日本のIT技術者よ、危機感を持て

昨年末、ベトナムの首都ハノイに2週間ほど滞在した(実は今もまたハノイに滞在中である)。そこで今回はハノイ滞在で感じたことを述べたいと思う。

ベトナムのIT事情

ベトナムというと何を思い出すだろうか。ベトナム戦争、民族衣装のアオザイ、ベトナム料理、あるいは溢れんばかりのバイクの群れだろうか?純朴な(?)国民性を捉えて古き良き日本を思い起こさせるという人もいる。

一方で都市部のIT環境は日本と変わらないことが多い。たとえば、パソコンは一家に一台ある家庭も多く、ADSLは基本料金が月額3$程度(日本人の金銭感覚に直すと3000円弱だろうか)で使える。また、オフィスに勤める人々のITスキルは日本人と遜色ないレベルである。オンラインショッピングこそ発達していないが、人々、特に若者はインターネットを通して情報を収集し、メールをやりとりし、ブログを書いている。

もっとも、日中突然停電になったり、昨年末のように海底ケーブルの切断によってインターネットや国際電話が通じなくなるようなインフラの問題は残されている。

「壁」がなくなる

IT産業に目を向けると、日本企業のアウトソーシングを請け負っている企業もいくつかあり、それらの企業には日本語が堪能な技術者や勉強中の技術者も多い。当然、英語の読み書きもできる。

このようなベトナムの状況を目の当たりにすると、日本が中国・インドはもちろんのことベトナムにもすぐに追いつかれてしまうのではないかという危機感を感じざるを得ない。高齢化が進む日本に対して、ベトナムの平均年齢は約25歳、30歳以下が人口の6割を占める。IT産業はPCさえあれば一定レベルの技術を身につけられるので今後ベトナムのIT産業が急速に伸びることは間違いない。

一方、現在の日本のIT産業は技術者不足が深刻であり、技術者にとっては追い風である。しかし、この状況に安心していてはいけない。欧米は英語が堪能なインドの技術者を活用しているが、日本人は英語が不得手なこともあり欧米ほど活用していない。日本のIT産業は「英語の壁」に守られてきたともいえる。しかし、ベトナムのように親日的な国が成長してくると、日本語を話す外国人が「英語の壁」を通り抜けて流入してくる。Tom
Friedman氏の言葉を借りれば、日本のIT産業も本格的にflatな世界に組み込まれるのである。

とにかく危機感を持とう

このような近い将来に対して日本のIT技術者はどうすればよいのだろうか。彼らにはない付加価値をつけなければ仕事はどんどん奪われていく。日本の得意分野である、家電や自動車などの組み込み機器向けの技術を身につける、日本人でなくてはわからない業務に密着した仕事をする、経験がものを言う高性能・高信頼性システムに注力するなどが考えられよう。日本政府も情報大航海プロジェクトや各種の実証実験等を通じて日本のIT分野での優位性を高めようとしている。

しかし、最終的には技術者個人個人が自分の得意分野を見つけて伸ばしていかなければならない。日々の仕事に追われるとは思うが、「急がないと仕事を失う」という危機感をもたねばなるまい。それがひいては日本企業全体の競争力にもつながる。

アジア諸国の発展は日本のIT産業にとって大きな脅威であると同時に、巨大なマーケットが生まれているということでもある。アドバンテージのある今のうちに付加価値を確固たるものとし、守りではなく逆に他の製造業のようにアジアに進出していきたいものである。