普段身近に利用している図書館のシステムは、資料管理の最も実用的なシステムの一つであろう。 図書館業務と最近の傾向を追ってみた。
インターネット予約による予約数の増大
図書館業務は、利用者からみると、予約、貸出、返却、延長、予約/貸出内容確認 といったところが主なところだ。 システムは、これらを管理するため、利用者情報、書誌、 資料の状態(予約中、貸出中、どこの書架にあるか)を管理する。 これらは、10年以上前から変わらぬ基本機能であるが、 最近の図書館システムの特徴としてインターネット予約があげられる。 利用者が図書館のホームページよりログインし、 資料検索した結果を予約したり、予約・貸出状況を確認するサービスである。
図書館システムは、5年で更新する自治体が多いが、 最大の課題は、インターネット予約の導入により 潜在的利用者が掘り起こされ、予約数が増大し、 これに伴って貸出数、同一自治体内の他館からの回送数が増えることである。 インターネット予約導入前と比較すると、予約数で約1.5〜3倍の増加となっている。 インターネット予約は、コンピュータが自動的に処理するのでこれ自体により 職員の負荷が増大するわけではないが、これに伴う貸出・返却・物流 数の増大に対処するために職員の負荷が増大するというのが現状である。
業務負荷を軽減する手段
負荷が増大するからといって、どこでもやり始めている市民サービスを導入しないわけには いかないので、他の手段で職員の負荷の低減を考えなければならない。 1つは、資料延滞の督促、予約確保連絡を極力自動化することである。 この手段として、メール、自動電話による連絡、Web、自動電話応答による照会の受付がある。
もう一つ図書館業務で負荷の高い作業として、蔵書管理がある。 資料があるべきところにあるか、不明な本はないかといった点検をする作業である。 今のほとんどのシステムは、図書のバーコードをハンディスキャナでなぞり、蔵書点検行う方式だが、 これをICタグ化すれば、書架まるごと一瞬でチェックできる。 ただし、数十万〜数百万冊ある書籍をすべてICタグ化するには 膨大な時間とコストがかかるため、 ICタグを導入するのは、新設の分館か、単館で、というのがこのところの傾向である。 UHF帯域のICタグ等安価なものが期待されているが、 図書館業界として、方式もデータ構造もまだ標準化されていないという課題もあり、 一揆にICタグ化へふみきれないのが現状であるが、 これらが落ち着けば将来的にほとんどの図書館がICタグ化へ移行することになろう。
レファレンス業務の拡大・横断検索
今まであげてきたことは図書館の基幹業務についてだが、 最近、図書館のあり方も少しずつ変わりはじめている。 例えば、大阪市立中央図書館では、6階立ての建物の最上階がホールになっていて そこで、図書館職員とボランティアを中心に、音楽会や上方の能の会などの開催を行っている。 なぜ、図書館で音楽会?と思う方もいると思われるが、 図書館で最も大切な業務「レファレンス」の一環として、 また、最も身近な市民サービスを行う施設の使命として このような会を開催しているのである。 ちなみに大阪市では、演奏の前に必ず本の紹介しているとのこと。
自治体を超えた図書館システムがある。 県立図書館や 国会図書館が整備している横断検索・相互目録のしくみ である。 郷土の資料などある自治体にしかない資料を全国的に探すためには、 各図書館が自館の目録を上位の自治体や国会図書館に提供し、 これら上位館のホームページより検索できるしくみがある。 大学系図書館では、早くからこの 横断検索のしくみ をZ39.50というプロトコルで実施している。 大学系図書館は、学術論文を容易に探せることが大きな目的であるが これらは電子的公開されることが多くなっているので 図書館も電子ジャーナル検索へ対応するところが多くなっている。
PCの普及により百科辞典はCD-ROMでみる、インターネットの普及により 情報はインターネット上より取得するという時代において、 本の位置づけがメディアの中で相対的に低下してきている。 図書館の資料にもCD-ROMのみのものもあり、本に付随するCD-ROMのリンク先から 本の内容を改訂する等の形態も珍しくない。 どこまでが図書館の範囲かを切り分けるのは難しいが、 図書館の業務もシステムも徐々にこれらへの対応にシフトしていかねばならない のではなかろうか?