闘うかブロガー

個人ジャーナリズム幻想

ブログが登場したころ、これは個人によるジャーナリズムの誕生だと、もてはやす人達がいた。世の中には真実を伝えたいと思っている潜在的なジャーナリストがたくさんいる!これまで、そういう人達は新聞やテレビといった既存メディアと繋がりがないため、発言の場がなかった!しかし時代は変わった!ブログさえあれば誰でもジャーナリストになって世界中へ声を届けることができる!一個人の声が世の中を変える!というような話。あれから数年、ブログの存在はすっかり定着したが、さて、日本にどのようなジャーナリスト・ブログが誕生したかというと……まあ、無いわけではないが、「溜まった仕事を片付ける20の方法」みたいなライフハックのほうがブログの記事として断然人気なのは事実である。

かくいう私もブログにもっと大きなものを期待していた一人だ。ブログに限らず、インターネットがその地位を確立してから、ニュースグループ、メーリングリスト、メールマガジン、SNS、巨大掲示板、仮想空間といったサービス/メディアが次々と現れてきた。そして、こうした新しいメディアが誕生するたび、個人ジャーナリズムの時代が来るのだと言う人達が現れ、私のように信じやすい人が期待して見守ってきた。確かに、ブログやSNSにより、個人が発信する情報は増えた。しかし今のところ、ブログやmixi、2ちゃんねるがジャーナリズムとして機能しているとは思えない。当て逃げ事件の犯人を捕まえたのは、数少ない例外だろう。

議論はある、外向ではない

なんでも海外と比較すればいいというわけではないが、アメリカでは既存ジャーナリズムの代名詞であるCNNが、Web
2.0の代名詞であるYouTubeを利用して大統領選候補者への質問を募るという企画を始めている。CNNを観ていると、このCMをあまりに何度も目にするので驚くほどである。もともとYouTubeでは政治討論が繰り返し行われていたが、今回CNNがそうした声を拾い上げようとしたことで、YouTubeがただの議論の場ではなく、社会的影響力のある個人ジャーナリズム環境として機能し始めていくかもしれない。その一方、日本では、夏に国政選挙が行われたが、インターネットは「どう利用するか」ではなく「どう規制するか」が議題であった。ブロガーの声を取り上げようというテレビ局も筆者の知る限りではなかった。

日本人、あるいは日本のブロガーは、社会的・政治的問題に無関心ということなのだろうか。そうは思わない。多くのブロガーがガソリンの値上げからイラク派兵、年金問題まで、様々な社会的・政治的事案を話題にしている。特に、Winny裁判、電気用品安全法(PSE問題)、いわゆるレコード輸入権、著作権の期間延長問題など、法律的な問題では多くの議論がブログで行われていた。もっとも、それらはただブログに書かれたというだけで、じゃあ具体的どうすべきか、という外向きのメッセージやアクションに繋がってはこなかった。ブロガーはどう現実社会へコミットしていくべきか。難しい問題であることは確かだ。CNNのようにインターネット・ユーザに同調的なメディアは日本にはまだ見当たらない。アピールのためにただ「デモをやりましょう」と書いても、賛同は得られないだろう。そして「〜党に投票しよう」と書けば「工作員乙」と言われてしまう。結果、多くのブロガーは社会的・政治的問題を話題にはするけれど、結局は見守る以上のアクションがとれないでいる。

MIAUの挑戦

ようやく本題に辿り着いた。タイトルに挙げたMIAU(”Movements for Internet Active
Users”)こと「インターネット先進ユーザの会」は先月18日に設立したばかりの非営利組織である。公式サイトによると、その目的は「インターネットやデジタル機器等の、技術発展や利用者の利便性に関わる分野における、意見の表明・知識の普及などの活動を行うこと」とのことである。発起人の一人である八田氏はもっと単純に、ネットユーザの「圧力団体」だという個人的見解を示している。要するに、ブログ上で終始してしまいがちなインターネット・ユーザの声を拾い上げ、社会的・政治的にアピールしようというものである。アメリカではインターネット関連の法律が議論になると、ほぼ必ず電子フロンティア財団の意見がニュースに取り上げられるが、MIAUもその位置を目指しているようだ。さっそく具体的なアクションとして、今月中旬まで募集されているダウンロード違法化へのパブリックコメントに対し、意見を提出するよう求めている。それもどういう文章を書くべきか具体例つきである。

ダウンロード違法化反対のほか、デジタル放送のコピー制限反対、著作権保護期間の延長反対といった主張を掲げるMIAUは、間違いなく既存メディア業界からは目の仇にされるだろう。一方、どれだけ多くのインターネット・ユーザの賛同を得られるのかはまだ分からない。先進ユーザってなんだよ、というようなツッコミも既に多数受けている。しかしMIAUが、社会を動かしたいなら、ブログに書くだけ満足せず行動にしなければいけない、とはっきり示したことには価値がある。MIAUとは全く主張の異なる別のインターネット・ユーザ団体が現れても面白いだろうし、そういった団体が切磋琢磨することで、インターネット・ユーザと政治的、社会的問題の距離が縮まれば、今までとは違ったアイデアが生まれてくるかもしれない。

準備は整った。さて、ブロガーは政治的活動に目覚め闘うか、それともこれまでのように見守るだけで終わってしまうのか。まず前述のパブリックコメント結果がどうなるか、注目して見守りたい。もとい、筆者も個人的に、積極的に行動してみたい。