子供の安全を確保する理想的なITの活用とは

近年、子供の虐殺などの事件が後を絶たない。 一昔前の日本では考えられなかったような犯罪が多くなるのに伴って、
ITを活用して子供の安全の確保する様々なサービスが提供されるようになった。
今や、「子供の安全」は大きな社会問題であるとともに、ITベンダーにとっては 大きな市場にもなってきている。

「子供の安全」とITの活用

ITを活用して子供を守る様々な取り組みとしてまず思い浮かぶのは、
携帯電話やPHSのGPS機能を使った位置確認と緊急時の自動通報機能を組み合わせたサービスだ。
各携帯キャリアから様々なサービスが提供されているが、
いずれのサービスも、GPS機能と基地局のデータから、親が子供の居場所をリアルタイムで把握できる
だけでなく、電源が切られた場合に、自動的に子供の位置情報を通知し続ける機能を提供する。 それだけでなく、セコムの「ココセコム」のように、非常事態発生時には、セコムの警備員が現場に急行するというサービスもある。
しかし、これらのサービスは、ITを駆使して子供を親が絶えず監視するという内容のもので、
行きすぎには注意が必要である。例えば、以下の例をご覧になって、皆様はどのように感じるであろうか。

英国のある女性は、15歳の息子がインターネットをどのように利用しているのか調べるため、
息子が使っているパソコンにスパイウエアを仕込んだ。
その結果、米国人の男と、みだらな写真やビデオを交換していることを知り、英国の警察に通報した。 その結果、男は逮捕された。

結果的には、スパイウエアのおかげで子供を犯罪から守ったということになるが、 本質的な問題の解決になったとは考えがたい。
ちなみに、この報道を伝えたセキュリティベンダーの英ソフォスは次のように述べている。
「親が子どもに注意を払うためのソフトウエア(スパイウエア)はたくさん売られている。だが、子どもがオンラインで何をしているのか心配なら、家族がいる場所でパソコンを使わせることが、最もよいアドバイスだ」
様々な家庭環境に対応するために、ITを活用して子供の監視を行うことは悪いことではないが、
本来は親が直接目を配って監視し、注意をするべきであるということは心に留めておきたいものだ。

「子供の安全」の確保に向けた新たな取り組み

通信機能を活用した様々なサービスが展開されるこの市場に、新たに参入する企業が出てきた。
鉄道会社である。都市部のように鉄道網の発達した地域では、電車で通学する子供も多い。 電車の改札を通過する情報を活用した
「あんしんグーパス」については、2006/3/14の Take
IT Easy
で触れているが、今年に入って関東でも小田急電鉄が既に 「あんしんグーパス」 の導入行い、東京急行電鉄はPASMO(パスモ)と連動した 「キッズセキュリティ」を導入して同様のサービスを 提供しており、関東でも普及しつつある。

また、これらのサービスを利用するかたちで、立命館小学校(京都)は昨春の開校以来、 「ピタパ」を使った独自のシステムを導入した。 具体的には、玄関ホールの両側に設置されたICカードリーダを使って、
登下校の情報をメールで自動的に親の携帯電話に送るとともに、学校側の出欠管理システム
にも登録し、出席が確認できるようにしている。それだけではなく、鉄道会社と連携して、
既に述べた改札の通過情報を学校側も把握できるようにしている。
このようなサービスは、教育機関と公共交通機関が連携してサービスを提供した新たな試みである。

今後の発展への期待

このように、「子供の安全」に対して様々なサービスが提供されているが、 イギリスでは国のレベルでの対策として、 情報共有インデックスと呼ばれる子供の個人情報管理計画が進めらている。
この計画では、出産から18歳まで子供の健康、安全、教育、経済状況といった個人情報を管理し、
これらの条件が適切に満たされているかを監視する。 そして、学校、病院などが収集されたデータから問題があると判断すると、
親にではなく地方行政区域のデータベースにデータを送り、懸念事項が2つ集まると、 警告を出して子供の権利を保護する。
幼児虐待などの場合には効果的とは思われるが、 親権の侵害ということで批判されてもおかしくない内容であろう。
実際にイギリスでもかなり物議をかもし出しているという。

「子供の安全」が大きな社会問題となっている現実を考えると、 国や自治体レベルでの対応が求められるのは事実である。
しかし、上記のように、当事者である親をまったく無視して事が運ぶような 仕組みは、本質的な問題の解決に繋がるとは考えがたい。
そういった意味では、前述の「あんしんグーパス」の例は、親と教育機関、
公共交通機関という子供の通学に係る人々が連携して子供の安全の確保するというもので、
当事者による連携が行われているという点でよい仕組みであろう。
今後は、国や自治体に依存するだけでなく、当事者が連携し、地域ボランティアも巻き込んだ形で
このような仕組みが発展し、地域ぐるみで「子供の安全」が確保されることを願いたい。