大衆へ「アウトソース」化する問い合わせ対応

巷では「生協の白石さん」が大人気だが、
私自身もここ半年間、皆様から寄せられる問い合わせに回答する経験があった。 私の場合はサービスが限定されていたため、
「白石さん」ほど内容が多岐に渡ることはなかったが、 それでも寄せられる問い合わせはさまざまであり、 もちろん苦情やクレームもあった。
そこで感じたこと、考えたことを書いてみたい。

問い合わせ回答で実感したこと

問い合わせの対応では、先方の意図を正しく汲み取り、 丁寧かつ迅速で、一貫性のある、満足の行く回答が求められる。
これを少人数で昼夜休日を問わずに実践するためには、 肉体的にも精神的にも強さが要求される。

今回の問い合わせは、Webフォームと電話で受け付けるようにしていた。
電話は、緊急性が高い場合、あるいは先方が困って苛立っている場合が多く、
リアルタイムで的確な言葉での回答を求められ、緊張感が絶えなかった。 似たような問い合わせが増えてくれば、
FAQ(よくある問い合わせ)として整備を進めたが、 実際にはあまり読んでもらえず、 そこに書かれている問い合わせも繰り返し寄せられた。
また、こちらの回答がブログや掲示板で即座に公開されるために、 それを見て問い合わせが減るというメリットがある一方で、
新たな問い合わせが増えてしまうというデメリットもあった。

もちろん中には感謝の言葉も寄せられるが、割合としては少なく、 とにかく疲弊する作業であることは確かである。
求人広告にはコールセンターの求職が常に掲載されている。 それくらい長期に渡って続けるのは大変な業務ということだ。

システムでできることとその限界

このような問い合わせに対応するシステムは、 CTI(Computer Telephony Integration)を始めとして、
各企業で広く利用されている。

システムでできることは、まず複数人による効率的な対応体制を築くことである。
回答すべき問い合わせごとに担当者を割り振りし、その対応状況を一括管理しながら、
状況を確認した担当者が(場合によっては他の担当者と協議の上)回答案を作成し、
その内容をチェックした後で送信するという流れである。

あるいは、一連の対応で得られた結果を活用してFAQをより充実させることもできる。
例えば、あるFAQに対して関連する回答を表示したり、 その回答が参考になったか/参考にならなかったかの簡易アンケート結果から、
より参考になるFAQを上位に表示したり、内容を改訂したりすることで、
役立つFAQになり、結果的には問い合わせの件数が減ることになる。

しかし、このようなシステムで多少の効率性は上げられても、 人海戦術で対応する前提は変えられない。
なぜなら、今までに対応した回答数という、 担当者の経験に左右される面が大きいからである。 将来、優秀な問い合わせ分析システムや、
愛・地球博で見られた受付アンドロイドによる対応などが本格化するまでは、 数多くの人知に頼らないとならないだろう。

コミュニティ型問い合わせ・回答サイトの活用

最近は、教えて!gooや、 人力検索はてなの人気が高い。 どちらもポイント制を導入し、回答者がある質問に回答すると、
その結果に応じてポイントを得られるというインセンティブがある。 とらえどころのない質問に対しても、
適切な回答や意見が短期間で寄せられる点はとても興味深い。

今や企業のコールセンターは専門業者にアウトソースしてしまうケースが多い。
Webによる問い合わせのアウトソーシングも個人情報保護法施行後は急成長を見せており、
問い合わせ利用者の満足度は徐々に上がっているようだが、
さらに進めてこのような特定多数が回答者となるサイトにアウトソースできないだろうか。
つまり、企業側がコミュニティ・サイト運営者に一定の費用(=ポイント)を支払い、
その企業の製品・サービスを購入してユーザ登録した利用者であれば、 ポイントを気にせずに質問でき、
逆に回答者はポイントが得られるという仕組みである。 自社製品のユーザフォーラムを組織し、掲示板で情報交換できる例は古くから存在するが、
このようなコミュニティ・サイトが問い合わせポータル・サイトとなりポイント制を採用すれば、より活発な助け合いが生まれるに違いない。

ただし、問題となるのは責任の所在と確実に回答が得られるかである。
たとえ、特定多数から寄せられた回答が問い合せた本人にとって満足の行くものであっても、 それがその企業の公式見解とは限らない。
また、確実に回答が得られるとも限らず、 すべての回答対応をそれらのサイトに委ねることは、
企業として責任を果たしていないと言われかねない。 そのための責任分界点を明確にする必要はあるが、
アウトソースする企業もそれらサイトの利用者もその点を割り切った上で活用すれば、
お互いに満足できる結果になるのではないだろうか。