オンライントレード、価格競争から使いやすさ競争へ

競争の激しいオンライントレード業界にまた新規参入が相次ぐ。GMOインターネッ トグループのGMOインターネット証券と野村
証券系のジョインベスト証券である。ともに5月中にサービスを開始する予定だ。
両者とも業界最低水準の手数料が売りだが、そろそろ価格競争も限界に近づいて いる。

魅力的な取引手数料ももう限界

今さら言うまでもないが、オンライントレードの魅力は、証券会社の店頭に足を
運ばなくても自宅や携帯電話で取引できることと格安な取引手数料の2点に尽きる。
たとえば野村證券の場合、店頭で20万円以下の売買をすると2,730円の手数料が
かかるが、オンライントレードでは20〜50%割引かれる。

利用者も取引手数料に敏感である。インターネットコムNS
総研
が行った調査によると、利用者の90%以上が手数料の安さを求め、72%
が証券会社選択の決め手になったと答えている。このような利用者の意識を踏ま
えて各社は次々と手数料を下げている。GMOインターネット証券の手数料は1注文
あたり最高でも1,260円、20万円以下ならわずか105円だ。これはもう限界といえ よう。

万人向けのツールはない

価格競争が限界となると、次の競争のポイントは何だろうか?前出の調査によれ
ば、手数料に次に利用者が重視するポイントは、信頼性・セキュリティと並んで
即時性や簡単さ、あるいは取引ツールの便利さ・使いやすさである。

調査結果を見て「利用者は使いやすさを重視しています」と一口で言う のは簡単だが、実は利用者の声に応えるのは簡単なことではない。
もちろん各社とも通常のツールに加え、工夫を凝らしたツールも提供している。
たとえば、最大手のイー・トレード証券やカブドットコム証券は豊富な情報を表
示可能で、発注もドラッグアンドドロップでできる。しかし、これらのツールはど ちらかといえば株取引の熟練者やデイトレーダ向けだ。

一般利用者はむしろ自分が興味のある株式の情報だけで十分かもしれないし、す
ばやい取引よりも誤発注を防止する対策を重視するかも知れない。高齢者には色
遣いや文字の大きさの配慮も必要だ。このように「使いやすさ」と一口で言って も誰が使うのかによってその意味は大きく異なってくる。

新規参入はそこに着目か

これに対し、GMOインターネット証券の取り組みは興味深い。同証券は5種類のトレーディングツー
ルを提供する。現在のところシンプルなツールのみが公表されているが、初心者
用、デイトレーダ用、一般用、高齢者用など様々な利用者を想定したツールの 登場に期待したい。

同証券はさらに、株式取引用のAPIを公開し、利用者自身でツールを開発できる
ようにすると発表している。お金を取り扱うシステムだけに、セキュリティや信
頼性をどのように確保するのかは大きな課題だろうが、取り組みとしては面白い。
証券会社では思いつかないような斬新なツールが登場する可能性がある。

オンライントレード以外のサービスでは?

このように、オンライントレードは価格競争の時代からツールの使いやすさをは
じめとした付加価値で競争する時代に入った。価格競争から付加価値での競争へ
の移行は他の競争が激しいサービスでも見られ、最たる例はオンラインショッピ
ングである。すでに2000年頃から使いやすさが売り上げにつながることが認識さ れ、研究されてきた。

たとえば、ニールセン・ノーマングループは2001年に、使いやすいオンライン ショッピングサイトを構築するための207のガイドラインを作成した。当時既に成功を収めていた
Amazon.comのガイドラインへの適合率は72%と高く、オンラインショッピングサ
イトの使いやすさと売り上げとの関連が示された。

オンライントレードはオンラインショッピングよりも市場が小さく、普及率も低
いためこのような体系立った研究はなされていない。しかし、上述のAPIを利用
して多くの人が試行錯誤を繰り返した結果、使いやすいツールが生まれる可能性
が高い。そのツールは同証券のみならずオンライントレード業界全体に影響を与
えるだろう。こうしてオンライントレードが万人にとって使いやすくなっていく ことを期待したい。