次世代ケータイの行方

第3世代携帯電話が本格的に普及し始めている。 既に国内大手3社(W-CDMA方式とCDMA2000 1x方式)を合わせて、 約2400万加入者を越えており、全加入者の約30%に相当する。 これまで携帯電話は、約10〜15年ごとに新たな無線方式のシステムが普及してきた。 その主な目的は容量不足の解消であったが、第3世代に移行した結果、 全体的な容量としては余裕が生じている。 そうしたことを考慮して、 より高速通信可能な次世代のケータイの行方を考えてみる。

世代とは

そもそも携帯電話の世代とはどう決まっているのか。 アナログ方式が第1世代(1G)、 デジタル方式が第2世代(2G)というところまでは誰もが異論のないところだ。 それ以降の世代については、当然ながらすべてデジタル方式であるので、 通信速度で分類されている。 例えば、第3世代(3G)では、移動時に数百kbps、静止時に2Mbps程度を達成できるものとされている。 現在、方式を高度にした上で、上下非対称型通信に対応した規格HSDPAが、 3G拡張版という意味を持つ3.5Gとして標準化されて導入される予定になっている。 また、4Gでは、移動時100Mbps、静止時1Gbpsが目標とされている。

3Gケータイの行方

ここに来て、携帯電話への新規参入問題が大きな話題を呼んでいる。 一人当りの月額使用料(ARPU)が数千円あり、契約数が8500万台以上あるので、 市場としては年間5兆円を越える規模になる。 それを数社で独占しているとなれば、参入の余地が大いにあるようにも見える。 しかしながら、 数万局と言われる基地局を既存事業者と同じレベルになるまで新設するには、 相当な費用と時間がかかるはずで、ダークファイバを借りるように簡単にはいかない。 加えて、電波の出力が小さいPHSでは必要とされる基地局数が大きく異なるので、 単純に比較するのは乱暴であるが、移動体通信事業者でも撤退している電力系事業者があるのも事実であり、 移動体通信事業者がうまくいっているところばかりではない。 例えば、定額制データ通信などの差別化がないと、 単に安価なだけでは難しい。 3GへのHSDPA導入や番号ポータビリティの導入も近いので、 今後の展開を見守ることにしよう。

電話通話 vs データ通信

世の中のネットワークは、すべてIP化するというのが今の流行だ。 もちろん携帯電話も例外ではない。当然、4GではIP化されるはずである。 問題となるのは、音声通話のようなリアルタイム性が求められるデータだ。

現在の携帯電話のシステムでは、比較的新しい3Gのシステムでも、 音声通話は一般のデータとは分離して通信している。 また、電話向けに遅延を抑えるようにしたり、制御用チャネルを別途用意している。

一方では、最近流行しているIP電話は、データごとの特徴をほとんど考慮せずに、 インフラの共通化を優先した結果、非常に安くできるようになったのも事実だ。 音声で使用される帯域に対して十分な帯域があり、 ベストエフォートでサービスすることを前提にしたものだ。

また、主に室内で数Mbpsを確保できる無線LAN(Wi-Fi)では、 無線LANIPケータイ電話 が使われているので、簡単に実現しそうだと感じる。 実は、高速通信可能といっても端末一台あたりの最大値であるので、 多数の端末と基地局が存在する携帯電話のシステムで機能する保証はない。 実際、新しい携帯電話システムの実験しても、 実用化までたどり着かないケースも多い。

多数の通信方式が候補に

3Gのような携帯電話のシステムは、ITU(国際電気通信連合)で標準化が進められている。 一方で、高速無線LANをはじめとする無線システムの標準化がIEEE (電気電子学会)で進められている。 ジュネーブに本部があるITUは主に電話などの通信関係の標準化をしており、 IEEEはアメリカに本部があり、 コンピュータおよびネットワーク関係の標準化を行っている。 携帯電話は、グローバルな相互接続性が求められることもあり、 前者は音声通信ありき、後者はデータ通信中心のシステムが考えられている。

オールIP化されたケータイは、 ユーザから見たシステムはどれも大差がないとも言える。 なお、広帯域を実現するには必然的に使用する周波数も高くなるため、 ビルや地下には電波は届きにくくなるため、 事業者がどれだけサービス展開をするかで評価される可能性がある。

通信速度がこれ以上高速化されても、ケータイに特有のコンテンツは考えにくい。 既にブロードバンドになっている有線ネットワークの状況を考えると テレビ電話のような映像も送ることが一般的になる可能性は現状それほど高くない。 音声通話が定額制だけがキラーアプリケーションでは、 単純にノートPCに接続して高速データ通信を行うだけになってしまう。 また、乱立した規格は混乱の元にもなり、 過渡期にこそ複数の周波数あるいは規格に対応した端末が望まれる。 そうなれば、ユーザは方式の違いは意識することなく使うようになり、 3Gと同様に次世代への移行が進まないということになりかねない。 ただし、2012年まで2Gを継続するという計画を聞くと、 そのような心配は当分先のことになりそうである。