第4のテレビに願うこと

ビール業界では第3のビールが注目を浴びている。ビールほどの露出度はないが第4のテレビも静かに立ち上がろうとしている。第1は地上波、第2は衛星、第3はケーブル。そして第4はインターネット経由でのストリーミング放送だと言われている。

第4のテレビ

筆者のマンションでは最近光化したおかげで快適なブロードバンド環境になった。これまでのADSL接続と違うと感じるのは、やはり大容量ファイルのダウンロードや映像・音声のストリーミングの滑らかさである。そういう意味ではストリーミング放送することは光通信の正しい使い方であり、そこに目をつけたのがオンラインTVBBケーブルKDDIで、第4のテレビと位置づけた。これらのサービス自体は去年から始まっているがここにきて光アクセスの増加に伴い大手プロバイダも参画してきている。

とはいえ、ADSLがブロードバンド通信として華々しくデビューしてから主にPCをターゲットとしたブロードバンド放送はすでに立ち上がっており、そこそこの成功は収めている。しかし、第4のテレビがこれまでのストリーミングと違う点は、テレビ上に設置されるセットトップボックス(STB)に直付けするので使用感はケーブルテレビ並みに簡単である、というところ。

第4のテレビの売り

それでは、これまでの第1〜3のテレビと比べて、通信媒体の違い以外に第4のテレビの差別化ポイントはどこにあるのか?

提供されるチャンネルは衛星放送、ケーブルテレビとほぼ同一である。利用料金も他に比べてそれほど安くはない。第4のテレビが提供するビデオ・オン・デマンド(VOD)もケーブルテレビのペイ・パー・ビュー(PPV)と実現している機能に大差はない。カラオケ機能もCATVで実現されており、特に目新しいものではない。

「配線をインターネット系で統一できる」という謳い文句も、CATVの「既存のアンテナケーブル一本で手間いらず」と同等と考えられる。VDSLで各戸に接続できるという意味では、集合住宅に対する導入の容易さで若干有利かもしれない。IP電話と組み合わせて通信回線の統合も可能ではある。ただ、その場合回線がダウンするとテレビ、電話、インターネット接続が全滅することになるが。

実際のところ、既存のテレビ放送と決定的に差別化されているところを見出しにくいのが現状である。そのため、筆者も導入を先送りしている。

それでも第4のテレビに期待する理由

それでも第4のテレビには頑張って欲しい。それは、これまでのテレビ放送とは異なる資本を流入させ、コンテンツ(番組)とディストリビュータ(放送局)の自由化を促進できるのではないか、という淡い期待を抱いているからである。

これまでディストリビュータが権利でがんじがらめにしていたコンテンツを解放することにつながって欲しい。コンテンツクリエーターが配信方式を選ぶ、あるいは視聴者もより自由に番組を選べるようになりたい。膨大な過去のコンテンツを自由に視聴できるようになりたい。地上デジタルのコピーワンス制限のような硬直化した事態を打開する突破口になって欲しい。さらに、PCベースのストリーミング放送と組み合わせ、より少ない投資で良質のコンテンツが製作できるような環境が育って欲しい。

第4のテレビが直接上記の夢を叶えてくれるとは思っていないが、ライブドアによる既存メディアへの挑戦など、これまでの映像配信の枠を崩すような活動には大いに期待している。