SNSの光と陰

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が急速に普及してきている。9月に東証マザーズに上場したミクシィは会員数が500万人を超えた。また世界最大のSNSである MySpace.com は日本語版の提供を開始し、ソフトバンクグループとの提携も進みつつある。今回は、急成長中のSNSの懸念材料について考えてみる。

SNSの魅力

電子メールやWebの登場によってインターネットは飛躍的に一般に普及したが、SNSによってその勢いはさらに加速してきている。SNSの説明自体はウィキペディアに譲るが、この傾向は日本のみならず、世 界規模で起きている。SNS 人口は日本だけでも700万人以上、世界中では MySpace.com だけで1億人を超えている。

このように絶大なる人気を誇っているSNSの魅力は、コミュニケーションの双方向性とその密度だろう。双方向という意味では電子メールは昔から双方向であったが、コミュニケーションの頻度という点でまさに「手紙」であり、実際に逢って会話するのからはほど遠かった。ブログは情報量という点では十分であったが、コメントやトラックバックの機能を備えているとはいえ、双方向性に課題があった。その点、SNSはコミュニケーションツールとして適度な双方向性と密度を備えている。日記や写真を登録すれば、自分の知り合いに自然と伝わることになるし、逆に自分の知り合いの動向も自然と把握できる。

犯罪の温床となるSNSの危うさ

このように利用者が急増している SNS は、犯罪の温床となる危険性をはらんでいる。元来、インターネットはその自由さから犯罪の温床となっていたが、とりわけ SNS の場合、個人のプロフィールが他人に知られやすいという面が特徴的だ。プロフィールや日記を積極的に公開していくことに SNS の楽しみがある。その結果、プライバシー情報が漏曳するといったことから、さらに実生活が脅かされるといった重大な犯罪に結び付く危険性がある。

日本ではまだそれほど顕在化していないが、SNS 発祥の地アメリカでは、特に児童を対象とした犯罪が問題視されている。JETRO 渡辺弘美氏のレポートにも書かれているように、MySpace を活用した犯罪が多く起っており、その対策も講じられ始めている。

同レポートを読むと、いわゆる出会い系サイトの発展形として SNS が利用されているケースが目立つ。従来の出会い系サイトでは積極的に参加する必要があったが、SNS では出会いが自然であるとともに、児童と大人の出会いに、その児童の保護者が気が付きにくいという点があげられる。

ますます強調されるリテラシ教育の重要性

SNS が特別に危険だとは、筆者は考えていない。インターネットを使うかぎり、同様の危険性は常にあると考えたほうが適切だろう。但し、利用者のリテラシという点は特に気をつける必要がある。SNS は利用の容易さから誰でも簡単に使えてしまうため、セキュリティ等への十分な知識がないまま利用しているユーザが相対的に多くなってしまうのだろう。

SNS の運営サイトでも、相応の対応は必要だ。個人プロフィールの公開範囲を狭める設定をデフォルトとしたり、年齢に応じたプロテクション機能を盛り込むなど、実施可能な手段はたくさんある。しかし、スパムメールが日々進歩するのと同様に、SNS での防御技術はすぐにそれを凌駕する裏技によって破られていくことだろう。

インターネットは元来、自己責任を重んじる風潮があるが、昨今のユーザ増加に対して、そうとばかりも言えなくなってきた。特に小中学生等の若年層の利用を考えると、利用と同時に十分なリテラシ教育を施す必要がある。