システムの使い勝手を評価するふたつの方法[前編]

いま、情報システムのユーザビリティ(使いやすさ)が問われている。
情報技術が高度化かつ一般化し、複雑な情報処理を、誰もが身近に使うようになった。 前世紀よりお題目のように唱えられてきた「高度情報化社会」は、もうすっかり現実のものとなっている。

システムの使いやすさに対する配慮

ところが、そこで問題視されはじめている課題が、ユーザビリティである。
使い勝手の問題から操作を誤り、結果として膨大な社会問題を引き起こすこともある。
数年前、証券会社の誤発注で莫大な損失が出たという事件があった。 その事件では、端末オペレータの操作系に問題があったとされている。
また医療向けシステムや航空機に搭載されている情報システムなど、 操作の誤りが死傷事故に繋がるケースもある。
このようなシステムでは、古くから誤操作(ヒューマンエラー)を防ぐ仕組みの検討が加えられてきた。

一方で、皆さんが普段利用している情報システムのユーザビリティはどうだろう?
駅の券売機、銀行のATM、インターネットの各種ウェブサイト、あるいは勤務先の業務システム、等。
日頃、使いやすさに関して不便は感じていないだろうか?

これらのシステムのうち不特定多数が利用するシステム、 すなわち先の例でいえば最初の3つ、これらに関していえば、
ユーザビリティに対する配慮の意識は比較的、高い。 ところが最後の企業内システムについては、
残念なことに、ユーザビリティが軽視されがちな傾向にあるのだ。
その結果、従業員は使い勝手の悪いシステムを我慢しながら使わされることになり、 せっかくシステムを導入しても、
業務効率のかわりに従業員のフラストレーションが高くなるだけ、 といった不幸な状況が起こり得る。

企業内システムはなぜ使いにくいか

その理由のひとつに、企業向け情報システム構築のねじれた構造がある。

企業内に情報システムを構築するのは、システムインテグレータ(SIer)である。
また通常、SIerの直接顧客は、ユーザ企業の情報システム部なり経営企画部なり、
ユーザ企業内で情報システムを担当する部署である。これらの部署は、
一般的には間接部門であり、その情報システムが取扱う業務を直接扱うわけではない。

ところが実際にシステムを利用するエンドユーザは、現場の部署にいる担当者だ。
当然システム構築にあたっては、担当者の意見を交えながら作業を進めていくべしとされているが、
担当者は日常の業務を抱えていることもあり担当者主導でシステム構築を進められるケースはそれほど多くはない。

また、主としてパッケージベースで進められたシステム構築ではカスタマイズの余地が少ないことも、
使い勝手がよくならない一因といえる。 この課題は、パッケージベンダにも一考を促したいところである。

ユーザビリティに対する評価指標の必要性

もうひとつ、ユーザビリティが軽視される要因のひとつに、
「システムの使い勝手を数値で評価する指標がない」というものがある。

業務システム構築で通常まず優先されるのは、システム化でどれだけコストを削減できるか、
どれだけ業務効率を上げられるかといった項目である。
システムのユーザビリティが悪ければ、利用者の作業効率は落ち、また冒頭で述べたようなリスクも大きくなる。
したがって使い勝手の善し悪しはコスト削減やリスク回避、業務効率向上に 「間接的」には大きく寄与しているはずだ。

ところがこの影響を数字で示す手段が一般的には認知されていない。
「客観的な数字で示すことができない以上、システム構築時の評価項目に載せられない」という意見を、
ある企業の、システム導入に対して決定権を持つ担当者に話を聞いたことがある。
また「使い勝手が悪くても、従業員はそのうち慣れて使いこなすようになる」
という意見さえもある。しかしこの発言は、慣れるまでのコストが無駄、 慣れたとしても煩雑な手順は時間の無駄、さらに誤操作のリスクも高い、
といった重要なポイントが全く考慮されていない。

かくして、企業向け情報システムのユーザビリティはなかなか向上しないのだ。

(後半へ続く。後半は来週の掲載です)

  • 「情報化時代」:Wikipediaによる解説
  • ユーザビリティといえばここ、 U-Site、 ユーザビリティ関連の情報が集積されている。
  • ヒューマンエラー:Wikipediaによる解説。事例ベースの説明が紹介されている。
  • JUAS (Japan User Association of Information Systems,
    社団法人日本情報システム・ユーザ協会)は平成16〜17年度に「ユーザビリティ研究プロジェクト」を実施した。その報告書は「JUAS発行教材・書籍のご案内」から購入することができる。