新たな段階に入る航空業界のペーパーレス化

ペーパーレス化が叫ばれるようになってから大分月日が経ったが、 現実の社会では、まだまだ紙に頼っているというのが実態だ。
しかしここに来て、航空業界でペーパーレス化の新たな動きが加速する兆しが見られる。

メリットが見えやすい航空券のペーパーレス化

航空業界では、ペーパーレス化が急速に進みつつある。 国内線では、既にチケットレスのサービスがかなり普及しており、
2006年からは、ICカードなどを利用して搭乗券を使わないサービス (ANAの「スキップサービス」、 JALの「ICチェックインサービス」など)も実施されている。

国際線では、国際航空運送協会(IATA)によれば、 来年(2008年)の5月末までに、
加盟航空会社全社が航空券のeチケット化を完了する見込みとのことだ。 大手以外の航空会社で対応が可能かを疑問視する声もあるが、
航空券のペーパーレス化は、航空会社の作業効率を向上、旅行代理店の手間の軽減、
更には利用者にとっても利便性の向上という点でメリットが見えやすく、 今後ますます普及の方向に進むであろう。

こうした中、ANAは年内にも国内線で紙の搭乗券を廃止し、 電子チケットに全面移行すると発表した。
ICチップ内蔵の携帯電話や専用カードを用いるが、それを持っていない乗客については、
空港などで2次元バーコードが印刷された案内用紙を渡し、読み取り端末にかざして搭乗する。
既に実施している「スキップサービス」の利用率は10〜20%とのことであるので、
年内にこれを100%にすることはかなり大胆なことである。
しかし、航空会社側からすれば、全面移行しなければペーパーレス化によるメリットを享受できないので、
早めに全面移行を行う理由は理解できる。 また、飛行機の利用者は、マイレージカードを持っていることが多いため、
これを流用すれば新たにICカードを購入する場合は少ない。 こういった面も、航空会社が早急な全面移行に踏み出せる一つの要因であろう。
今後の動向を注目したい。

ICカードの国際規格との関係もあり、なかなか簡単なことではないが、
これをきっかけに、将来的には、国際線でも同様の仕組みが普及することを期待したいところだ。

航空券のペーパーレス化に見る今後の展開

このような航空業界でのチケットレス化の急速な進展の背景には、
原油高高騰の煽りを受けて、経費の削減が大きな課題となっている事情がある。 発券に関連する費用は、紙の費用だけでなく、関係する機器や
人件費の費用なども含めるとかなり大きく、経費削減の切り札の一つである。
更に、ペーパーレス化は、利用者が利便性の向上を実感しやすいために、 導入の障壁が低いのも特徴である。
また、利便性の向上だけでなく、航空運賃の削減に繋がることも見えやすく、
ITスキルの高くない利用者にとっても、多少の不便があっても利用しようとする 動機は起こりやすい。

ITを活用した新しい仕組みの導入では、利用者の利便性の向上だけが話題の中心となり、
経費削減などの費用面の効果は分かりづらいことが多かった。 しかし、今回の航空券のペーパーレス化は、紙をなくすことにより、
利用者の利便性と経費削減の効果を、一般の利用者にも分かりやすく示すことができたように思う。
これは、来年(2008年)の1月に電子化が予定されている株券の場合も同様だ。
今回のペーパーレス化がきっかけとなって、ITを導入することで、サービスの提供側と
利用者が納得したかたちでペーパレス化が促進されることを期待したい。