ディスク装置もハイブリッドの時代

記憶デバイスの棲み分け

PCの主要記憶デバイスと言えばハードディスクとメモリ。今さら言うまでもないが、ハードディスクは大容量、不揮発性(電源を落としても記憶内容が消えない)を生かし、プログラムやデータなどの長期的な記憶デバイスとして活躍している。メモリはその高速動作を生かし、PC起動中にプログラムやデータを扱うデバイスとして活躍している。

数年前にメモリ価格が大暴落したときに、ハードディスクを置き換える、すべて半導体で構成された大容量記憶デバイス、シリコンディスクが今度こそ普及するかと思われた。その後もi-ramなど普及型DRAMを用いた製品が登場するも、シリコンディスクは根付いていない。バイト単価がまだまだ高いこと、高速動作のためには揮発性メモリを使わざるを得ずバッテリが必要など、使い勝手でも改善の余地がある。

もうしばらく磁気ディスクとシリコンはこのままの住み分けでいくのかと思いきや、最近になって新たな動きがでてきた。

不揮発性メモリ

SD、Memory
StickやUSBメモリに代表される不揮発性メモリ(フラッシュメモリ)がますます高速化されており、磁気ディスクの転送速度に近づいているのである。磁気ディスクの転送速度は市販のものでおおよそ60MB/sに対して、USB接続ながらUSBメモリでは30MB/sを超える製品がでてきている。USB接続同士であればかなりいい勝負になる。記憶容量も大幅に増加しており、今や8GBのUSBメモリでもちょっと無理をすれば買える範囲になっている。まだまだハードディスクには及ばないが、OSを入れて最小限の作業を行えるほどの容量は実現できている。フラッシュメモリの容量の増加率とギガ単価の下落率も最近になって加速しており、このこともフラッシュメモリ普及の追い風となっている。

フラッシュメモリの新たな使い道として、先日発売になったWindows
Vistaは高速なUSBメモリをシステムキャッシュとして活用するReadyBoostを搭載している。システムメモリの増設が容易でないノートPCなどの利用を見越しての機能であるが、若干ながら全体的なパフォーマンスは向上するようである。現状ではそれほど効果が見込めなくとも、USBメモリの大容量化、高速化は今後も続くことが予想でき、実感できるほどの性能向上が実現できるかもしれない。デュアルコアCPUの普及とともに並列処理が普通になるとディスクアクセスがボトルネックとなるが、キャッシュをメモリに置いておくことによる分散効果も期待できそうである。

ハイブリッドディスク

もうすでにかなり前からハードディスクにはキャッシュメモリが搭載されており、ディスクアクセスの低減、高速データアクセスを実現している。最近では2MB程度は標準的に搭載されているが、それよりも大幅に多い、128MB、256MBやそれ以上のメモリを搭載する、ハイブリッドディスクが現実味を帯びている。ちょうどハードディスクとUSBメモリや小型メモリカードを組み合わせたようなものである。

Intelは自前のチップセットビジネスの利点を生かしたRobsonを推進しており、富士通、日立グローバルストレージテクノロジーズ、Samsung、Seagate
Technology、東芝、ウェスタンデジタルはHybrid Storage
Alliance
を立ち上げ、ハイブリッドディスクの業界標準を確立しようと推進している。MicrosoftもReadyDriveと呼ばれているハイブリッドディスクの規格を発表している。

ハイブリッドディスクの利点は、データアクセスの高速化、消費電力の低下などもそうだが、これまでのキャッシュメモリより大幅に増えた記憶容量を生かして、頻繁に呼び出されるファイルを予めキャッシュできる、不意の電源断に備えてディスクに書き込む前にメモリに書き込んでおくことによるデータ保護など、これまでにない機能が実現できることである。さらに、10GBを超すフラッシュメモリが当たり前になれば、OSなどの利用頻度の高いファイルはフラッシュに保存し、ハードディスクは大容量マルチメディアデータなどの退避場所として利用する、いわゆるメディアストレージ風な使い方もできるだろう。あるいは、ハードディスクは完全にバックアップデバイスとして使用するとか。データ転送の高速化においても、ハードディスクの接続インターフェース規格、Serial
ATA
IIの理論最大転送速度である300MB/sを使い切るような速度が実現できたら、ハードディスクの使い方も違ってくるであろう。

  • SanDiskシリコンディスク
    ゼロスピンドルVAIOに搭載され、シリコンディスクが若干ながら日の目を見た。
  • i-ram
    自作PCの分野ではヒット商品となったが、いかんせん普及型DRAMを用いているためバッテリーが不可欠で、長期保存用ストレージとしては不向き。
  • ReadyBoost
    Windows
    Vistaに搭載された新機能で、フラッシュメモリをキャッシュ領域として使う。頻繁にアクセスされるファイルを置いておくことにより、OSの起動、アプリケーションの起動・レスポンスが速くなる。
  • ReadyDrive
    こちらもWindows
    Vistaに搭載された機能で、ハイブリッドディスクを活用して主にノートPCの休止状態からの起動にかかる時間を短縮しようとするもの。
  • Hybrid
    Storage Alliance

    おおよそ、PCのハードディスクを供給しているほとんどのメーカーが賛同していることから、規格の乱立による共倒れは心配なさそうだが、規格自体が立ち上がるかが課題。