今回の出張、ヨーロッパの地方都市を順繰りに回っている。移動中によく街を観察してみると、ときどきインターネットカフェを見つける事ができる。 東南アジアのように「角を曲がるとネットカフェにあたる」というほどではないが、無い事はない。密度はほぼ日本と同じ程度であろう。

と思っていたら、マルセイユの繁華街でネットカフェの密集地帯を発見した。マルセイユは地中海に面したフランス最大の港湾都市だ。 地中海を挟んでアフリカに相対しており、街を歩いているアフリカ人やアラブ人は多い。

で、そのネットカフェ密集地である。それはアフリカ人やアラブ人でごった返す地域に存在した。 店の入り口には、我々にはあまり馴染みの無い国旗とTelephone (Telephonique)という文字が踊っている。 アフリカの国々を表す国旗と、安価な国際電話サービスの提供を示しているのである。 マルセイユにはアフリカに向けた国際電話ブースの発展系としてネットカフェが存在する。 料金は1時間で2ユーロ程度。欧州の物価高を反映してか、日本や東南アジアと比較するとやや高い。

このようにインターネットカフェのあり方ひとつとってみても場所によって特徴があり、地域柄を表していて面白い。