『出会い・語り・交流の場』があるオフィス

オフィスビル競争、

インターネットやモバイル社会、多様なワークスタイルでオフィスも変わりつつある。 コクヨ株式会社オフィス研究所主席研究員で ECIFFO 編集長の岸本章弘氏に最新事情を伺った。


対談

森田 「交流の場としてキャンディーバーやリサイクル棚が 1 職場中央につくられたオフィスもあるようですが、人が集う場が意識的につくられているのでしょうか。」

岸本氏 (以下、岸本)「いまオンラインとオンサイトを シームレスにつなぐものが求められていますね。オフィスとは違う例ですが、 店舗を持たずインターネットや電話で取引をするダイレクトバンキングのING Directは 存在実感を示すために、NYミッドタウンに自らカフェを出店しました。 リアルな店員たちは商品サービスを説明することもでき、イメージアップに成功しています。」

ニューヨークの ING DIRECT Cafe(写真提供:岸本氏)

森田 「なるほど、ネットワーク社会になるとますます実体が重要だということすね。 だとすると、モバイルワークが進むとさらに実体としてのオフィスは必要となりますね。」

岸本モバイルは基本的にソロワーク。これでいつでもどこでも仕事ができるといいながら、 皆いっそう移動が多くなっている感じ。 よく見ると、モバイルで効率化しながら、 浮いた時間使って更にその先の人に会いに行っちゃってますね(笑)。 会う場所はますます必要なんです。 オフィスはノンテリトリーではなくて、シェアード・テリトリーになるべき。 個人の拠点はやはりあったほうがいいし、“適業適所”で使い分ける多様な用途空間も欲しい。 だからそれらをシェアしながら、互いにテリトリーを広げていくのが健全に思います。」

森田パートナー同士がテリトリーを広げていけるオフィスというのは興味深いです。 ING Directの話もそうですが、談話室や喫茶・喫煙コーナーが 互いのテリトリー共有の大事な空間に変わっていきそうですね。」

岸本距離があっても頻繁に人々を引きつけ、 長くとどまらせることで出会いの確率を高め、さらに会話を触発するきっかけや話題を提供する。 そんな場の力を私はコミュニケーション・ポテンシャルと呼んでいますが、 このポテンシャルが高い場はまず何よりそこにくる/いる理由がある。 以前調べたことがありますが、コーヒーポットがあると来る頻度は高い。 でもそれだけだと滞在時間は短い。自販機だともっと短い。 でもそこに雑誌や掲示があったりすると、そこに目を留めた人はちょっと長くとどまり、次に来る人と出会う。」

森田話題提供はITで仕掛けが考えられそうですが、 しかし交流の場を作って、個人席もあるとしたらオフィス面積を大きくするか、個人スペースを狭くするか。」

岸本個人用スペースは小さく、でもパネルを配するなどして パーソナライズしやすくし個性を引き出す。同時に、チームの共有スペースを作るんです。 ミーティングや共同ワークスペースとして、メンバーの思いやプロファイル、 打ち合わせや作業の経過、ログを残すことで、メンバー同士が非同期でも集える環境をつくる。 これに次の可能性を感じています。」

森田個を活かすオフィス環境のキーワードは ”個”と”しごと”について『人に物語る空間』ですね。 今後のオフィスを考える上で多くの示唆をありがとうございました。

オランダ保険会社Interpolisのユニークなオフィス(写真提供:岸本氏)



参照

コクヨ株式会社ECIFFO

ING DIRECT Cafe