公衆無線LANサービス再び

月額数百円で公衆無線LANを提供するサービスが複数の企業から発表されている。
既に空港やホテルでのサービスが一般的になりつつあるなかで、 いまさらという感じもしないでもない。
そこで今回は再度公衆無線LANについて考えてみる。

カバー率、価格、通信速度のバランスが大事

これまでの公衆無線LANサービスは、「ホットスポット」と言われるように、 駅や空港、商業ビルなど限られた場所のみでしか使えない。
1日500円、または月額3000円程度が一般的な相場だ。 今となっては32kbpと低速ながらであることを我慢すれば、
同程度の月額費用で全国エリアをカバーするPHS網を考えると、 ごく一部でしか使えない上に、通信速度以外のメリットが見出せないので、
金額的にもビジネスユーザ以外はなかなか使いにくいのが現状だ。

今回の格安公衆無線LANは面的な展開を目標としている点では、 従来のホットスポットとはエリア面で大きな違いがあり、
ビジネスモデルが異なっているようにも考えられる。 そこで、他のモバイル環境であるPHSや3G携帯電話と比較してみると、
面的展開する上では、送信電力や周波数の面で不利な点も多い。

また、通常使用でそれほど不満が出ないと考えられるカバー率である、 人口カバー率95%以上を達成するには、
3G携帯電話は約2万局以上、PHSでは約10万局以上の基地局を用意してきた実績がある。
これらを考慮すると、周波数や送信電力がPHSに近い無線LANが面的展開をするには、
同じく10万局以上が必要であると考えられる。

一方で、月額数百円であれば、かなりの新規利用者が多く見込める。
例えば、YahooBBの無線LANパックの加入者が60万人以上いることを考えれば、 かなりの潜在的な需要がある。
802.11bから最大54MbpsのIEEE802.11gへの移行も進んでいることもあり、
電波状態がよければ、通常使用では十分な帯域だ。そのため、 屋外の公衆無線サービスが家庭でも使用できれば、
ADSL等のブロードバンドサービスから乗り換えるユーザがいても不思議ではない。

ただし、3年前にも同様に公衆無線LANの面展開を事業化したものの、 既に撤退した企業もある。 ユーザ側に無線LANが普及がしていなかったことも理由として考えられる。

新たな問題の可能性

あまり知られていないが、 2.4GHz帯の無線LANの場合は、 同一エリアでまったく電波干渉しないチャネルは最大3チャネル(
例えば、チャンネル1、6、11の組合せ)しかないので、意外と設計が難しい。 物理層は電波干渉に強いスペクトル拡散方式なので、
電波干渉があってもすぐに通信不能になるわけではなく、 また、さらに上位レイヤでは、CSMA/CAという方式を採用しており、
他の通信とは衝突しないような仕組みになっている。 そのため、隣接したチャネルを使用するとスループットが低下することになる。
このことは、近くに家庭やオフィスの無線LANが存在すると
単純に基地局を増やしてもスループットが向上しない可能性があることにもつながる。
逆に、既に設置済みの無線LANシステムへの影響も考えられる。 例えば、公衆無線LANのカバーエリアが広がると、
既にある社内LANや無線IP電話の品質低下の可能性も考えられる。 目に見えない無線だけになかなか原因がわからないことも多い。

加えて、セキュリティ上の問題が発生することが予想される。 WEPなどの現状使われている暗号化方式では、
暗号化キーの長さが短いという問題だけではなく、 固定的なキーを共有して使っていることも問題である。
また、利用者にとっても、偽のアクセスポイントが用意されても インターネット接続ができてしまうと、
盗聴やフィッシングに全く気付かない可能性がある。

PC以外の端末と情報漏洩対策が追い風か

屋外で広帯域通信が必要になるシーンを考えてみるとそれほど多くない。一般
的な使い方では、メールをまとめて受信するぐらいなので、それほど広帯域は
必要はない。一方で、昨今の情報漏洩対策として、できるだけ個々のPCにはデー
タを残さないようにしている所も多い。それを実現するためには、できるだけ
必要な時に必要なデータのみにアクセスするという方法が取られている。
そうした環境では、外出先でも社内LANと遜色なく使うためには常に広帯域通信 が求められる。

ゲーム機のPSPに無線LANが搭載されているように、 今後もさまざまな機器に無線LANが搭載される可能性が高い。
これから新規参入が予定されている3Gケータイにも無線LAN機能が取り込まれるようだ。
屋外で使用する機会が増えればインフラとしても整備されるはずである。 実際、 Googleがサンフランシスコ市全域HPやIntel、マイクロソフトなどがスポンサーで台北市の90%
で提供するというようなニュースもある。

今後、無線LANがケータイと並んで重要インフラになる可能性も十分に考えられる。
公衆無線LANが安価なモバイルブロードバンドの対抗馬となることを期待したい。
なぜなら、ケータイに独占されたこの市場が新興IT企業に開放され、
新たな魅力的なサービスが次々登場する可能性を秘めているからである。