おサイフケータイに残された課題

2004年夏に開始された「おサイフケータイ」サービスは、 電子マネー「Edy」を中心に着々と利用者を増やしている。 Edyが使える携帯電話は200万台を突破した。 さらに昨年12月から今月にかけて、ドコモの「iD」とJR東日本の「モバイルSuica」サービスが開始され、 おサイフケータイの普及は第2段階に突入しようとしている。
しかし、消費者の目から見るとまだまだ改善すべき点がありそうだ。

おサイフケータイというサービス

はじめに、現在提供されている主要なおサイフケータイサービスを整理しておこう(下表)。

支払い方式 サービス名称 中心企業 開始時期
プリペイド Edy ビットワレット、ソニー、NTTドコモ、ANAなど 2004年7月〜
モバイルSuica JR東日本 2006年1月〜
ポストペイ QUICPay JCB、UFJニコス、DCカード、KDDI、ボーダフォンなど 2005年4月〜
iD 三井住友カード、NTTドコモ 2005年12月〜

プリペイド方式は料金先払い方式であり、 あらかじめケータイにお金をチャージしておかなくてはならないが、
使った金額がわかりやすい。 一方、ポストペイ方式はクレジットカードと同様、翌月以降に利用額が口座から引き落とされる。
チャージの必要が無いが、使いすぎに注意が必要である。

プリペイド方式のEdyとモバイルSuicaは電子マネーのケータイ版、 ポストペイ方式のQUICPayとiDはクレジットカードのケータイ版という位置づけである。

その他、ケータイにポイントカードや各種会員証、電子チケットの機能を持たせることもできる。

対応店舗の増加を最優先に

プリペイド方式とポストペイ方式には一長一短があるため、 2方式が選択できるのは良いことである。
しかし、それぞれの方式は統一できないだろうか。 もちろん競争自体はあった方がいいが、
決済機能というインフラ部分では互換性が確保されていないと普及の妨げにもなりかねない。
磁気カード方式のクレジットカードでは、店舗の初期投資はカードリーダ1台ですべてのカード会社に対応できる。
クレジットカード業界は加盟の敷居を下げて利用可能店舗数を増加させ、基盤を構築した上でブランドの信頼度やサービス内容を競争しているのだ。

おサイフケータイでは、現状ではサービスごとに1台の端末が必要である(つまり、上記のサービスにすべて対応するには4台の端末が必要)。
しかし、おサイフケータイはすべて同じICチップ(FeliCa)を利用しているので、
技術的には1台の端末ですべてのサービスに対応させることは容易である。 香港のOctopusカードはさらに進んでおり、Type A /
Type B / FeliCa のすべての非接触型ICカードを読み書きできる Universal Reader/Writer Platformの導入を進めている。
OctopusはFeliCaを使ったサービスを提供しているが、 中国や韓国の電子マネーとの互換性維持のために導入しているのだ。
日本も互換性を重視し、対応店舗の増加を第一に考えるべきだろう。

紛失/破損や機種変更には要注意

携帯電話に多くのカードが集約されることによる問題点もある。 これまではカードは財布の中にしまい、
必要なときだけ財布を取り出していた。 一方、携帯電話は電車の中や歩行中の使用も多く、 紛失/破損の確率はカードに比べると格段に大きい。
また、ほとんどの人は数年ごとに機種変更し、携帯電話会社を乗り換える人もいる。

紛失・盗難時の悪用対策としては、 遠隔操作による無効化機能を搭載するなどして、 金銭的な被害を最小限に抑えるように工夫している。
しかし、新しい携帯電話への移行時には電子マネー、クレジット、ポイント、会員証等を発行する各社に個別に連絡しなくてはならず、大変手間がかかる。

せっかく携帯電話は通信機能を持っているのだから、 ICチップの中身をすべてサーバにバックアップしておくことはできないだろうか?
紛失や機種変更をした時は、手続きをどこか1カ所で行えば、 新しい携帯電話にまとめてデータを移行できる仕組みを整えるのである。
セキュリティにはかなり慎重にならなくてはいけないが、 ICカードのデータ量はせいぜい数KByte、
1億台のデータを保存しても数100GByteであり、 技術的には難しくない。
バックアップは直接ビジネスには結びつかないが、ユーザにとっては気になる点である。 ぜひ実現してほしい。

いずれの課題も解決には競合各社の協力が不可欠である。 デファクトスタンダードを目指して競争するか、
合意したスタンダードの上で競争するか。 後者であれば利便性が高まり急速に市場が拡大する可能性がある。
「おサイフケータイ」はドコモの商標だが、 認知度向上のために他社にも利用を許可したそうだ。
商標だけでなく、サービスインフラも統一されることを期待したい。