ポータル化する検索エンジンとその危険性

検索エンジンのポータル化が進んでいる。 インターネットのアプリケーションサービスでは、 検索機能が最もメジャーなものになり、検索利用回数も 急激に増加している。 われわれがインターネットを利用して情報を見つけようとするとき、
まずはじめに使うのは検索エンジンである。 何かわからない情報を探すだけでなく、たとえば「三菱総合研究所」の
サイトにアクセスしようとして、その URL を知りたいときも、 「三菱総合研究所」を検索キーとして検索し、
その検索結果からサイトに飛ぶ、という使い方が一般的だろう。 とにかく何かインターネット上のリソースにアクセスしたいときには、
まずは検索ボックスにキーワードを打ち込んでみる、 という使い方が浸透しつつある。
検索エンジンの持つ重要性は今後ますます大きくなっていくことは間違いない。

操作される検索ランキング

検索エンジンをポータルとして使用するという背景には、 与えられたキーワードに対して、検索エンジンが公正な結果、そして
多くの場合、有名で役に立つ情報源を教えてくれるだろうという信頼がある。 それは多くの場合、間違ってはいないし、実際有用でもある。
しかしよく知られているようにランキング自体は公正なものでもないし (というより、そもそも公正なランキングなど存在しない)、
コンテンツフィルタリングもされている。

たとえば google に 「デジタルカメラ」と入力して検索してみよう。 「デジタルカメラ」
を購入しようとしてこうしたキーワードを入力する人も多いだろう。 googleに限らず、検索エンジンの主な収入源は広告収入である。
検索結果の右には「デジタルカメラ」 というキーワードを購入している企業の広告がページランクに基づき表示される。
広告以外の検索結果は、キーワード購入とは関係なく、 ランキングされて基づき表示されている。
広告部分と一般の検索部分が分離されているので、ここは一見、 客観的なランキングに基づき、何の操作も加わっていないように見える。
だが、そうではない。

90年代後半からくり広げられた検索スパム、あるいは悪質な SEO(Search Engine Optimization)
との闘いの結果として、 ロボットに意図的にキーワードを拾わせるようなサイトを除外するようなフィルタリングがなされているのだ。
だが、この基準を決めることは難しい。
上の検索結果の上位にランキングされるキヤノンやパナソニックは主要なデジカメベンダーなので、仮にこれが広告宣伝ページであったとしても、検索結果としてはおかしくないように思える。しかし、
これが世間的にはまったく無名のベンダーだったらどうだろう。 本当に価値がある情報を提供するサイトかもしれないし、
新手の検索スパムかもしれない。 こうした情報の価値の判断が検索エンジン側に委ねられているのだ (*)

(*)先日、ドイツの BMW、リコーが不正な
SEOを行ったとして、 google のインデクスから 消去されるということがあった。
現在は復活しているようであるが、世界的な大企業のトップページでさえ、 google
の一存により検索対象から外すことができるということを印象付けた。

さらに、政治的なフィルタリングもある。 ヘルプページで「どのような検索語に対しても検索結果を検閲しない」 と明言していた
google でさえ、 中国政府の意向に沿って、 特定のトピックやサイトについて検索結果として表示しないサービスを 導入することを
公表した。 また、フランスやドイツでも、
政治的に問題の発生する可能性のあるサイトをローカル版のサーチエンジンの検索結果から 削除している。

こうした検索エンジン側でなされる意図的になされる操作は、 一見して客観的なランキングのように見えるからこそ、
危険性を孕んでいるといえる。 現状、ある特定の地域に対してのみ、意図的に情報が隠蔽されていたり、
加工されているという明確な証拠はないが、 今後ともそのような状況にあるという保証はない。

国産検索エンジンの開発とその課題

検索エンジンは、群雄割拠時代の時代を経て、 google、Yahoo!、MSNの三社にほぼ収束した感がある。
ユーザに見せる情報のフィルタリングやランキングをこれらの数社が握り、 その内情が見えないという状況に対する不安が高まっている。

フランスでは、ドイツと共同で、欧州発の検索エンジンプロジェクト Quaeroを立ち上げようとしているが、
欧州で実績のあった技術がすでに大手検索エンジンに飲み込まれてしまっているなど、
その実現性や目指すべきところはまだ明らかになっていない。

また、日本でも経済産業省が中心となって、今後数年間規模で、 産官学の体制での国産検索エンジンの開発を 進めようとしている。 画像や動画コンテンツなどのマルチメディアコンテンツの検索技術に対しては、
日本も高い技術力を持っており、 情報家電や携帯電話をはじめとして、 マルチメディアコンテンツに対するユーザニーズも高い
(あるいは高くなると想定されている)ことから、 ビジネス的にもブレークできる可能性がある。
また、従来のようなキーワードによる全文検索だけではなく、 ユーザの検索意図や検索したいコンテンツの種類に応じた検索機能の提供は、
まさに google 等も次世代検索機能として研究を進めているテーマでもあるが、
日本語や日本のビジネス状況を含めたサービス提供ということになれば、 国産エンジンの入り込む余地はまだ十分にあると考えられる。

ただし、
上述したようなコンテンツのランキングやフィルタリングがユーザから見えないという問題(正確にいえば、見えないから問題なのではなく、
意図的に情報が操作される危険性)は、 国産エンジンにしたからといって解決する問題ではない。
いかなる検索エンジンでも、(国であれ民間であれ)スポンサーがいる以上は、 バイアスがかかってくることは十分に想定されるし、
検索スパムとの闘いの中では、ブラックボックス的なフィルタリングも入れて いかざるを得ないだろう。
また、技術だけで解決することには限界もある。 公平性や公共性といった観点と、
普及させていたくためのビジネスモデルをどのように兼ね合いをつけていくのかというところも重要な課題だ。
ひとつの解決策としては、客観性が担保され仕様がオープンにできる部分と、
ユーザの目的や地域的な事情により改変が行われる部分を明確に分離することがあるかもしれない。
いずれにしても、ごく限られた検索エンジンにすべてを委ねるのではなく、
国産エンジン云々に限らずとも、常に仕組みとしての代替案を持つことは重要である。