インターネットトレンド解析エンジンは何をしようとしているのか ?

今年も 新語・流行語大賞
が発表された。今年の大賞は「イナバウアー」と「品格」であったが、今年どんなものが流行ったのか?ということを振り返るという意味で面白い。インターネット上でも、さまざまなことが話題になった。ネット上での話題を発見するさまざまなサービスが生まれて来ている。これらのトレンドもまた、振り返りという意味では面白いが、それだけだろうか。

検索キーワードランキング

インターネット上でのトレンドを見つけるものとして、もっとも古典的なものは、検索エンジンに入力されるキーワードの頻度を解析するものであろう。確かに、検索エンジンに入力されるキーワードは、一般大衆の興味を反映しているといえる。
Google
Trend
では、検索頻度の高いキーワードに対して、その検索件数の時系列変化をグラフ表示することができる。

また、goo では、毎年その年の検索キーワードのランキングやアクセス頻度の高いコンテンツランキングを発表している。
2006年版
によれば、上位3つは「yahoo」、「2ちゃんねる」、「Google」となっており、人気のあるアクセスサイトが並ぶ。この傾向は例年と変わらないが、今年の話題を探るには、順位というよりはむしろ昨年から急激に上昇/下降したものを見ると良いだろう。例えば、新語・流行語大賞でもトップテン入りしている「ミクシィ」は、昨年100位以内に初登場し今年また更に4位に順位を上げている。

さらに、単に一つの言葉だけではなく、競合するサービスを比較できたり、どんなキーワードとともに検索されているかを見るのも面白い。例えば、goo
のブログランキングでは、動画配信サイトである GyaOと YouTube の 時系列比較を見ることができる。 Google Trend でも 同様の傾向
が示されており、実際、世の中の関心としていえば、こういう傾向はあったと思う。感覚的に明らかなことでもこのようにグラフ化されると、確かに「なるほど」と思わせるところがある。

ブログ評判検索

さらに、検索されるキーワードの頻度ではなく、インターネット上でどのような感想/評判が語られているかを見ることによって、単なる頻度解析ではないトレンドの解析を行おうという試みがある。こういった目的には個人ブログが最適である。最近多くのブログ検索エンジンが立ち上がっているが、その多くは、ブログの特徴を鑑みて、リアルタイム性や評判検索を売りにしている。

例えば、東工大で開発されている blog watcher
は与えられたキーワードの良い評判・悪い評判を時系列的に表示することができる。また、現在ブログで話題になっているものをリアルタイムで提示するものとして、
kizasigoo
のブログランキング
がある。これらのトレンド情報は、確かに過去あるいは直近において、どんなことが話題になっていたのかを知るには役に立つ。しかしこれらは、単なる流行語大賞のインターネット版なのだろうか
?

「トレンドフィルタリング」としての活用

インターネット上でのトレンド情報、評判情報は、単にそれを見て参考にする、というだけではない用途がある。これらの情報を連携させたコンテンツや商品、サービスの推薦システムが考えられている。端的にいってしまうと、ソーシャルフィルタリングとしての活用である。ソーシャルフィルタリングとは、他人の過去の行動履歴や評価などを活用した情報フィルタリング(推薦)
のことであり、最も有名なのは、 amazon であろう。 amazon のソーシャルフィルタリングは、 amazon
での購買履歴をもとにしているわけだが、ここでのトレンド解析では、よりインターネット上の広いコンテンツ
(例えば、ブログでの評判や、書評、口コミ情報、検索キーワードなど)
をベースにすることができる。ここでは、従来のソーシャルフィルタリングとの差異を明確にする意味でも、「トレンドフィルタリング」と呼ぶことにしよう。ネット上のさまざまな評判情報をベースに情報をフィルタリングする仕組みだ。

例えば、kizasiが展開する musicmarQでは音楽、 シネマカフェでは映画といったように、みんなが話題にしていることや、興味のあることへの情報ナビゲーションが行われる。
amazon や、映画や音楽を推薦するソーシャルフィルタリングシステムとして有名なGroupLens
などの従来のソーシャルフィルタリングでは、いわば閉じたコミュニティの中での情報推薦であった。これに対して、上記のようなフィルタリングでは、ベースとなるのはインターネット上の
5万人以上もの人が書く blog だ。

フィルタリングされる情報はさまざまである。音楽、映画でも良いし、さまざまな商品、画像、映像等のコンテンツでもよい。あるいは、Google
ツールバー 4.0
検索ボックスの追加機能で実現されているように、組み合わせるべきキーワード候補の提示でも良い。「このキーワードで検索している人は、こういうキーワードを組み合わせています」というわけである。検索キーワードの推薦だが、これも言い替えれば、検索されるコンテンツのフィルタリングをしていることにもなる。

当然のことながら、ユーザの方で、こういった利用が進展するとなると、企業のマーケティングの側としても黙ってみているわけにはいかない。従来、検索エンジンの上位に表示されることを目的として、
Search Engine Optimization (SEO)
と呼ばれる対応が行われて来たが、インターネットコンテンツ全体を用いたフィルタリング(リコメンド)
が行われるとなると、検索エンジンのランキング以上に、そもそもどれだけ話題にしてもらえるのか、どうやって良い評判を勝ち取ることができるのか、といった点が重要になってくるであろう。どのような情報発信が望ましいのか、顧客との接点をどのようにしていけばいいのか。いわば、情報流通全体の
Optimization (最適化) が求められてくるわけである。

追記

ちなみに冒頭で触れた流行語大賞であるが、 1995年のランキング
には「インターネット」がトップテンに入っていた。説明文では、“地球上ほとんどの地域の人とコミュニケーションができる、お化けのような情報交換システム”であり、
“文字どおり「国際化」は現実のものとなった”とある。「お化けのような情報交換システム」というのはあたっているが、「国際化」に関しては、残念ながら現在のところあまりあたっていない。むしろローカル化が進んでいるようにも感じる。ある意味皮肉なことだが、10年前にはここまで日常生活に密着したものになるという実感が伴っていなかったのかもしれない。