OSSデスクトップ、普及の鍵はどこにある

先月末、Windows Vistaが発売された。 発売開始から3週間ほどたち、報道もひと段落ついた状況だ。 様子をみていると、積極的に導入しようという声があまり聞こえてこない。 情報システム部の担当者に話を聞くと、来るべき今後に備えて慎重に検証を進めているという企業が多いようだ。 まあいずれ、VistaプリインストールPCが配備されていき、次第に入れ替わっていくのだろう。 ソフトウェアの配布に、プリインストールほど有効な手段はない。

OSSデスクトップの普及はなかなか進まず

Linuxに代表されるオープンソースOSは、サーバ用途を中心として着実に利用が進んでいる。しかしクライアント用途(デスクトップ用途)での利用はなかなか普及していない。 日本OSS推進フォーラムのデスクトップ部会がかれこれ3年ちかく議論を続けており、 また様々な努力を行っているが、なかなか有効な成果が得られていない。

同部会では、これまでに学校教育現場でのデスクトップ利用の実証実験や、 同じく自治体向けのデスクトップ利用実証実験を提案してきた。 それを受けて独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の事業としていくつかのプロジェクトが進められ、 ほぼ問題なく利用できるという成果が得られている。 実際に、実証実験の舞台となった栃木県二の宮町の役場を訪れてみると、 各職員の机上に置いてあるPCが全てLinuxデスクトップPCであり、見慣れぬ雰囲気にたいへん興味深く感じる。

これらの成果は様々なニュースで取り上げられ、また各種のイベントや講演会でこれらの成果について講演が行われるなど、 普及に対する努力が続けられているにもかかわらず、なかなか普及が進まないのは何故だろう。

より有効な情報提供が望まれる

ひとつには、情報の集積がまだ不十分であることが挙げられる。 例えばOSS iPediaという情報リソースがある。 IPAのOSSセンターが運営するOSS関連データベースサイトだ。 ここには多くの情報が格納されているが、残念ながらデスクトップ利用に関する情報はまだ少ない。

さらには、情報提供の方法にもうひと工夫ほしいということも指摘できる。 散発的な情報発信や実証実験の事例紹介に留まらず、より導入担当者の側に立った情報提供が必要だ。

例えば学校教育現場でのOSS利用を推進する活動のひとつとして、財団法人コンピュータ教育開発センター (CEC)が実施しているOpen School Platform (OSP)プロジェクトがある。 このプロジェクトでは、今年の成果として各地域で実施した実証実験の結果をまとめ、 他地域へ容易に展開できるパッケージとして提供することを狙っている。 古い環境では新しい技術の活用が望めず、またセキュリティに対する不安も残る。 しかし予算が不足気味な学校では、新しくVista搭載PCを導入することもままならない場合が多い。 そのような現場に対するひとつの回答として、Linuxデスクトップの導入が有効と考えられている。 そのための効果的な情報提供のひとつの形式がOSSパッケージである。

課題抽出タスクフォースの報告書に期待

昨年の夏、日本OSS推進フォーラムのデスクトップ部会に「課題抽出タスクフォース」と称するグループが設置された。 このグループは、これまでに実施された実証実験の成果からOSSデスクトップ普及の障害となっている課題を洗い出し、 また同時にユーザ企業に対するアンケートを実施して問題点を分析する作業を精力的に実施した。

来月には、その活動をまとめた報告書が公開される予定になっている。 この報告書は、OSSデスクトップ導入に際して問題となる事項の辞書として活用できる。 また課題を挙げるだけに留まらず、同時にその解決策も提案している。 OSSデスクトップ普及推進の担当者には必読の報告書といえよう。

この報告書を読めば、OSSデスクトップの抱える問題が一目瞭然である。 逆の見方をすれば、開発のヒントが詰まっているともいえる。 ここで述べられている課題をクリアしているのであれば、OSSの導入はコストメリットがあるし、 さらに独自に課題を解決すれば新しいビジネスを創出できる可能性がある。 その意味でも、本報告書はOSSデスクトップ普及の一助となるのではなかろうか。