1セグで地上波デジタル普及促進

最近1セグメントの略であるワンセグというあまり聞き慣れない単語が話題だ。 一言で言えば、携帯端末向け地上波デジタル放送である。 現在実験放送中で、まもなく2006年4月より本放送が始まる。 地上波デジタル放送の普及のきっかけとして期待されているものの実態はどうなのか。

1セグ放送とは

地上波デジタルでは、1チャンネル6MHzの電波帯域を、13個に分割したものを セグメントと呼んでいる。1セグメントで約300〜400kbpsの容量がある。 このうち、 12セグメントについては一般の地上波デジタル放送に使われることになっており、 残りの1セグメントを使う携帯端末向けの放送が1セグ放送である。 そのため、約300kbpsのストリーミング放送が実現されることになる。 H.264/AVCという圧縮方式で、 解像度の低い携帯端末では、映像は比較的高画質である。

地上波デジタルの場合には放送アンテナが1箇所しかないので、 現状対応するエリアが狭さや室内やビルの陰などでの受信環境が問題になる。 ビルの陰など電波の届かないエリアについては、 ギャップフィラーという中継局が用意されているものの費用負担や 電波干渉などを考えると簡単ではないようだ。

コンテンツは

1セグ放送は新しいメディアとして注目されているものの、 現状では2008年まで地上波放送を再送する決まりになっている。 そのため、本格的な普及や利用はそれ以降だとみる関係者も多い。 しかし、ユーザは必ずしもそうは思っていないようだ。 各種アンケート結果によれば、 有料放送となった場合には見る人が極端に減少する可能性が高い。 実際携帯端末向けの放送として既にサービスが開始している モバHO!が苦戦していることからも明らかである。 広告モデルで無料視聴できるGyaOがかなりのユーザを集めていることは偶然ではないだろう。 ただし、半数は無料を希望する一方で、月額300円程度であれば許容できるという アンケート結果もある。 番組の作り方によっては成り立つビジネスもあるかもしれない。 結局ユーザとしては、データ放送との連動という新しい機能は別にすれば、 無料で地上波放送が見られるのが最も嬉しいのではないだろうか。

端末は

端末にはいくつか種類がある。 携帯電話にチューナを内蔵した機器が有望だ。 あまり種類は多くないものの携帯電話キャリア各社が製品を出している。 ユーザのニーズが高ければ、カメラ並とは言わないまでも、 高機能型の携帯電話には標準搭載される可能性もある。 実は携帯電話キャリアにとって、1セグ対応しても 端末の魅力向上以外にあまりいいことはない。 キャリア間の差別化にならないだけではなく、 パケット代が増えるわけでもなく、月間利用額が増えるわけでもない。 むしろテレビの視聴時間が増えればそれだけ携帯電話の利用が減ってしまう可能性もある。

既に携帯電話は動画を撮影再生できる機能を持っていることから、 追加コストはほぼ1セグチューナ分のみ1万円程度である。 あまり高額な携帯電話を発売しても売れないので、 キャリアとしては販売インセンティブを増やす必要があるはずだ。

また、現在の電池では2時間程度しか視聴できないので、頻繁に充電する必要があるし、 テレビを見すぎて、携帯電話の機能が使えなくなっては本末転倒だ。

普及するのか

1セグ放送は新たなメディアとして期待されているもの。 しかし、無料コンテンツあるいは地上波放送そのもののニーズが高い現実を考えると 当面単独のメディアとしてビジネスが成り立つのは難しい。 別途MediaFLOといった携帯電話向けのサービスも検討されており、 1セグ放送が普及するかどうかでモバイル放送のビジネスモデルが試されている。 まずは、新東京タワー の建設候補地が決まった話題性と合わせて、 地上波デジタル普及のためのメディアと割り切る方が近道ではないだろうか。