教育の場としてのアキバ

アキバ再開発

戦後から電気街のメッカとして、また海外から多くの観光客も集める世界的に有名な街、秋葉原、通称アキバ。そのアキバも時代の流れには逆らえず、再開発の真っ最中である。秋葉原クロスフィールドとしてもうすでに再開発は進行中であり、秋葉原ダイビル秋葉原UDXつくばエキスプレスヨドバシカメラがここ数年相次いで開業し、JR秋葉原駅も改修工事が現在も続けられている。

これまでの電気・電子部材流通、店舗集中による集積効果の利点はネットコマース、郊外家電販売店の躍進などにより切り崩されてきており、未来に向けたITセンターとしての再生を図ることについてはアキバのとる道としては必然といえよう。実際、アキバよりもネットのほうが電子部品の入手は楽な場合も出てきた。

ここ数年アキバに行っていない人は駅の北側を見たらビックリするだろう。降りる駅を間違えたんじゃないかと。

ITセンター

主にダイビル、UDXにおいてITセンターとして将来に向けてのITインキュベーション/ファシリテーションを行おうとしている。IT企業誘致のためのオフィススペース、産学連携スペース、コンベンションセンターなど、近代的な設備が備わっており、これまでアキバにおいて開催されたことのないようなコンベンション、セミナー、ワークショップなどが開かれ、新しい変化が感じられるようになった。

この潮流に対して逆らう意図は全くない。しかし、新しいアキバに、アキバがこれまでに来訪者に与え続けてきた、ワクワクするような雰囲気が感じられないのは筆者だけではないはず。アキバがこれまで放ち続けてきた影響力にどれだけのIT技術者が恩恵を受けてきたことだろうか。このオーラが失われようとしていることに危機感を感じざるを得ない。

雑然とした中に他では得られない物品、情報が隠されている。それを探しつつ散策を楽しむ。それがアキバの醍醐味であった。IT技術者が欲する探究心を満たす魅力があった。整然とした街並みは見た目には綺麗であるが、アジアならではの混沌も必要なのではないか。古い建造物を改築する中にもこのような要素を是非とも残して頂きたい。それこそがIT技術者へのよい教育環境なのではないだろうか。

IT教育

例えばJR秋葉原駅付近の旧来の電気街。所狭しと小さな専門店が雑然と並ぶが、様々な発見があり、学びがある。カタログでは分からない高輝度LEDの眩しさ。CPUに数億と実装されているトランジスタもパワートランジスタとなると実物を見たらその大きさに驚くはず。骨董品と化している真空管トランジスタも実物をみるとガラスと鉄のコントラストが大変美しいだけでなく、その温かみのある音色に感銘を受ける。

そして何よりこれら専門店の店員との会話から得られる情報の質は書籍やネットには無いものがある。しかし気のせいか、彼らITの達人の高齢化、過疎化が進んでいるように思える。ITの達人の拡散、衰退を見過ごすべきではない。スペシャリスト、教育者としてアキバにとどまってもらい、観光資源としても、保護・育成すべきではないだろうか。

新生アキバにもITの達人たちが活躍できる場が確保され、新たな発見や学びを求めワクワクしながら将来に渡っても通い続けたいものである。