コンテンツのネット流通の潮流

インターネットがはやり始めたころ、その可能性から、書店やCDショップやレンタルビデオ店は そのうちなくなるだろうといわれていた。 それから10年以上を経た現在、ネット上には様々な音楽、ビデオ、電子書籍といったコンテンツが 流通するようになったが、リアルな店がなくなりつつあるという話はまだ聞かない。

コンテンツの相違によるそれぞれの状況

podcast や携帯電話用音楽配信など楽曲配信の部分では、CDショップに少し代わる部分もでてきたようである。 一方、動画については、一部のインターネットプロバイダやコンテンツ配信業者は、無料のものや有料コンテンツを 配信しているが、それが、テレビやビデオほどの品揃えがあるかというと、 やや劣るというのが現状である。 CM料でコンテンツ配信を維持しているテレビに比べ、 認知度とユーザ数に比して、著作権料が高いという問題もあるかもしれない。 また、PCで見るかぎり、現在のブロードバンドのビデオストリームの画質は デジタル放送と比べ見劣りする。 これは、配信側のビットレートが低い、デジタルテレビがハードウェアでデコードするのに対し、 PCは一般にソフトウェアでデコードすること、などによるものであろう。

テレビ、ビデオといった、いわゆるメジャーコンテンツのネット配信が必ずしも普及していないのに対し、 個人が配信するメディアであるブログ、 動画共有サイトYouTube などは、 今までなかった個人が主役となった情報発信(Web2.0的世界)により 独特の世界を作りあげている。

電子書籍については、 電子書籍市場の育成を望む!(TakeITEasy2004.06.15) に書いた状況からあまり進んでいない感じである。 しかし、ここでも、携帯電話向けに、短く区切ったテンポの良い文章による携帯小説といった、 新たな流れができている。 利用形態に応じて、コンテンツそのものが、これまでとは変化してきた というのは、ブログやYouTubuと同様の現象である。

まだまだコンテンツは個人の手元に分散する

テレビのネット放送が進まない理由のひとつとして、 「何がネットでのコンテンツ流通を妨げているのか」(INTERNET Watch)  によると、以下のようなビジネスモデルの問題もあげられている。 「テレビのビデオ化が進んでいるのは、それがビジネスとして成立しており、 番組制作の時点でビデオ制作を想定した契約や締結が結ばれている。 放送局も企業である以上利益を求めるのは当然のこと」とした上で、 「IT分野をインフラとして重視することは国策でもあり、 各方面がネット配信をビジネスにつなげるために協力し合う必要がある」。

今から約7年も前に、 ブロードバンド・サービス一考 〜 コンテンツの集中 VS 分散(TakeITEasy2001.01.16) という記事を書いた。 無線LANにより音楽をダウンロードできるiPodTuchや、個人のビデオ流通インフラであるYouTubeの登場により、 状況は少しずつ変わっている。 しかし、上記のようなことを勘案すると、 まだ、ストリームが全盛になり、個人がいつでも見たいコンテンツを ダウンロードすることなく閲覧でき、 書店やCDショップやレンタルビデオ店はなくなる、という状況にはなりそうにもない。 NGNや、 ネットを用いたテレビ放送IPTVの登場により、この状況は変わるかもしれないが、 まだ、しばらくは、コンテンツは個人の手元に分散する、状況が続くのだろう。