官民連携で地震に対する危機対応力を高める

最近、強い地震の頻度が多くなったというのは気のせいだろうか。8月16日 に発生した宮城県南部を中心とした地震では、
東京でかなり長い間揺れを感じ、筆者が参加していた打合せも思わず10数分間の中断を 余儀なくされたことを覚えている。

実証された「緊急地震速報」の有効性

さて、この8月16日の地震は「緊急地震速報」の正確さが目を引いた事象でも あった。仙台市内の小学校が、気象庁から提供される
ナウキャスト地震情報により、14秒前には大きな揺れの到達を正確に
知ることができた。同様に東京についても揺れが到達する 約20秒前に第一報を通報し、やはりその正確性を実証して見せた。

このシステムは、初期微動である縦波(P波)と実際に災害を引き起こす
横波(S波)の伝達速度の違いを利用している。震源に近い観測装置で
伝達速度の速いP波を使って震源や震度を早期に推定し、次に特定地点におけるS波の到達
時刻を算出できる仕組みである。震源地からの距離に拠るが、この処理をネットワーク上で迅速に
行うことで、僅かな時間ながら事前通報を受けるられることになる。
気象庁は、2004年の2月から試験稼動に入り、現在は140の機関に情報提供を 行っていた。

このシステムの迅速化と精度向上は防災科学技術研究所の 「リアルタイム地震情報の伝達・利用に関する研究」 のなかでも進められている。

緊急地震速報の活用方法

さて、問題はこの緊急地震速報をどのように活用するかである。

例えば、危機管理情報携帯配信サービス「マイレスキュー」の ようなものに加入している人は、
これを通じて事前通報を受け取ることを期待するかもしれない。 ただ、緊急地震速報になると、24時間緊急情報を受け取るためには、
常時スタンバイ状態になっている受信装置に情報を伝達する必要がある。そこで、 緊急地震速報の活用促進を狙いとした 非営利活動法人「リアルタイム地震情報利用協議会」では、
IP電話を用いた家庭向け自動防災システムの開発・実証を行っている。

いずれにせよ、その事前情報を受け取った利用者が、 10数秒といった僅かな時間のなかで何ができるかはまた別問題である。
到達時間に応じて適切な行動をとるには、 日頃の心構えが大事であることに変わりはない。

緊急地震情報がより重要な局面も

深刻な事故を回避するために緊急地震情報が本質的な意味合いをもってくる状況も考えられる。 例えば、先日あった震度5弱の地震の際に、
筆者の自宅近くにあるマンションの建設現場では建設資材が落下し、 一時期騒然としたことがあった。
幸いけが人はなかったが、屋外の危険箇所で作業をしている人にとっては、 僅かの時間でも揺れが発生することを事前に通知してもらえれば、
落下事故や落下物による事故を回避することができる。

ガス、交通機関、発電所、エレベータ制御等においても、当然、緊急地震情報は有効だ。 僅かの時間であっても事前に地震を想定できれば、
揺れに対して安全性が高い状態にシステムをコントロールできる可能性がかなり高まるだろう。

安全に資する科学技術の開発における官民の役割

従来、緊急地震情報の整備に関する研究開発は、国主導で行われてきた。
今後とも、こうした安全に資する基盤的技術については、十分な公的予算を確保して、 国が主導で技術開発していくことが必要であろう。
一方、緊急地震情報をいかに有効に活用するか、 といった観点からの技術開発は民間サービスとの連結点でもあり、
民間の創意工夫と研究資金をうまく呼び込むことが必要となる。 例えば、リアルタイム地震情報利用協議会のような場を通じて、
マッチングファンドによる公募研究や、 情報開示による民間への技術移転を進めることで、
一般ユーザが安心を体感できるような技術やサービスの実用化を進めるべきだろう。