2005年はネット放送元年
ADSLの普及とともにブロードバンドブームとなり、様々なネット配信が提供されるようになり試行錯誤が続いた。その多くは独自のコンテンツをダウンロードする形であったり、限定的なジャンルに閉じたコンテンツ配信に留まっていた。しかし、ようやく2005年にネット放送と呼べる、ネット上でストリーミングされた幅広いジャンルのコンテンツを視聴するという、ある意味テレビ的なスタイルが確立されてきた。
2005年は、ライブドアによるフジテレビの買収工作や楽天によるTBSの買収工作など、企業買収を通じてネット放送を促進しようとした年でもあった。ネット放送に向けた活動が活発化した年であった。
第4のテレビで紹介した4th Mediaやピカパー!はCATVやビデオ配信などのサービスをネット経由で行っている。基本的にはケーブルをネットに置き換えたようなものであるが、ネット放送の過渡期のサービスであろう。しかし、これまでのネット配信の殻を破ったサービスが2005年に登場し、もう既に去年の12月中旬には登録者数が500万人を突破している。USENが提供しているGyaOである。
GyaOとは?
一言で言うと、広告収入を収益源とした無料音楽・動画配信サービスである。利用方法は至って簡単であり、ADSL以上のブロードバンド接続されているパソコン(WindowsとWindows Media Playerが必須条件)にて、ブラウザでGyaOサイトにアクセスする。簡単な利用登録を行えば無料でサイトにて提供されているすべての動画コンテンツをオンデマンドで閲覧することが可能となる。
コンテンツに関しては、有料サイトのように目玉番組が目白押し、と言うわけには残念ながらいかない。マイナーな映画や一昔前のドラマやアニメが揃っているあたりは、権利関係をクリアしやすかったのかな、配信権利料が安かったのだろうか、などと勘ぐりたくなるセレクションではあるが、幅広いジャンルにわたる無数ともいえる番組を揃えているのが魅力で、つらつらとブラウジングしているとそこここに見たい番組を発見する。広告に関しても、サイトを飾るWeb広告のほかに番組の合間に挿入されるTVCMのような動画広告もある。
面白い試みとしては、視聴する度に参加できる懸賞イベントや、ジャンル毎に内容の志向の異なる広告が用意され、テキスト、動画、Flash、サイトリンクなど、多角的な広告の連携がなされている。番組中に流れるCMとブラウザの他の領域に表示される動画広告がタイミング的にも同期していて、興味のある製品だった場合はついでにクリックしたくなる。ただ漫然とクリックしていると思わず関連商品を買ってしまいそうになるときがある。Amazonのユーザの志向に合わせた推奨商品のように、推奨番組が提示されていて、ずるずると見続けてしまうこともある。
放送ビッグバンも近い
ネットにおされてTVの視聴時間が年々減少していると言われている昨今、放送エンタテインメントはどのようになっていくのであろうか。
少なくとも、第2、第3のGyaOが出現するとともに、既存の有料配信サイトもGyaO的な手法を取り入れ、競争により幅の広い選択肢が視聴者に提供されることを望みたい。広告ビジネスは視聴者の増大とともに雪だるま式にビジネスが拡大、多様化するものなので、ポジティブスパイラルに期待したい。
GyaOでも取り組んでいる独自コンテンツの制作などにも期待したい。これまでネット配信用コンテンツの制作は行われてきているが、あまりパッとしていないのが正直なところなので、有名アーティストによるコンサートのネット配信に負けないくらいの視聴率を誇るコンテンツの誕生を心待ちにしている。
さらに、より進んだネットとの融合を望みたい。たとえば、ストレージサービスと連携して、ネット放送の録画保存ビジネスなどはどうだろうか。ネット上にスゴ録が存在しているイメージで、移動中でもケータイで視聴できたら便利だろう。スゴ録のおまかせ録画みたいな機能をつけても面白いだろう。
2005年に植えられたネット放送の種は着実に育ってきている。本年はますます拡大し、ネットでテレビ番組を見ることが当たり前のようになって欲しい。